調査:尾行
横田さんはあまり年の変わらなさそうな男性(この人を同僚Aとする)と電車に乗り、会社から二駅先で降りた。ちなみにここは井藤さんと同棲している家のある方とは真逆の方向である。
同僚Aさんと二人で夜10時まで営業しているショッピングモールに入った。
「……まさか、この建物に浮気相手が?」
桜はそう呟いたがその可能性は低い気がする。いかがわしい店はこの店にもこの近くにもないし、同僚Aさんを連れて浮気相手に会いに行くとは、そういった店に一緒に行く以外は考えづらい。まあこれは比較的健全な俺の考えだけど。
「とりあえず後をつけよう」
「了解」
横田さんたちは百均へ行きボールペンなどを買っていた。会社でいるんだな。しかし、2人はふらっと包装紙のコーナーへ行った。話し声は聞こえなかったが、なにやら可愛らしい柄のものを見ていた。それからため息をつき、また何か話し、先ほど選んだボールペンなどを持ってレジへ行った。2人がレジに行ったので桜は2人が見ていたものを確認しに、俺はレジへ向かった。レジでの2人の会話も特に何もなかった。
その後横田さんたちは女性向けのアクセサリー店に入っていった。さすがに中には入れないのでそのアクセサリー店が見える店で待機することになった。
「女の人ってアクセサリー好きな気がする」
「何がいいんだろな」
そうこうしているうちに横田さんたちが出てきた。手には袋を提げていたか何か買ったのだろう。
「指輪……なわけないよね。そんなに高級そうな店じゃないし」
「うん、違うと思う。この店ってわりと安いのばかりだよ。クラスのやつもよく行ってるみたいだし」
「え、高校生が相手……?」
「その発想はやめてあげろ」
その後も尾行を続けたが何の進展もなく、横田さんと同僚Aさんは駅で別れた。横田さんは寄り道することもなくそのまま井藤さんと住んでいる家に帰って行った。
「……何もなかったな」
これからどうするのか聞くと、桜はまだ張り込みをするという。
「俺は夜寝なくても大丈夫だから、浮気相手が来ないか見張ってるよ。明日は学校に行くから……放課後に片丘さんのところに報告に行こう」
それにしても、と桜は独り言のようにつぶやいた。
「朝よりも妖魔の気配が薄くなっている気がする」




