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月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が名前を知った日
24/60

調査:見極

 桜と2人学校へ向かう。依頼者本人である鳥月さんがついてくれば早いのに、「だって緊張するじゃない。キャー!」とか言って現在片丘さんとお茶している。正直片丘さんといるほうが色々と危ない気もするが。前回の依頼料未払いだったし。


「確かこの辺で見かけたんだっけ?」

「そう。時間帯はあと半時間後くらい。そして、この辺の学校といえば俺らの高校くらいしかない――中学は2つあるけど」

 鳥月さんの話では、その男の人は学生服で徒歩だったそうだ。この辺で徒歩で通える高校は俺らのところくらい。バス停までも遠いため、他の高校の生徒は大抵自転車に乗っている。中学は2つあるが基本自転車通学と決まっているので可能性は低いだろう。

 携帯で時間を確認すると午後5時37分。見かけたのが半時間後だとしても、帰宅部ならとっくに帰っている時間だし、運動部の帰宅時間と考えると早い気もするから、おそらく文化部だろう。

「とりあえず待ってみよっか」

「そうだな」


 肉まんを買いたくなるような寒さ。日はもうほとんど沈み、北風が通り魔のごとく吹きすさぶ。クリスマスに向けてきらめき出してきた街中とは違い、田舎に近い高校周りは寒い静けさにつつまれている。

「あ、桐野先輩じゃないですか。お疲れ様です」

 後ろから凛とした声が俺の名前を呼ぶ。振り返ると鷲尾さんが立っていた。

「お疲れ。こんな時間まで何してたの?」

 今日は調理部の活動日ではないし、鷲尾さんは兼部をしているわけではない。見たところ友達と一緒というわけではないし、学校で自習するとしても1人夜道を帰るのは避けるだろう。

「それがですね、3学期の始業式の午後にある百人一首大会の準備をしていまして。それで気がついたらこんなに遅くなっちゃいました」

「他の子はもう帰ったの?」

「いえ、帰ったというかみんな部活に行きました」

 今日部活がない生徒は鷲尾さんだけだったらしい。

「そうなんだ。よかったら俺たちが送ろうか? あと半時間ほど待ってもらわなきゃいけないけど」

 桜が声をかけるも、鷲尾さんは首を横に振った。

「え、悪いですよー。友達が見つかったらその方に頼みます」

「じゃあ、俺らの用事が終わるまでに知り合いが来なかったら送るわ。それでいいか?」

 俺の押しに鷲尾さんはうーんと考え、少し笑って答えた。

「じゃあ、その時はお願いします」


 20分くらい経った頃、ちらほらと生徒が帰宅し始めた。運動部よりも文化部の生徒のほうが多い。それでも、吹奏楽部や美術部やらと女子しかいない部活ばかりだった。鷲尾さんの友達は残念ながらいない。

「あれ、朔に桜くんに、鷲尾、さん?」

 振り返ると千秋をはじめとする科学部のメンツが立っていた。ちなみに科学部は全員男子だ。きっとこの中にいる、はず……!

「科学部っていつもこの時間に帰ってるの?」

 桜がそう問いかける。しかし千秋は苦笑いしただけだった。

「大きい実験をしない日はもう少し早いよ。基本俺だけが残って作業することのほうが多いし」

「水臭いですよ先輩!」

「これからは俺らも残りますから!」

「一緒に研究資料整理しましょう!」

 後輩たちがワイワイと声を上げる。頑張ってくれよ、科学部。

「じゃあ千秋、鷲尾さん送ってやってくれ。俺らもうちょいやることあるから」

「えっ、桐野先輩!?」

「朔……」

 鷲尾さんが少し赤らんだ顔で俺を見て、千秋がパアアッと顔を明るくして俺を見る。

 俺と桜は親指をグッと立てる。頑張れよ、千秋。お礼は肉まんでいいからな。



 その後しばらく待って見たが、どれも違う気がする。男率は高いが、運動部ゆえにジャージ姿ばかりだった。

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