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月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が気持ちを自覚した日
54/60

調査:神隠

 千賀坂へ電話を掛けるが留守電になってしまった。夜だし風呂にでも入っているのだろうか。折り返しかかってくることを待つしかない。

「朔が気になっているのは『あの地点』のことだよね?」

「ああ」

 桜の言う「あの地点」。GPSが指し示して、嫌な気配がしたのに消えたあの酷く急な崖のことだ。


 桜は一度家に寄って持ってきたノートパソコンを取り出した。

「こっちでもネットとか使って調べてみよう」

「ネット?」

「オカルト板とか結構役に立つよ」

 桜はニッと珍しく悪い笑みを浮かべた。

「依頼料代わりに久那敷さんにも手伝ってもらおう――見えていた妖魔を見過ごすのは、同業者としてどうかと思うしね」



「……なかなかに酷いね」

 オカルト板、スキー場を叩く掲示板にざっと目を通したが想像していたよりも記事が見つかった。

「神隠し同然の行方不明、スキーの最中に崖から落ちて亡くなった案件、近くの集落で行われていた生贄を伴う儀式……。時代はバラバラだけど、この周辺でこんなにあるなんて」

 実際は面白がった他人の創作ばかりだろう。オカルト板とは言え明らかに辻褄が合わないものや、最新の書き込みを見るとネタバラシをしたものがほとんどだった。

 でも――実際に起こった事件の記事が確かに存在している。


「久那敷さんが送ってくれた民俗学のデータも目を通したよ。生贄の儀式例が何件か存在している」

「神隠し、生贄、死亡事故……最初の2つは繋がりやすいけど、死亡事故は明らかに現実のものだろ。何か関係あるのか?」

「何かに魅せられて――ならあり得るわ」

 3人(プラス1人)で考えるが答えは出ない。


「そもそも、神様が今回の長田さん家出事件を引き起こした可能性はあるんですか?」

 答えるのは難しいわね、と片丘さんが呟いた。

「神に会ったことはないから断言できないけど――妖魔がまとう気配は独特のものよ。そして神聖さは微塵もない。久那敷が妖魔と判断したこと自体が誤りの可能性はあるけれど、まず神の気配を察知することは誰にも出来ないわ。それこそ贄の素質が先天的にでも後天的にでもなければ」

「贄の素質……」


 神の寵愛を受けた、なんて表現はたまに聞くけど、「寵愛」ではなく「贄」なのか。

 長田さんは神に愛された子(むしろ長田さんを神のように崇めるファンクラブが存在しているが)のように思えるが、生贄の素質があるかと言われたら違うと言いたい。

 でも、生贄として捧げられる方便として多いのは――。


 思考の渦に陥る前に引っ張り上げられた。具体的には片丘さんに足を踏まれた。

「今回の長田さんは神隠しの例が近いわね。突然妖魔の気配と共に消えたから」

 でもおかしいところがたくさんある。

「自分の意思で家を出た――ということは、妖魔が見えていた?」

「可能性はあるわね。新月くんが私を見えたように。厳密には私以外の妖魔はそれまで見えていなかったことだけど――それ自体が異例すぎて考えにくい。それでも、強力すぎる妖魔なら可能性はあるわ」

 やっぱり、俺が片丘さんを見えたのは異例だったのか。確かに、妖魔用の砂糖を食べてから気配を感じるようにはなったけど……。



 携帯が突然鳴った。

「もしも――」

「要件を早く言え」

「開口一番それか」

「追加で聞きたいことがあるならまたかけ直す。今実験の最中なんだ早くしろ」

 思わずムッとした声になってしまったが安心した。ようやく千賀坂と繋がった。


「GPSがスキー場を指していることが分かったのは修学旅行初日だよ。ずっと逆探知していたけどはっきりしたのはホテルに着いてからだな」

「ホテル……」

 俺たちも泊まった、スキー場がすぐ近くのホテルだ。

「ああ、そういえば」

「?」

「再びGPSが不安定になったのは――君たちに『幽霊かもしれない』と言った少し前からだよ」

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