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月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が気持ちを自覚した日
53/60

調査:焦燥

「考えられるのは洗脳型――としても、妖魔の気配は残るはずよ。高岡たちが追った結果が届くまで情報収集をしましょう」

 片丘さんは冷静に言った。

「何か嫌な気配がなかったかしら。さっき長田照虎さんに言っていたことで、久那敷以外に引っかかった部分はなかったかしら」

「そう言われても……」

 長田さんから妖魔の気配なんて感じなかった。


 うーんと悩んでいると片丘さんは紙とペンを持ってきた。

「なんでもいいから書き出してみなさい」

 修学旅行の行程を思い出しながら感じたことを書き出していく。


 1日目。修学旅行初日。早朝に学校を出発して夕方までバスに揺られる。

 夜にオリエンテーションがあった以外は何もなし。特に悪い気配は感じなかった。


 2日目。スキー初日。開会式の後、午前はインストラクターの人と、午後は経験者組は自由、初心者組は引き続きインストラクターの人とコースを回る。

 朝食バイキングの時に長田さんと会ったけど緊張していた程度の顔色の悪さ。悪い気配は感じない。

 昼休憩時に千賀坂と会い、午後はGPSが指し示す場所を目指した。その道中迷子になった長田さんと遭遇した。半べそだったけど微笑む余裕はあった。


 3日目――――。



「……あれ」

 何かを忘れている気がする。2日目に何か大事なことがあったような――。


「……とりあえず書き出しました」

 個人的に怪しいと感じたのは4日目の寺社回りをした時。顔色がとても悪かったし、何か隠しているような感じだった。寺社だし、変なものが集まりやすいのかもしれない。妖怪漫画の読みすぎかもしれないが。


「……そう言えば、腑に落ちないことがあったのだけれど」

 片丘さんが俺の書いたメモを見て呟いた。

「千賀坂さんの友人がいるとされた場所、何か理由があるのかしら」

「理由……?」

 思わず聞き返すとため息を吐かれた。

「新月くんは推理小説を読まないの?」

「全く……片丘さんが読んでいる印象もあまりないんですけど」

 この屋敷にはあまり本がない。紅茶片手に読書してそうなイメージがあるが、数少ない本棚には辞書や歴史書くらいしかない。

「高岡の祖母にお世話になっていた頃にね」

 そう言いながら片丘さんはペンを持った。


howdunitハウダニットwhodunitフーダニットwhydunitホワイダニット。順番にどうやって、誰が、どうして起こったかを重視した推理小説のことよ。私たちが普段妖魔の種類を判別しているのは?」

「ハウ……ですかね。フーがその次?」

「ええそうよ。そして、今私が気になっているのがホワイダニット。どうして、よ」

 どうして。あまり気にしたことはなかったかもしれない。

 どうして、どうして――。


 そう考えているうちに携帯が鳴った。桜からだ。

「途中で気配が途切れたところがあったけど――とても不自然だった。100が0になった感じだ。それも道の真ん中で。洗脳型が操っていたと仮定するなら瞬間移動を説明できない」

「じゃあ、長田さんは……」

「……自らの意思で瞬間移動できる妖魔に誘拐されたとしか思えない」

 ただ時間だけが、過ぎていく。


 桜を片丘さんのところに戻し、3人で考える。照虎さんは近くの駐車場で仮眠をとってもらっている。気力だけで頑張っている姿を見るのは辛かった。

「自らの意思で誘拐、それも家出の形を取るなんて――憑依型にしては高度すぎるわ」

「それもどこに連れて行かれたのか分からないなんて……」

 手詰まりだ。それでも考えるしかない。


 どうして誘拐されたのか。

 どうして書き置きを残したのか。

 どうして久那敷さんに指摘されたとき心当たりがある顔をしたのか。

 どうして――。



「……分からないなら聞くしかない」

 気がついたらそう呟いていた。でもそれしか、今は思いつかない。

「片丘さん。千賀坂の電話番号を教えてください」

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