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月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が気持ちを自覚した日
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御祓:祭壇

「うわあああああ……」

 夜景が綺麗なのは一瞬で、すぐに暗い空の上だ。見た目よりも広い機内に、俺と桜と照虎さんと――千賀坂が座っている。もちろん操縦士は千賀坂の家の人だ。

「千賀坂さんって、お金持ちだったの……?」

「実家のパイプが太いのは認めるが、彼への給金は私の口座から出す」

 本当に何でもないように千賀坂は言うが、実際高校生で科学者になるにはお金の力は必要だろう。彼女の生み出した研究成果は本物だろうし金で評価を買ったとは思っていないが、パトロン的存在がなければそもそもスタートできない。

「私を媒介にして妹さんを助けるのだろう? 依頼料をどうしようかと考えていたところだったし、人助けに使ってもらえるのならこちらも嬉しい。それに――」

「それに?」

 千賀坂は強い眼差しでこちらを見た。

「君たちが『災害型』と定義づけたと言うことは災害、つまり常習犯的存在と考えられる。――ユウちゃんも被害者だったかもしれない。その可能性があることも、同じ目に遭う少女がいることも許せないんだ」



「着いたぞ」

 あっという間にスキー場の上空に着いた。

「さて、ここから崖下に降りるには2人乗りの小型カプセル機をワイヤーで繋いで降ろすしかない。2台あるが……私と高岡君、保護した妹さんは確定として」

 俺と照虎さんは目を合わせる。囮役と御祓役以外に最重要な役はない。どちらかといえば家族である照虎さんが行ったほうが安心出来るのでは。

 そう口を開きかけた時――照虎さんは首を横に振った。

 そうだ――そうだ。今、俺にできることは人に任せることじゃない。俺がしなきゃいけないことは――。

「照虎さんはここで長田さんを迎える準備をしておいてください。必ず、一緒に戻って来ます」

「――ああ、任せた」



 ワイヤーがゆっくりと降ろされる。桜と2人でカプセルに入ったが少し狭い。照虎さんが入ったらもっとぎゅうぎゅうだっただろう。

「桜、御祓の用意はできてる?」

「もちろん――だけど、やり方を間違うことも考えられる。その時は朔」

 桜が俺の手を強く握った。

「何が何でも、長田さんを連れ帰ろう」


 下降する音が止まった。崖下に着いたのだろう。

 カプセルから降りるとすぐに冷気を感じた。けれども――。

「そんなに寒くない、というか」

「片丘さんの屋敷と同じで異空間化してるね……社ができているし」

 小さな鳥居と祠がある。その奥には蜃気楼のように不安定な景色。きっとあの先が屋敷のように異空間化しているのだろう。

「な、なんだここは……」

 千賀坂も降りてきた。妖魔が見えない千賀坂の目にもこの空間がしっかり見えているようだ。それだけでなく――。

「気持ち、わるい」

 妖魔の気配も感じ取れていた。


 あの奥から感じる、と指差したのは景色が揺らいだ空間だった。どうやら千賀坂にはもう少しくっきり見えているらしい。

「千賀坂、耐えられるか?」

「……女性代表として来ているんだ、依頼料分の働きはするさ」

「もらい過ぎな気はするけどな」

 千賀坂の両手を俺と桜でつなぐ。一応触れていたほうが妖魔に弾かれない気がするからだ。どの道支えていないと千賀坂は倒れてしまいそうなほど、妖魔の気に当てられていたのだが。

 ――長田さんはこんな苦しみに耐えていたのか?


「せーのでいくぞ」

「ああ」

「いくよ!」

 せーの、で空間に足を踏み入れる。

 真っ白な霧に囲まれた風景。目を凝らすと石で出来た寝台――祭壇のようなものがあった。

 そこには――。


「長田さん!」

 長田さんが横たわっていた。

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