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月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が自分の程度を知った日
41/60

導入:観光

 熱湯のような湯に数秒浸かる。うん、やはり熱い。烏の行水になるがその分シャワーをしっかり浴びたので許してほしい。

 3分以上浸かっている奴は猛者だ、と男子の中で暗黙の了解となった修学旅行3日目の風呂の時間。第3回「激熱風呂に何分浸かれるかなチャレンジ」優勝者は、痛覚が人間とは異なる桜が当たり前のように優勝した。ちなみに第1回と第2回も桜の圧勝である。


「いい湯だったねえ」

 昨日まで千賀坂との待ち合わせに使っていた閑散とした休憩所で、コーヒー牛乳を飲みながら桜は言った。

「よく入れるよな」

 俺もフルーツ牛乳を飲む。今は入浴時間で、明日からの長野観光のオリエンテーションまで30分ほど余裕ある。

「明日の観光楽しみだね」

「寺社回ることがメインだけどな」

「一応テーマパークも行くでしょ? そこが自由行動できるし……もう一人とも会うし」

 俺たちが風呂に入ってる間に届いていた片丘さんからのメール。


「あすのしゆうこうとうてせつしよくよ」

 明日の自由行動で接触よ。


 明日のテーマパークで、もう一人の「片丘さんに接触したい人間」と会うことになっている。



 4日目。午前中はホテルを出て寺社をいくつか回った。あまり長野の寺社に詳しくないが美しい景色を見れただけでも満足だ。

 さてこれからだが。正午になる前にテーマパークに到着する。2年生全員が一度に食事をとれる店はそうそうないので、自由行動にしてばらけて食べられるように予定が組まれている。

 こちらもスキーと同じく、班を気にせず自由に行動できる。多くの生徒が食事をとっているうちに接触する予定だ。


「……桐野君」

 バスへ戻る途中不意に袖を掴まれる。長田さんだ。

「どうしたの長田さん……って、顔色が悪いよ。大丈夫?」

 ドキッとしたのは一瞬で、すぐに心配に変わる。そんな俺の表情を見てか、長田さんは少しだけ笑みを浮かべた。けれども弱々しい。

「あはは……ごめんね、ちょっとふらついちゃって掴んじゃった」

 そう言ってパッと袖から手を離す。

「体調悪いなら無理しないで」

「大丈夫……ごめんね、本当に大丈夫なの。たぶんお腹空いてるからかな」

「……ならいいけど」

 長田さんはニコッと笑って先へ行ってしまった。心配だけれど、長田さんはクラスの女子たちと行動しているから俺が入るわけにはいかない。昨日までのスキーの疲れも残っているのだろう。実際、3日間スキー漬けだったので身体が変な感じだ。

 長田さんのことは心配だけど、体調が良くなることを願うことしかできない。




 バスがテーマパークに着いた。

 うん。パンフレットとかで見てたけどやっぱり……。

「ごちゃごちゃしてるなあ」

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