依頼:人探
相談者:千賀坂/17歳/女子高校生・科学者
捜索対象:宮倉侑梨/17歳
依頼内容:何年も連絡を取っていない、行方不明になっていた友人から突然連絡があった。何度かかかってきたが、いつもすぐに通話が切れてしまう。逆探知した結果、GPSはこのスキー場を指していた。でも私は、そこまでたどり着けない。友人と直接話したいから、探してきてほしい。
「じゃあ、経験者コースの皆さんは指定されたコースなら自由に回って大丈夫です。ただし、1人では行動しないこと。必ず2人以上で行動するように!」
インストラクターさんの説明が終わると経験者組は散り散りになった。
俺と桜は千賀坂さんから教えてもらったポイントまで向かって――――はいるのだが、少し遠回りなほうのコースを経由して向かう。久しぶりのスキーだ、少しくらいいいだろう。
「俺たちは滑れてよかったね。そうじゃなきゃ、依頼どころじゃなかった」
桜がポツリと漏らした言葉に頷く。それから数十分前を思い出す。
「そこまでたどり着けない……ってどういうことですか?」
結界的な何かがあるのだろうか。
友人と言っているけれどあまり会いたくなくて、心構えの時間が必要なのだろうか。
答えを待っていたら――千賀坂さんはふいと顔を背けた。
「君たちは探偵なんだろう? お得意の推理でもすればいいさ」
「は?」
なんで喧嘩腰なんだ。思わず声を荒げてしまった俺とは反対に、桜は落ち着いて聞き返した。
「どんな些細なことでも必要な情報なんです。妖魔絡みの依頼でなくても、知らなければ分からないこともあるんです。どうしても言いたくなければ大丈夫ですが、よかったら教えてください」
「熱を、出したんだ」
「……?」
「私のほうは修学旅行4日目だが、初日に高熱を出してしまった。もう治りかけだが、安静にしておくよう言われた。だから私はスキーの滑り方を知らない。行けないんだ」
淡々と言ったが、彼女は確かに高校生の少女なんだと気づかされた。
「行方不明だった友人から連絡があったって、不思議だよな」
「うん……連絡先を知っていたことも、スキー場にいることも、直接会おうとしないことも」
友人の宮倉さんは、どういう人なんだろう。何年も前に行方不明になったような口ぶりだったから、千賀坂さんの時は幼い頃のままで止まっているのだろう。
「どうか見つかりますように」
そう願いながらストックを握った。