実行:告白
「書けたわ!」
2時間後、ようやくラブレターは完成した。
「あとはこれを渡してもらうだけね。できたらロマンチックな雰囲気のほうが良いかしら」
「いや、俺らが書いたって勘違いされそうなんでそれは避けたいです」
それに俺らは千秋が鷲尾さんのことを好きだと知っている。正直渡しづらい。
「うーん、じゃあクリスマスイブはどうかしら。確かその日は終業式なのでしょう? 夜とか雪とか注文は付けないから、その日に渡してほしいわ」
一応気を遣ってくれたみたいだが、逆効果かもしれない。
そして当日になった。
「はー、早く放課後にならねーかな」
「長田さんのクッキー……長田さんのクッキー……」
ぶつぶつと長田さん信者の声が聞こえる中、俺と桜の顔色は悪かった。
「俺、なんか嫌だ……邪魔してるみたいで……」
「俺こそ嫌だ……でも依頼だし……」
ちゃんとラブレターを渡して、返事を貰わなければいけない。後日返事をさせて、と言われるかもしれないがおそらく今日だろう。そして返事はきっと――。
「はーじめ、桜くん」
「うわああああっ!」
思わず声を揃えて叫んでしまう。振り返ると千秋が不思議そうな顔をして立っていた。
「どしたの叫んで」
「急に声かけるなよ……。で、何?」
「いや、時間そろそろだし体育館行こうぜ」
時計を見ると終業式開始の10分前。そろそろ移動しないと体育教官からぐちぐち言われてしまう。
「うん、わかった」
桜はそう返事をすると、俺にだけ聞こえる声で言った。
「クッキー販売終わったあとに渡そう」
終業式、表彰伝達、冬季休業時の注意と、長々とした式も終わりホームルームになった。
「2月には修学旅行があるから、この冬休みにはしゃぎすぎて体調崩すなよー。では解散! 良いお年を」
担任のその言葉で、ワッと歓声が上がった。冬休みの始まりだ。
「えーっと、調理部のクリスマスクッキー販売は体育館前で行いまーす。30分後からでーす」
クラス唯一の調理部として声を上げるも、販売のことは全員ご存知らしい。多めに作ってはいるけど、足りるだろうか。
桜と千秋にまた後で、と言い調理室へ向かった。クッキーはもう出来ている。あとは最後の点検をして、箱に詰めて移動するだけだ。
結論から言おう。秒で売れた。
「1人ひとつって制限に切り替えてよかったね……」
「さすが愛結様効果……」
「もう、何言ってるのー。みんなが頑張ったからだよ」
長田さんファンクラブの力もあるだろうが、実際今回はいつも以上に売れたらしい。この前の調理準備室での事件から、活動を気にかけてくれた人が多かったみたいだ。校長先生まで並んでいた時は、裏方作業をしている俺にまで空気のざわつきが伝わってきた。
「朔、今大丈夫?」
声をかけられたほうを見ると桜が立っていた。その奥には千秋が。
「今行く」
さあ、最後の戦いだ。




