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余命3日の死にたがり

作者:

七草(なな)ちゃんは僕が護るよ!』


***


目が覚める。

なんだか、懐かしい夢をみていたような…。

なんだっけ?誰かがそんなこと言ってたような……



七草「暑…。」


窓からささる太陽の光がとっても憎たらしく思えたそんな夏の日の物語


***



人生は本当に、まったくもってつまらなかった。

真っ白な病室でため息をつく。

もう身体を動かすという気力もなくなった。


自分って…なんだったんだろう。


最近はそればかり考える。いや、もうそんなの考えたって意味なんてないんだ。

だって私は、あと3日しか生きることができないのだ。


今まで18年間生きてきた。

高校を卒業し、なにもすることない私は興味もないのに専門学校に進み、親にお金を使わせるだけ使わせて、途中でやめた。


自分でも最低なことをしたと思っている。

まだお金も返してないのに、なんて親不孝なのだろう…。

『ありがとう』そんな言葉も数えるほどしか、言えなかった気がする。

私は、本当に親不孝な子どもだった。


でも、そんなこと今さら後悔したって遅いんだ。



親は………私が病気になった次の日に交通事故で死んだ。

2人で病院に向かっているとき、信号無視の車にぶつかって、そのまま川へ車は落ちた。



そう。

私にはもう、誰もいないんだ……



もう、誰も。

だから、死んでいい。

死にたい。一刻もはやく、死にたい






そうだ。

ここで少し私の昔話に付き合ってもらいたい……


まずはこの名前。

七草という名前だ。


小学校1年生のとき、友達に『ななくさ』と呼ばれたのがきっかけだった。

それから男子が馬鹿にしてきたのを、今でもよく覚えている。

毎日毎日泣きながら帰って、朝起きて、学校にいくのが嫌で嫌で仕方なかった。



お父さんお母さん……

なんで私の名前の漢字こんな漢字にしたんですか…

せ、せめて。

せめて他にもたくさん漢字があったんじゃないんですか?!

なんで、なんで七つの草なんですか…。


七草粥って言うのを作った日は、お母さんはいつもにこにこしながら、

「ほら!七草ちゃんのお粥だよ!」って持ってきたのを思い出す。


いや………それ、私のお粥じゃないです…



高校生になったら、女の子はからかってこなかったが、男子というのは……。小学校と変わらずにからかってくる人もたくさんいた。

なんで男子っていうのはいつまでもこんな感じなんだ…。



まぁまぁ…名前の話しはさておき、次は何の話をしようかな。

もうどうせ、あと3日で死ぬんだ。なんだって言ってやるさ!


そう意気込んだ瞬間だった



ガラッッ!!と大きな音をたてて、病室のドアがあいた。


一瞬ビクッと肩に力をいれた七草だったが、すぐにその正体がわかり安堵のため息をつく


七草「なんだ……直樹か。」


ドアを勢いよく開けたのは幼馴染みの直樹だった。

これとは本当に腐れ縁ってやつで、家も隣で幼稚園から高校までずっとずっと一緒だった。

そういえば直樹だけは私の名前を馬鹿にしなかったな…

ふむふむ。お前はいいやつだ。


直樹『……七草。』


直樹は急いできたのか、夏のせいなのか…、額には汗が滲み出ていた。


七草「どうしたの?そんな深刻な顔して………」


直樹『ど、どうしたのじゃねぇだろ?!聞いた。なんで、俺になにも言わねぇの…?』


なにも言わねぇのって…、まさか余命のこと…?


七草「いや……なんていうか…、直樹大学忙しそうだし、別にいいかなっみたいな。誰にも言わずに静かに死のうと思って…」


その言葉を、言った瞬間に直樹は怒りの顔になる

直樹『なんだよそれ………つか、お前なんでそんな普通にしてられんの?死ぬんだぞ?』


七草「直樹はだいたい大げさなんだよー!そういうとこちっさい頃から変わってないなー!」


直樹はだいたい大げさだった。

少し転んだだけでも、心配してすぐに私の親に言ったり、

「ななくさ」ってからかわれてるときもからかった男の子を殴って怪我させるくらいだ…


七草「大丈夫だよ。死ぬって言ったって……私がいなくなったところでなんにも変わらない。世界はそのまんま、ただまたいつも通りの一日が始まるだけだよ。」


真っ青な空をみながらいった。

ああ。私、さっき絶対いいこと言ったわ……


ドン!!!と大きなおとが響いたと思えば、私の目の前の机に直樹の拳があたっている


直樹『お前さ、何様のつもりだよ?……俺、そういうのすっげぇムカつく。お前がいなくなって変わらない?んなの当たり前だろ!お前ちっせぇ1人の人間のくせに、世界が変わるわけねぇだろ!』


