報告:絶許
消えた峰村さんを探すことにした。久那敷さんとの約束の時間まで、時間はあまりない。
けれども、テーマパークを歩き回ったが峰村さんも妖魔の気配も見つけることはできなかった。
「どうしてだろう――」
どうして、こんなに妖魔の気配がないのに祓い屋の久那敷さんに依頼がいったのだろう。
「一度情報を整理しよう」
結局、久那敷さんとの待ち合わせ場所であり峰村さんの正規の職場である〈にんにん〉エリアの食事処に来た。ちなみに峰村さんはキッチンスタッフらしいのでホールには出てこない。
「まず、洗脳型説」
桜が修学旅行のしおりに挟んでいたルーズリーフに書き出す。
「周囲の人にも見えているし販売のやりとりは普通に行われていたから、依頼者さんが洗脳されている筋はないと思う。周囲の人を洗脳しているにしても、妖魔の気配が一切しなかったから洗脳型は無しだ」
「こっちも、妖魔の気配はなかったから〈にんにん〉エリアの人が洗脳されている様子はなさそうだ」
だよねえ、と言いながら桜は抹茶オレをすする。現在16時。夕食はホテルで取る行程なので、あまり昼を食べていないとは飲み物しか頼まなかった。財布事情も考えて。
「次に憑依型――だけど、同時に存在する時間が確かにあったからそれはないと思う」
変化型は人間以外の生物が対象なので、しらたまともっちーのようなドッペルゲンガーはありえないのだ。
「じゃあ、他の人に憑依して峰村さんに見せかけているという説は?」
ある意味洗脳型と憑依型のハイブリットだが、ないことはないだろう。
しかし桜は首を横に振る。
「そうだとしても、妖魔の気配がないから考えられない――本当にこのテーマパークは、不自然なほど妖魔の気配がないよ」
――そういえば。
「桜の――」
「ごめんね、お待たせ」
言いかける前に、久那敷さんが到着した。
「――それじゃあ、君たちにも分からなかったんだね」
残念そうに久那敷さんは注文したクリームあんみつを食べる。
「僕のほうで調査は続けるよ。今日はありがとう――もし、後で何かわかったら教えてほしいな。君たちと同じホテルに今日は泊まるから」
それじゃあね、と久那敷さんは手を振った。
「――というわけです」
就寝時間になってから抜け出し、トイレで片丘さんに電話で報告する。桜がメールで逐一報告していたらしいが、何故か届いていなかったそうだ。
深いため息のあと、静かに言った。
「言いたいことはたくさんあるのだけど――まずは確認を取りたいわ。新月くん。何か違和感はなかった?」
違和感。違和感といえば――。
「妖魔の気配が驚くほどなかったです」
「それだけ?」
それだけ――と言われたら、それだけではないけれど。
「桜から感じる微量な妖魔の気配も、なかったです」
「そう――分かったわ」
片丘さんは一呼吸置いたあと――けたけたと笑った。俺と桜は困惑する。どうしよう、片丘さんが壊れてしまった。
「アッハッハッハッハ――――――――絶対に許さない」




