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月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が部活を変えた日
19/60

結末:入部

 今日から本格的に調理部の活動が始まる。あの高い蜂蜜は結局安い蜂蜜で代用することになったらしい。先生、なんかごめん。


「エプロン、三角巾、マスク……あとは」

「ハンドタオルだよ!」

 そうそう、すぐ手を拭けるようにハンドタオルを……。

「って、長田さん!」

 なんで俺のクラスに。つい驚いて大きな声を出してしまった。

 長田さんはふふっと笑って「荷物確認してるのを見かけたから、つい」と言った。うわわ、可愛い。

「じゃあ、放課後にね」

 そう言って教室から出ていった。今は朝投稿してすぐ、人があまりいない時間。ファンクラブの人、いねえよな……?



 ハンドタオルを持ってきたかもう一度カバンを探っている時、ふとノートの端に傷が入っているのが見えた。引き受けた妖魔……もっちーがつけた傷だ。ちなみに命名したのは片丘さん。白くて大きいからだそうだ。

 その傷を見て、依頼者の小西ひよりちゃんに猫を届けにいった日を思い出す。




「ありがとう、お兄ちゃん」

「いいってことよ」

 桜が肉体的な功労者なため、桜に引き渡しを任せた。俺はひよりちゃんと一緒に玄関まで出てきてくれた、兄に用事があった。


「小西、何部に入るんだ?」

 元生物部の後輩、小西晴喜に。



 話を聞くと、小西と水戸部が生物部を辞めたのは、それぞれ違う理由だったことがわかった。

 小西は中学の時は吹奏楽で有名なトランペット奏者だったらしく、もう高校1年の12月だが吹奏楽顧問から引き抜きを受けたらしい。どうもそれは中学のときの恩師からの推薦でもあり、渋々ながら受けることにしたらしい。本人はトランペットよりもミジンコに興味があるそうだが、恩師のためなら仕方がないとのこと。

 水戸部は最近母親の仕事が忙しく、年の離れた保育園児の弟の迎えに行けないらしい。代わりに水戸部が迎えに行くことになったが、見事に生物部の活動日とドンピシャ。なので代わりにもっと忙しくない、ボランティア部に入ることにしたらしい。多少の融通はきくし、子供とのふれあいという名目で保育園に行けるからだ。


 2人の事情はわかったし、相談できず辞めてごめんなさいと散々謝られたのでもう許すことにした。

 研究がしたくなったらいつでも集まってやればいい。生物を観察して、レポートを読み漁って、まとめるのならどこでだってできる。


 ――俺が嫌で辞めたんじゃなくてよかった。

 心の中でそうひとりごちたのは内緒だ。


 ただ、少し気がかりなことはあった。

「今まで俺の意思を尊重してくれてたのに、急に勧誘してきたんですよね……」

「母さんの仕事が忙しくなることはたまにあっても、こんな常に忙しいことなんて今までなかったんです。特に体制も変わってないそうなんですけど……」

 偶然って、あるのだな。




 そんなわけで、猫探しと生物部廃部の件は片付いた。

 時間はあっという間に過ぎて放課後。

 調理室のドアが、魔王城の最後の扉のように見える。

「し、失礼しまーす」


 ドアを開けた先にいるのは笑顔の長田さんと、その後ろで俺を睨む女子ども(長田さんファンクラブ)だった。

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