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月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が片丘さんと桜に会った日
7/60

報告:初耳

 放課後、桜と一緒に片丘さんの元へ向かった。途中のコンビニで買った飴を舐めながら歩く。もちろん片丘さんへのお土産にドーナツを買ってある。

 授業のこととか、学校に慣れたかどうか、食堂のおすすめメニューなど学生らしい話をする。普通の学生みたいに。

 しかし、非日常なものは頭から離れてくれない。

「桜は探偵なんだろ? 片丘さんの弟子ってことは片丘さんも探偵なのか?」

「んー……そんなような、少し違うような……」

「どういうことだよ」

「んー……まあこれから分かるよ」

 明らかに濁されたが何も言わないでおいた。これから分かるという言葉を信じて。

 そうこうしているうちに片丘さんのところに着いた。

「そういや、片丘さんってなんでこんなところに住んでるの? まあ時空歪めて独立した空間作ってる感すごいけど」

「ああ、動けないんだよ」

「は?それってどういう--」

 しかし続きを言う前に片丘さんが現れた。

「遅い。さっさと入りなさいそして早く報告を」

 不機嫌そうな声だが目はどこか輝いているように見えた。そんな片丘さんを見て桜は本人にばれない様にやれやれと笑った。


 ソファーに座り入れてくれた紅茶を飲む。紅茶は前と違い甘くなかった。人間界の砂糖になったのだろう。ドーナツを食べながら桜は報告を行った。

「横田さんたちの家を張り込みましたが確かに妖魔の気配はします。けれども浮気の確かな証拠はありませんでした」

「……そう」

「でも、こっそり包装紙見てたりアクセサリー選んでたりしてたから、浮気相手に贈るのかも……」

「なるほど……。後ろめたいことなら近くの店になど行けないものね」

「ただ、不思議なのが昨日の夜は妖魔の気配が少し薄くなってたんですよね」


 2人の話をぼんやり聞きながら紅茶を飲んでいたが、やはり違和感がある。

「……サプライズ」

「は?」

 怪訝な顔をされたが声に出した以上引き返せない。

「包装紙もアクセサリーも、バレないように遠い店で買ったのも全部彼女さんにサプライズするため……なんて」

 最後は引きつった笑いになってしまったが言い切ったぞ。

 2人の顔色を伺うと目を丸くして目を見合わせていた。

「朔、サプライズって何?」

 え、知らないの?

「なんというか……こっそり計画してお祝いしたりプレゼントをあげたりする感じかな。喜んでもらうために驚かす、みたいな感じ」

「人間にはそのようなものがあるのね」

「その依頼者達はもうすぐ交際2年目なんですよね? だったらそれをお祝いするんじゃ」

「なるほど」

 気が付いた時には桜も片丘さんも俺の説明に納得していた。妖魔にはそのような概念がないのか……。

「つーか、桜は探偵なんだろ? よくやれてんな」

 この時の俺は軽い調子で言ったが、桜は目を伏せた。そしていつもよりトーンの低い声を震わす。

「朔、騙しててごめんね」

「へ?」

「俺、探偵にもなりきれてないんだ」

 呆気にとられてる俺を見て桜は申し訳なさそうに笑った。

「本当の探偵は彼女、片丘さんなんだ」

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