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月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が部活を変えた日
16/60

報告:研究

 桜はもう少し聞き込みをすると言い俺に先に帰るよう言った。つまりは報告は明日にしよう、ということだ。

「道中遭遇したら捕獲するし、無理でも聞き込みから行き先予想マップでも作ってみるよ」

 最後まで手伝うと言おうとしたけれど、猫探しには慣れてると言った桜を信じることにした。

 ただ、放課後の事件の時と同じ違和感が頭を支配していた。



 次の日になった。いつもより早く登校するのには理由がある。

 生物部に置いてあった私物を取りにいくのを忘れていたからだ。

 私物と言っても資料になれば、と家から持って行っていた植物図鑑だ。元は父の本で、かなり高いものなので間違っても学校に寄付したように思われると困る。

 部室の片付けは昨日までと言われていたが、生物準備室に研究資料などを置いているだけなので部室というほど部室ではなく、今までの研究発表に使ったレポートや模造紙は学校に寄付するつもりでいた。だから片付けるものはないと片付けに行かなかったのだけど……流石にうん万円の図鑑を渡すつもりはない。


 職員室で鍵を借り久しぶりに生物準備室に入る。漫画とかにありそうな不気味なホルマリン漬けや標本はない。あるのはサボテンともやし製造セットくらいだ。

「えーっと、図鑑図鑑……」

 目当ての図鑑を探しながら棚をゆっくり眺める。背表紙の文字を目で追っていくうちに、ファイリングした俺たちの、先輩方のレポートがどこか懐かしく寂しい気持ちを起こした。

「あ、あった」

 端の方に図鑑はあった。抜きだそうとするもなかなか手強い。

 いっそ思い切り抜いてみようか、と力を込めると案の定隣り合ったファイルまで落ちてしまった。

 表紙を見ると「猫の生態」と書かれていた。これは水戸部のレポートだな。懐かしく思いパラパラとファイリングされたレポートを読んでいく。ついこの前まで活動していたのに、懐かしく感じてしまった。


「ん……?」

 ふと気になる項目を見つけ手を止めた。ゆっくりと念入りにその文を読んでいく。目の動きと比例して、感じていた違和感は溶けていき、新たな違和感が膨らんでいった。



 放課後になり桜と共に片丘さんの元へ向かう。道中いつものコンビニでプリンを買った……地味にここでの出費が痛いんだよな。

「片丘さーん。高岡桜と桐野朔が来ましたよー」

 桜が声をかけると彼女はすぐに出てきてくれた。そして手に持っているレジ袋を見て少し口元を緩めたのを俺は見逃さなかった。


 宣言通り桜は猫の目撃情報から予想地図を作っていた。夕方6時ごろに依頼者の家からかなり離れた公園でよく見かけられるらしい。

「どうしましょう、もう憑依型って結論付けていいのかな……」

「その前に捕獲しなければ意味ないでしょう。さっさと行きなさい」

 バッサリと切られる。まあ片丘さんの言う通り、捕まえなければお祓いもできないもんな。

「うう……ですね、そうですよね。じゃあ行ってきます」

「あ、俺も……」

「新月くんはいいわ。ここにいなさい」

 立ち上がろうとした俺を片丘さんは引き止める。その顔には妖しげな笑みを浮かべて。

「何かすることがあるのでしょう?」

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