表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が名前を知った日
21/60

導入:恋話

 もう終業式は間近に迫っている。来年は受験生。ある意味遊べるラストチャンスな年末がもうすぐそこ――だが。


「彼女いねえやつには酷だよなあ」

 友人の湯川ゆかわ千秋ちあきが隣でぼやく。箒でガサガサと雑に掃くから机にガンガン当たってる。てかおい、それ俺の席。

「お前、いつもそれ言ってるよな」

「だってさあ、クリスマスでしょー、正月でしょー。彼女いるのといないのでかなり変わるじゃん」

「隣のクラスに千秋のこと好きなやついるって聞いたぞ。付き合ってこいよ」

「それは違うんだよー」


 千秋とは高校からの付き合いだが、話してて楽な存在。俺は生物部だったが、こいつは化学部に入った。ちなみに化学部も廃部スレスレ。俺の二の舞にならんことを祈る。

「あ、朔。千秋くん。ちりとりやろうか?」

「あーありがとう桜くん」

 桜ともすぐ仲良くなった。学校では3人でつるんでることが多い。

「あーあ、彼女ほしー」

「誰でもいいわけでもないくせに軽々しく言うなよ。言い直せ」

鷲尾わしおさんと付き合いてー」

 そう、千秋には想い人がいる。後輩の鷲尾流歌(るか)。中学時代の後輩で、それなりに仲が良いらしい。本人は現在調理部に入ってる。長田さんファンクラブの一員ではなかった。助かる。

「調理部の活動、冬休みはないけど終業式にクリスマスクッキーの販売あるぞ。そんとき告れなくとも何か誘えよ」

「んー。ありがと朔。桜くんも一緒に行こうな」

「うん、楽しみにしてる」

 高校生らしい冬休みが、始まる――いや、始まってくれ頼むから。



「残念ながら依頼よ」‬

 片丘さんは当然じゃないと言うかのように紅茶をスプーンでかき混ぜる。‬

 ですよねー。わかってたけど肩を落とす。探偵の助手に冬休みはあるのだろうか。‬

「え、照虎さんからの依頼はきてないですよ?」‬

 手帳を確認していた桜が横から声をあげる。え、どういうことだ。‬

「私の友人からの依頼よ。高岡も初めてだったかしら」‬


「ゆ、ゆうじん……?」‬

 俺と桜が嘘だろ、と言う風に声をあげる。直後に手刀が飛んできた。痛い。てことは夢じゃない。‬

「高岡が私の弟子になったのは1年くらい前だから知らないのも当然よ。準備でこちらに引っ越してくるのに時間がかかったしね」‬

「そういや、桜って引っ越してくる前から探偵やってたの?」

「そうだよ。片丘さんのいる場所へは全国どこからでも繋がるからね。でも、この辺以外の場所は日によって行けない日もあるから、こっちに来たんだ」

 なるほど……なんかすげえな。

「で、その私の古い友人からの依頼なのよ――めんどくさいものだから、せいぜい頑張ってね」

 いつものように妖しく笑わず、同情するかのように笑った片丘さんが、すごく怖かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