七草「………なによ。何が言いたいわけ?」


ちょっとムカッときて、私は声を低める。


直樹『………残された人の気持ち。考えたことねぇだろ。お前って。』



残された人の気持ち……

私を18年間育ててくれた両親は…もういなくて、…仲のいい少しの友達…くらい。かな。


直樹『世界は変わんなくても、お前の周りのひとたちは、少なくとも、絶対に変わる……。』


七草「………」



直樹『お前さ、ただでさえ専門やめたりして、親さんに迷惑かけて生きてたのに、勝手に死ぬなんてさ……馬鹿みてぇじゃんか…』


今思えば直樹、さっきからひどくない?

なんで。私になにか恨みでもあるの?

もうすこしで死ぬっていうのに………なんでこんなひどいことが言えるの?


七草「直樹、さっきからひどすぎるんだけど。好き勝手言い過ぎ、私だって好きで病気になって死ぬ訳じゃない……。」


直樹『お前が………。…お前が、死ぬことに悲しみもってねぇからじゃん…』


悲しみ。

死ぬ悲しみってなんだろう。

だって私、今まで別に、なにもいいことなかったんだよ?

いつのまにか生きる意味を忘れて、病気になって、両親も交通事故で死んで……あと3日って言われて。


まぁ、いっか。ってなるじゃん。

誰でもなるじゃん。そんなの……

生きてる意味がないなら、誰でも………、もう死んでいっかって、なるじゃん。


七草「直樹には私の気持ちなんて分からないよ。楽しんで生きてきただろうし。………生きる意味がなくなった私の気持ちなんて、どうせ一生かかってもわかりっこないよ。」


直樹は深く、ほんとうに、深いため息をついた


直樹『別に分からなくていいし…そんなの。』


七草「あっそ。」



2人とも無言になる

沈黙が続く

時計の音だけが聞こえる、真っ白い真っ白い部屋。




直樹は一体何しにここにきたの?

お別れのあいさつ?

私に今までの怒りをぶちまけるため?

残される人たちがかわいそうだから、謝れってこと?


……なんなのよ。一体…



でも、なんか、こうやって直樹と2人っきりで話すのなんて久しぶりだな。

小さい頃はよく2人で遊んだり、話したり、お互いの家にいってゲームしたり、そんなことしてた気がする………。

あんまりにも昔だから、記憶が薄々だけど。。


直樹もおおきくなったなぁ。

昔はちっさかったのに。


私たち、もう子どもじゃないんだね。

懐かしいな。夏は外にいくのが楽しかったのに、今は家の方がいい。暑くないし、汗かかないし、化粧崩れないし、、、


昔か………


人間って不思議だ。

こんな当たり前の季節が空気が世界が、いろいろな当たり前がなくなるってわかったら、ようやく、大切に思えたりする。


本当に。不思議だ………

空ってこんな、青かったっけ。

夏ってこんな、暑かったっけ。


私っていつから………こんな感じになったっけ………?



直樹『七草。』


私がたそがれている時に。邪魔をした直樹。

私は少しムッとする表情で直樹の方を向く。


直樹『な、なんだよ………。悪かったって…。』



え?なに?こいつは心が読めるの?

たそがれを、邪魔して悪かったってこと?


直樹『………本当はこんな、ひどいこと言うつもりなかたんだ…』


ああ。

さっきのことね。


七草は心を読まれなくて安心する。


七草「いいよ。別に。………直樹の言ってたことは大体正しいし。」


直樹『………俺さ。余裕なかった。』


七草「え?」


直樹は下を向きながら話を進める。


直樹『七草がさ、病気って言うのは知ってたし、たまに見舞いとか来てたじゃん?』


そう。直樹はたまに、というより、よく見舞いに来てくれて、よく私の話し相手になってくれていた。


直樹『どうせすぐ治るだろうって…ずっとそう思ってたんだ。そしたら、今日急に後3日だって聞いてさ。』


直樹は一言一言を噛み締めるように、呟いていく。


直樹『もうさ、意味わかんなくてさ…っ俺、どうすればいいんだろうって思って……』



なんでだろう


なんで直樹がこんなに、悲しむの?


なんで、私なんかのために、こんなに悲しい顔をするの?

なんで、こんな今にも消えそうな声をしているの?

