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月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が部活を変えた日
18/60

御祓:砂糖

 器2つを床に置き、異界の砂糖を流し入れる。それを2匹の猫に前に差し出す。

 よく食べたほうが妖魔。簡単なことだ。餌を与えるために魚ではなく、蜂蜜を盗んだ猫が妖魔だということも立証できる。

「すごく簡単なことだったね……」

 桜が手につけられた傷を見ながらぼんやりと言う。推理しなくとも、マップを作り捕獲した桜が一番頑張っただろう。

「ほらほら食べな」

 脇から猫が解放される。2匹はテトテトと器の元へ行った。そして砂糖を――食べる。

「……2匹とも同じ速度じゃない」

「もしかして、味とか関係なしに、食べさせられ続けて慣れてしまった……?」

 見分けはつかなかった。



「うーん、どうします?」

「よくあんな甘いの食べれるな……」

 というか、異界のものを猫に食べさせていいのだろうか。チラと片丘さんのほうを見ると通じたのか、首を横に振った。

「ネコなら大丈夫よ。もともと霊感の強い生き物だからね」

 そんなことより、と片丘さんは新しい器を取ってきた。もう片方の手には人間界の砂糖を手にして。

「普通の砂糖と食べ比べさせて、異界のほうを多く食べたものが妖魔よ」

 ――あっ。

「まだまだ詰めが甘いわね、新月くん」



 その後無事に見分けがついたが、妖魔猫、恐るべし。普通の砂糖なんか蹴飛ばしてゲロ甘異界砂糖を貪り尽くしたぞ。

「高岡、確保して足にリボン巻いといて」

「了解です」

 依頼者の猫の後脚にピンクのリボンが巻かれる。あ、これこの前のプリンのラッピングについてたやつじゃん。

「じゃあ、御祓をしましょうか。高岡、準備を」

「え? 害はないんじゃ……」

 おいおい桜。情がうつってる。確かにこいつ可愛いけど……可愛いけど……。

「下呂さんが困るのでしょう。これ以上妖魔の臭いキツくさせたら汚物が増えるわ」

 ――汚物?

「とっとと祓うわよ。妖魔に情を向けてはいけない――いけないのよ」

 そう言った片丘さんの目はどこか悲しげだった。



「……俺が飼います」


 気が付いたら手を挙げていた。


「だから祓わないであげてください」


 そう言った時、片丘さんの目が一瞬だけ潤んだ気がした。


「じゃあ、新月くんよろしくね。餌は味付けの濃いもので、猫用のものでなくていいから」

「はい」

「餌代で自分の首を絞めないようにね」

「……はい」


こうして、我が家に妖魔ネコがやってきた。

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