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月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が名前を知った日
23/60

依頼:代行

 説明された容姿通りの綺麗な人――うん、綺麗だけど自画自賛してる綺麗なナルシシスト女性だった。

「はじめまして。鳥月とりつき風花ふうかよ。花鳥風月のアナグラムだから覚えやすいと思うわ」

 にこやかに笑う彼女、鳥月さんは現在片丘さんにサイドテールになった髪を引っ張られている。片丘さんはというと鬼の形相だ。

「鳥月嬢、あなた前回の依頼料払ってないの、忘れてないわよね?」

「いやん、鳥月嬢だなんて呼ばないでよ友人でしょ? いい加減下の名前で呼んでくれてもいいじゃないの」

「お生憎様、私が下の名前で呼ぶ人は世界で1人しかいないの」

 ……なんだかんだ仲よさそうに見える。そう言ったら殴られそうだから黙ってるけど。横の桜をちらりと見ると同じように苦笑いを浮かべていた。

「――とりあえず、俺たちは珈琲持ってこよっか」

「だな」

 さっきの登場からバタバタして、一度退散した珈琲とクッキーたちよ、待ってろよ。



 冷めていたので淹れ直した珈琲とクッキーを2人の前に出す。俺たちが作業している間に2人はソファに向かい合うよう座っていた。

「あら、美味しそうなクッキー。あなたが作ったの?」

「お、お口に合えば……」

 いいのですが、と言い終える前にルンルンとした感じで鳥月さんはクッキーを口に含んだ。数回噛んだあと――驚くほどスッと無表情になる。

「……味がしないのだけど」

 横目で片丘さんを見ると必死で笑いをこらえていた。よかったですね、嫌がらせ成功して。俺の心は傷ついてるがな。


 簡単に自己紹介をし、鳥月さんに名前と顔を覚えてもらったところでようやく依頼内容を聞く。

 とは言え、今回は照虎さんの事務所を仲介したものではないため、探偵らしく片丘さんに任せることに。一応片丘さんが探偵で、桜は探偵(弟子)だからな。

 片丘さんが思わず苦笑いを浮かべてしまうような、めんどくさい依頼とは。


「それで、今回は誰なの? 依頼なんて2年ぶりじゃない。利子は高いわよ」

「それを探してほしいのよ。今回はほんっとうに、ビビーってきたのよ一瞬で!」

「……もしかして、また?」

「そう、また!」

 話の流れが掴めない。どんな依頼なんだ?



「告白代行、お頼みしますわ!」





 相談者:鳥月風花/??歳/妖魔


 捜索対象:人間の男/おそらく高校生/この辺に住んでいる


 依頼内容:人間の男の人に恋をした。でも、私は妖魔だから彼には私のことが見えない。そして一目惚れだから誰かも分からない。

 彼を探し出して、私の代わりに告白してほしい

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