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月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が自分の程度を知った日
42/60

導入:祓屋

 テーマパークは一言で言うと「混沌」だった。

 長野は確か忍者が有名だっただろうか? 詳しくは知らないが和の感じと、今時のもの〜みたいなふわふわした感じ両方が混じっている。なんでこんなことに。

「じゃ、今から自由行動だがくれぐれも羽目を外さないように。集合時刻にも間に合うように。解散」

 生徒の大半が呆気にとられている中、先生の冷静な声で自由行動が始まった。


「桜。相手はどこにいる感じなんだ?」

「まってね、片丘さんの方に届いたやつの転送メールはっと……うん、10分後に『〈にんにん〉エリア・兵糧丸ポップコーン売り場』の近くのトイレ前で集合みたい」

兵糧丸ポップコーンって」

 頭が痛くなりそうだ。

「今から向かってたらちょうどっぽいね。話聞いてからご飯にしようか」

「だな」

 多くの生徒は昼食を食べているか、人気のアトラクションに並んでいるか。少々奥のほうにあるポップコーン売り場に行く人はいないだろうから、学外の人と話しても見つかることはないだろう。


 それにしてもややこしいテーマパークだ。

 マップを見ると入り口付近と円状になっているテーマパークの中心にしか〈中立〉エリアはない。そこを通らなければ〈にんにん〉エリアと〈トレンド〉エリアは行き来できないようだ。

「どっちかにコンセプトを絞ればいいのにな」

「そう? 混沌としてて俺は好きだよ」

「その感性は妖魔だからか? それとも桜個人?」

「えー……どうだろう。でも、人型妖魔の傾向を見ると割とゴチャゴチャしたの好きな感じはあるよ。そもそもが妖怪と悪魔の中間的存在だしね」

「なるほど……」

 人型妖魔は片丘さん、桜、鳥月さんとしか会ったことがないけど、そういうものなのか。あまり感じたことはないけど、見た目以外にその性質が表れているのかもしれない。


 〈にんにん〉エリアはゲリラ的に忍者ショーをしているようだ。演出として紙吹雪を使うらしく、よく道に落ちていた。ショーの後近くのスタッフが回収しているのも見た。

「あ、そろそろだよ……あれ?」

 桜がポップコーン売り場を指差しかけて動きを止める。どうした、と思い視線の先を見ると――。



「――なので、大丈夫です」

「――に? ――はちゃんと――」

「いえ、本当に――から。――なんて、――」


 近くのアトラクションの音でよく聞き取れないけれど、大学生くらいの男の人と長田さんがそこにいた。


「長田さん!」

「――え、桐野君? それに高岡君も」

 思わず呼びかけてしまったが、ちゃんと聞こえたようだ。長田さんがこっちに向かって駆けてくる。

「長田さん、大丈夫? 知り合い?」

「知らない人……」

 困惑した表情を浮かべている。

 うちの生徒をナンパしないでください、と言いかけたがやめておく。この後のことを考えるとあまり学外の人と揉めたくない。

「長田さん、同じ班の人は?」

「お手洗いの帰りなの。他の子は近くのアトラクションの入り口で待ってくれてる」

「そっか。じゃあ俺たち送るよ。朔もそれでいい?」

「もちろん」

「……ごめんね、ありがとう二人とも」

 急いでアトラクションへ向かった。ちらりと声をかけていた男の人のほうを確認すると――笑みを浮かべていた。長田さんではなく、俺たちに。

 もしかしたら――。





「やあ、探偵の助手君たち。さっきは同級生を怖がらせちゃったみたいでごめんね。別にナンパのつもりはなかったんだけど、顔色が優れていなかったから気になってさ」

 ――やっぱり。

「僕は久那敷。祓い屋をやってる大学生です」

 狐系美男子、久那敷さんはそう言って笑った。

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