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一
黄金に輝く風に身を委ねていた。
空では春色が赴くままに交差しあい、木々達はその風に寄り添いささやかに音を立てる。
どこかで赤子の泣く声が聞こえたと思えば、またどこかで赤子をあやす声が聞こえる。
「どれ一つとっても希望よ。楽しいわ。黄金の風に身を任せ、私は一体どこへいくのかしら。ああ、希望とは未来のことだったのね。」
この子はそう言って微笑み、より一層気分和やかになって呟いた。
この子は頭に真白い綿をつけ、体一面うす茶色の花の種なのだ。なんの花かは預かり知らず、どこへ咲くかは春風の意思なのである。
希望とは未来のことだとしたならば、絶望とはなんであろうか。
この子はまだ絶望がなんたるかを知らず、己の匂いも知らず、何も知らないが故の華やかさを身に纏っている。