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月が出たら謎は解ける  作者: 迎 カズ紀
俺が片丘さんと桜に会った日
1/60

導入:迷子

友人の怪奇ライトミステリに触発されて書かせていただきました。普段推理小説を読まないため書き方や構成として間違っている点も多いかもしれませんが、ゆるっとした気持ちで読んでいただけると幸いです。

 こんにちは。桐野きりのはじめです。現在進行形で見知らぬ美少女に首を掴まれております。首を絞められる手前でしょうかね、そんなに力は入ってませんがいつ殺されるかわからない殺気を感じてます。今俺が死んだら部屋に隠してるアレ……いやエロ本じゃないよ、健全なものだけど人に見られたくないものが晒される可能性があるわけで死ねないというかとりあえず死ぬならアレを処分してからにして欲しいというか……。


 誰に向けて言ってるんだよ俺は。これがどっかの誰かが受信して遺書になるわけでもないのにバカか。

「余裕そうね」

 いや余裕じゃないです。首を掴んでいる少女は不機嫌そうだったがまだ俺を殺そうとはしないようだ。

「えーと……この手をのけてほしいんですけど」

「痛いの?」

 はい?

「いや、そりゃあ、ねえ。あなたのせいで痛いですけど……」

 そう言うと彼女はパッと首から手を離した。ようやく解放された、と安堵したのも束の間、彼女は俺に意味のわからないことを投げかけた。

「私が見えるの?」




 今から4日前。俺のクラスに転校生がやってきた。

高岡たかおかさくらって言います。女の子みたいな名前ですが男ですよって見たらわかるか。とりあえずよろしくお願いしまーす」

 高岡桜と名乗った少年は明るい奴ですぐにクラスに馴染んだ。転校生特有の質問攻めにも慣れているようだったし、人の名前と顔をすぐに覚えれたからだろう。

 けれどもどこから来たのかは誰にも言わなかった。

 そんな転校生、高岡がやって来て4日経った……つまりは今日の放課後。もっと言えば2時間前だから4時。

 掃除も終わり帰ろうと思っていた時だ。

「桐野君……だよね。ちょっといいかな」

「高岡……君。どうしたの」

 突然声をかけられ驚いたが数学の教科書を持っていたから安心した。

「ベクトルがよく分からないんだ。前の学校では三角関数をしてたから」

「俺でよければ。何ページの何番が分からないの?」

「ええっと……ごめん、最初から」


 それから10分ほど問題の解説をしていると、高岡の携帯が突然鳴った。すぐに音が切れたからメールだったのだろう。

 高岡はごめんと言いながらメールを確認していたが、すぐに表情が重たくなった。

「ごめん、急用ができちゃった。また明日教えてくれるかな」

「全然いいけど。なんならメアド教えてくれたら解説するけど」

「え、ほんと?ありがとう」

「ん。これ俺のメアドだから時間ある時に送ってきて。それじゃあ」


 そこで俺と高岡の話は終わった。

 慌ただしく教室を出て行った彼を見送りカバンに筆箱をしまっていた時。

「……あ、高岡君忘れ物してる」

 彼の机の上にはプリントが置かれたままだった。明日提出と大きく書かれた書類たちが。

「……届けるか」

 今なら間に合う。追いかけよう。

 そう思いカバンを持って教室を出た。


「……迷ったなこれは」

 すぐに彼を見つけたのだが突然走り出し狭い路地の中に入って行ったのだ。俺も走ったが追いつけず。気付いた時には完全に迷子になっていた。

「しかも電波が入らないとか……ふざけてるだろ。どこだよここ」

 誰ともすれ違わない。来た道を戻ろうとしても何故か走り出される前の大通りまでたどり着けない。何これ神隠しかっつーの。

 腕時計を見ると6時前。いい加減やばいなと思っていた時。

「ねえ。あなたどうしたの」

 セーラー服の女の子、しかも端正な顔立ちの少女が声をかけてきた。

「いや、迷ってしまって……」

 すると彼女は無表情のまま棒読みで

「お可哀想に」

 と言った。そして手招きをする。

「こちらへいらっしゃい。温かい飲み物でも飲んで落ち着くといいわ。それから道を教えてあげる」

 今思えば怪しかったが、道を教えてくれるという言葉には敵わない。これがおっさんだったら通報モノだが同い年くらいの美少女だ。警戒なんてしないだろう。

 そんなわけでホイホイついて行った俺を待ち受けていたのが……首に触れる手の感触と謎の問いかけだった。


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