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二
春の甘い風の中で、体のなかに痛いほど溢れていた希望は丸みを帯びていき、心音も鈍くなりやがて意識がなくなっていく。
「次に目を覚ます頃には、きっともっと暖かくなっていてお日様はもっと光り輝いて、いけないわ、またドキドキしてきちゃう。」
風がなだめるように弱く吹いて、あの子は器用にそれに乗る。
「世界は素敵だわ。こんな感情は間違っているのかしら。少し怖いくらい。ああ、私はさぞかし素敵な場所で咲くのでしょう。これ以上ない優しい土の上で、綺麗な動物さん達の隣で、それで、それでこれ以上ない」
あの子は希望と春の調和の中に身を預けた。しかしそれはあの子の勝手な思い込みであり、空中遊泳の最中深く眠りにつくのは、あの子の種の最も大きな特徴である。
あの子が次に目を覚ますのは、殊更暑い日の夏の朝だ。すっかり大人びた一輪の花としてだ。