なんで、こんな………私なんかの…ために。



直樹『もうわけわかんなくなって、今日走ってきてさ…。そんであんな色々いって………。でも今すっげぇ安心してんだ俺。』


直樹はいつものように得意気に笑った。


直樹『おかしいよな。………なんかさ、お前みてたらいつものお前だったから…消える気がしねぇんだよ。七草がさ、死ぬ感じじゃなくて、すっげぇ安心してる。』


胸のずっとずっと、奥の方が………

とっても暖かくなったのを感じた。



なんだか、こんな気持ち。

前にもあった気がするな………

なんだっけ。

いつだっけ………



七草「………でも、私は死ぬよ…。………だって、お医者さんにそう言われたんだもん………。」


直樹ありがとね。

こんなに思ってくれて。



直樹『………七草…怖く、ないの?』


七草「………怖くないよ。」



死ぬのなんて、怖くないよ。

別に殺される訳じゃないし、自分で勝手に死んでいく。

よくドラマとか漫画とかでみるように、目を瞑って静かに死ぬのか、苦しいのか、そんなのよくわからないけど。


そんなに、怖くないよ。


直樹『………七草はさ、強いよな…』


直樹は遠くの方をみつめるように、私をみつめる


直樹『………もし俺だったら怖くてしかたねぇよ…。』


七草「………直樹はきっと。生きてるのが楽しいからだよ。死んだら何もなくなるから、…それが怖いんだよきっと。」



さっきも言ったよね。

私は生きててもなにも楽しくないから。


死ぬのは、怖くないの



直樹『七草、生きたいって………思ってよ。』


直樹は消えそうな声でいった



七草「………直樹…」


直樹なんで………こんなに………



直樹『俺、七草が好きなんだ………』



病室が静かになる



七草「え………?」



直樹は顔を赤らめるとすぐさまその場に立つ


直樹『わ、悪い……。今言うって…最低だよな………。ごめん。』


直樹はそう言うとすごい、勢いで病室からでていった



七草「直樹!!」



七草は追いかけれなかった



それより、思考がついていけない……。

直樹が?

私を?


嘘だ。

好き?私のことが?



………………直樹が………?



***



直樹が少しモテてるなって気付いたのは、高校の1年生のときくらいだった。


身長もまぁまぁ高いし、明るいし。誰にでも優しい。

まぁ、顔も悪くないんじゃないかな…私はずっと隣で見てきたから分からないけど………。


何度か告白されてるところだってみたことある。

全部断ってたみたいだけど………。

その理由は、他に好きな人がいるって理由。


直樹に好きな人ができたんだ。

そう思って何度も何度も直樹に聞いたのに、笑って誤魔化されるだけで、本当のことは1度も教えてもらえなかった。


もし、


もし、あのときから、直樹が私のことが好きだったのなら………。

いやいや、さすがに都合がよすぎる………。

私はなんてポジティブな女なんだ……。



でも……好きって言われても………私はもう。


とにかく、明日どうせまた来るだろうから聞いてみよう。

ノリでいったのかもしれないし、かわいそうな私に同情したのかもしれない。



それとも本当に私のことが………


いやいや、ないないない。。

というか、そもそも私だって、幼馴染みの直樹なんかと付き合うなんて………うん。ないない…。



でも、なんでだろう。

こんなにも心臓がうるさい………







***




次の日


直樹は来なかった。





私は3日しか残されていない時間の中の1日を静かに過ごした。



七草「………」




大丈夫。

明日はきっとくるよ。


だって、私もうすこしで死ぬんだよ?

あんな、言い逃げとか、、絶対ありえないでしょ?


自分からは連絡はしなかった。来てよ。とか、会いたい。なんて、図々しい感じがして、なんだか嫌だった。



この静かな1日を私は珍しくひまに過ごすのではなく、有効に過ごした。


まず、直樹との出会いとか、なにして遊んだかとか、何を話したとか………色々思い出してみた


あーあんなこともあったな。なんて、不思議と顔に笑みがでる


もしかして、初めてあったときから私のこと好きだったりして………!!

ないない。。それはないな!


なんて、久しぶりにドキドキしたり、わくわくしたり、とても楽しい1日だった。


直樹、来ないかな………。


会いたいな……。




***





次の日



もう時間は夕方の5時。


ねぇ直樹。冗談だったの?

やっぱり、好きなんて、嘘だったんだよね………。


だって、本当に………

本当に好きなら…こんな、………もうすこしで死ぬってときに…会いに来ないなんて、しないよね……?


直樹………


ばか。ひどいよ。


もう消えるからってあんなこといって、自分は逃げて終わり?

