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月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が気づかないふりをした日
35/60

調査:交信

 リフトに乗り、ポイントの近くのコースへ向かう。どんどん上がっていくリフトから下を見ると、うちの高校以外の学生がたくさん見えた。あの中に、千賀坂さんの同級生もいるのだろう。

「なあ桜」

「何?」

「今回の件って、妖魔絡みの可能性もあるんだよな?」

「……9割がたそうだと思ったほうがいいよ」

 桜は少し悲しげに答えた。


 俺たちが泊まっているホテルはこのスキー場の中で一番大きく、千賀坂さんたちの高校も同時期に泊まることができている。あとは小さめのホテルがいくつかあり、そこに他のスキー客や修学旅行生は泊まっている。

 もし宮倉さんが普通の人間なら。

 いくら泊まっているホテルが違うからって、会いに来れるはずだ。

 それなのに頑なに場所を変えないのは。


「何か動けない理由があるか」

「洗脳型が憑いているか」

「憑依型が憑いているか」

 最後のは2人の声が重なって、不謹慎だけど思わず顔を見合わせて笑ってしまった。ちょっとは俺も探偵の助手らしくなってきたのだろうか。

「とにかく、妖魔絡みだと思って気をつけて調査しよう。あ、そろそろ着くね」

 気がつけばリフトはもう地上に近くなっていた。

 リフトから降り、ポイントのあるほうのコースへ向かった。



 ポイントまであと少しのところで問題が発生した。

「ごべんね、だがおがぐん、ぎりのぐん……」

 迷子になったあげく腰が抜けて立てなくなった長田さんに遭遇した。

「大丈夫だよ、立てる?」

「とりあえずスキー板から靴を外そう。手伝うから」

「うん……」

 パニック状態になるのは分かる。初めてのスキーでひとりはぐれたら心細いだろう。それにしても半べそ状態でも可愛いのは流石長田さんといったところだ。ファンクラブに見つかったら俺たち殺されそうだけど。

「たぶんこの下のコースで待っててくれてると思うから、しばらく一緒に行こう」

 長田さんはしばらく深呼吸をしていた。恥ずかしさからか少し顔が赤く見える。

「ありがとう……うん、ちょっと落ち着いてきた。何とかいけそう。それに……」

 それに?

「慣れ、だもんね。何回か滑ったら、この怖さも笑い話になるよね」

 長田さんはふわっと笑った。

 何でだろう、俺の顔も少し熱くなってきた。


「……あ」

 桜が小さく声をあげた。どうしたんだ、と聞くと無言で指を遠くに向けた。それからこっちを見てパクパクと口を動かす。


 あそこ、れいの、ぽいんと。


 分かった、と俺も無言で頷く。長田さんを送り届けたらもう一度リフトに乗って向かおう。

「……ん?」

 待てよ。あの地点は確か。


 インストラクターの人が教えてくれた、危ない場所だった。

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