第十九話 修道院で
今回は短めです。
食堂を後にした俺は、フィリスの王宮案内、後半戦を行なっていた。
今回は行きたいところがあったのでそちらに向かってもらっていた。
「正直に言いますと、魔力量がゼロのソウジ様が修道院に行かれても、意味が無いと思いますが?」
フィリスが言った通り、俺は今、修道院に向かっているが、魔力が無い俺が行きたがっている事を怪しんでいるのか、フィリスの歩幅はさっきより小さく、時々、今みたいな質問を投げかけてくる。
それに対する回答はちゃんと考えていた。
「こっちの修道院が、魔道士育成の場なのはさっき聞きましたけど、俺のいた世界では神に祈りを捧げる場でもあったので、明日に向けてお祈りを捧げたいです」
「そうなんですか?」
フィリスは未だ、怪しでいるようだが、俺の世界の事を知らない以上、深く突っ込む事が出来ないのだろう、そこから先は、質問をされる事もなく、無事、修道院につく事が出来た。
「こちらが、修道院入り口になります」
修道院の入り口付近に来て思ったが、いや、ここまでくる途中から思っていたが、この王宮ってどんだけ大きんだよ。
ここまでくるのに結構な距離歩かされたし、王宮内に修道院があること自体がおかしな事なのではと思ってしまう。
「では、入りましょうか」
フィリスは扉を開け中に入り、俺もそれに続き、中に脚を踏み入れた。
「おぉ・・・なんか思っていたのと違って地味だな」
最初の感想がそれだった。
俺が思っていた修道院は、長椅子が何個も並んでいて、その先には祭壇があり、そこには神をかたどった鮮やかなガラスから立ち込む光がなんとも言えない、神聖な感じを作っている場所だと思っていたが、ここはまるで真逆で、殺風景な上、神聖な空気がいっさい感じないところだった。
あれ、俺が思い浮かべた修道院って教会なんじゃ? と思いながら周りを見渡したが、壁の両側に扉がついているだけだった。
「誰もいませんね」
俺がフィリスに尋ねると、フィリスは右側の扉に向かって歩きながら。
「この時間は、中庭で魔法の練習中なので、そちらに向かいましょうか」
俺も黙ってついていき、扉がいくつも立ち並ぶ廊下を歩き、端までいき右折をし、また同じような廊下を進んでいき、廊下の端にある扉を開けると、そこには大広間があった。
「ここは?」
「ここは食堂ですね、中庭に出るためのドアはここにしかないのですが、入り口の反対側なのでこっちまで来るのは、正直めんどくさいんですよ」
反対側に来るために結構歩かされた事から、ここがどれだけ大きい所か想像できる。
それが敷地内にある、王宮の広さが気になったが、それは置いとき、フィリスの案内で、一回り大きい扉から中庭に出ようと、扉の取っ手を握り、力を込めて開けた。
「ガッ‼︎」
そして、何か分からない物が俺の腹部を襲い、強烈な痛みと衝撃により、吹き飛ばされ、床を数回転がり停止した。
口からは血を吐き、俺の周りには、気がつけば血の池が出来ていた。
腹部が焼けるように痛い、確認のしようと体を動かそうにも、体が動かない。
俺は薄れ行く記憶の中、扉に目を向けると、そこには先端が鋭利な何かを持った人達がこちらに向かって走って来ていた。
奴らは何かを言っているようだが、それを聞き取ることは出来ず。
まさか明日を待たず今殺そうとしてたのか?
今出せる全部を使い、頭をフル回転させ、現状理解をしようとしたが、それは叶わず、意識を失った。




