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月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が気づかないふりをした日
38/60

推理:拒絶

 変化型が宮倉さんを偽って電話をかけたと仮定したら、まず届くはずがない。妖魔だから。

 かと言って人間の身体を使った洗脳型もしくは憑依型が電話をかけたと仮定したら、近くに宮倉さんの身体がなければいけない。

 記憶の面から考えて、幽霊と仮定したら、それはもう――俺たちで解決できないのではないか? だって桜の御祓は、妖魔にしか効かないはずだ。だったら――――。


「朔。落ち着いて」

 桜が背中をさすってくれた。浅く、でもゆっくりと深呼吸をする。

「新月くん。この件は幽霊ではないと断言するわ」

 桜の携帯越しに片丘さんの声が聞こえる。とても穏やかな声だ。

「高岡はもう分かっているのでしょう? 可能性を思い出せていないのはあなただけよ」

「思い出す……?」

「そう。思い出すのよ。考えるのよ。人間の電話に妖魔から電話がかかってきても、おかしくない状況を」


 人間の携帯に妖魔から電話がかかってきてもおかしくない状況。

 妖魔側からかけても良いと判断された時。今回の片丘さんのように。

 でも、そこまでする意味がわからないし許可が下りるとは思えない。それに、開発側に問い合わせて調べたらすぐに判明するはずだ。片丘さんも、桜がメールで報告したのだからもう調べてくれているはず。それでも何の結果報告もないということは違うということだろう。


 そうなると、そもそも電話自体が――。




「……思い出せって、そういうことだったんですね」

「あら、ようやく気づいたのね」

 片丘さんが意地悪く笑う。きっと彼女がホームズならこう言うだろう。「初歩的なことよ」と。

 トイレの個室を出て、設けられている小さな窓から空を覗く。雪は降っているけれど、確かに月がそこにあった。




「今回の依頼、鍵を握っているのは千賀坂さんよ」

「千賀坂さんが……?」

「彼女、妖魔に否定的で幽霊に対しても馬鹿馬鹿しいといった態度だったのでしょう? そういったものを、強く否定して信じていないのよ」

「確かに、リアリストって感じでした。否定するために研究しているって感じで」

「千賀坂さんの中では、幽霊はいない。でも確かに連絡があった。友人は生きているはずだ――という感じですか?」

「そうね、高岡の想像通りだと思うわ。脳か心かは分からないけれど、拒絶の気持ちが強いようだから」

「……それから、唯一の友だと言っていました。行方不明になってからきっと長い間、気にかけていたんでしょうか」

「ええ。新月くんの言う通り、心はどんどん不安に侵食されていったのでしょうね」

「じゃあつまり、今回の依頼は――」

「宮倉侑梨は生きていて、私に電話をかけてきた――そう思い込んでいる、思い込ませてくれている洗脳型に憑かれた千賀坂さんを祓えば、解決よ」



「でも、千賀坂さんから妖魔の気配はしなかったのに……」

「彼女、あなたたちの目の前で電話に出たことはないのでしょう? 彼女が電話を持っている時に妖魔の力が強まると考えられるから、その時を狙いなさい」

 そうか。確かに一度も携帯電話を持っているところを見ていない。洗脳型は依頼者の周辺をまとわりつくと聞くが、実際に憑かれているところを見たことはなかった。




 そろそろ部屋に戻らなければいけない。

 桜が「切りますね」と言うと「ええ」と返事があった。

 ――それから一拍置いて、片丘さんは意地悪く笑った。

「新月くんが初めて関わった、井藤さんの依頼と同じケースだったでしょう?」

 ――ああ、そうですね!

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