直樹のばか。最低……。



ポタポタと大きな雫が目からおちていく


最後に泣いたのはいつだっけ

わからないや。

そんなことも、覚えていない。

でも、久しぶりに泣いた気がする。


胸がいたい。


こんなに、悲しい涙は生まれて初めてだった。

といっても、まだ18年間しか生きてないけどね…。


私は経験してないことがたくさんある。

でもそんな私も、明後日で終わる。


本当に自分ってなんだったんだろう。

改めてそれを、考える

答えなんて、出てこない。



ねぇ、直樹。

私の生きる意味を教えて


教えてよ………


私は何のために生まれて、

何のために息を吸って、ご飯を食べて、眠って、育ってきたの?

何をするために生まれてきたの?


私が消えたら何が残る?私は、何か、この世界に残せるものがありますか?


一体どれだけの人が悲しんでくれる?

私が死んで、どれだけの人の人生が変わるの?




分からないことだらけだよ……

知らないことだらけだよ……

この18年間………


私は一体……何してたんだろう………



こんなことに、なるなら、もっと、

もっとなにか、すごいことしてたかもしれないのにな。

18歳で死ぬってわかってたら、もっと元気に毎日を大切に、生きてたかもしれないのにな………。



直樹………。

ねぇ………直樹……教えて………


………あなたに、会いたい………







***





最後の一日になった。


私は今日の夜に眼を瞑って、明日の朝はもう、目覚めない。


いや。もしかしたら、今日のまさに、この瞬間。

私は急に死ぬのかもしれない。


直樹にもう、2度と会えないまま、私は死んですべてを忘れてしまうかもしれない。



怖かった





とてつもなく、怖かった。



死が怖い………


死ぬのが怖い。


眼を瞑るのが怖い。


失うのが怖い。


何もかも、忘れてしまうのが、こんなに怖いなんて……。



あれもこれも、全部直樹のせいだ。

あんなこというから。

直樹が、あんなこと………いうから。



好きだなんて………言うから………




ガラッッ




七草「!」




直樹『………七草…』









直樹だ




2日ぶりくらいなのに、


もう……何日も会っていないようで……




七草「なお……き………。」






私はただただ。

あえて嬉しかった。



直樹がいる

ずっと逢いたかった直樹が





直樹『ごめん………。俺、会いに行けなくて、………その、さ、来てもらいたい場所があるんだ』


七草「来てもらいたい…場所?」







私は言われるがままに服を着替え、気付かれないように病室を抜け出した



直樹と電車にのって、遠くへいく



とても幸せだった……。



直樹との会話が楽しくて、

嬉しくて、世界が全部輝いて見えた





直樹『七草。ここ………覚えてる?』





そこには一面に咲くひまわり




七草「ひまわり………」







ここ、来たことがある。


ずっとずっと、昔………




私は直樹に手をひかれてひまわりの中へ入っていく



あのときはひまわりがとっても大きくて、手を繋いでないと迷子になった

今は、私たちの方が大きくて……。それでも、私たちは手を繋いで前に歩く



直樹『俺、ここで誓ったんだよ……。』


七草「………」


直樹『七草がさ、変なあだ名つけられて泣いてたとき、ここで誓ったんだよ。………七草を護るって。』




うん。




七草「うん。」





覚えてるよ。





***



七草「ほんとに………??護ってくれるの??ずっと?」


直樹『うん!ずっとだよ!!七草ちゃんが泣いたらすぐに泣かせたやつ倒しにいく!』



七草「約束だよ………っ!直樹!」


直樹『うん!!約束!』




***





私たちは幼かった



正義のヒーローだって、信じてた。


絶対に嫌なことあったら助けに来てくれるんだって、信じてた。



でも、本当はそんなことなくて……。

どんなときでも助けてくれるヒーローなんて……いなかった。




私たちは大人に近付くにつれて、変わっていった



何もかもを知り尽くした気分で、世界に幻滅して、生きることに疲れはてていた…




直樹『七草………。俺、ずっと、ずっと七草が好きだったんだ。』


七草「………」




見つめ合う二人の間に風が吹きわたる



七草「うん。………私もだよ」




ずっと、ずっと好きだった



だって、どんなときでも助けてくれるのは直樹だったもん。

私のなかで、直樹は正義のヒーローだった。




直樹『俺………どんなときでも七草を助けるっていったのに…。俺、怖くて………。七草が消えたらどうしようって、怖くて…会いに行けなかった………っ』


直樹は私よりも大きな身体を震わせる


直樹



直樹は直樹で、苦しんでたんだね。

ごめんね。


七草「ごめんね…ごめんね直樹………。私が、私が、こんな病気じゃなくて普通だったら…こんなに直樹を、怖がらせることなんて。なかったのに。」


直樹『っ………』





直樹は七草を、抱き締めた



力強く……離したくない………離れたくない………



七草「直樹………私、死にたかったの………。ずっと、ずっと死にたかったの………」


直樹『………』



七草も直樹の背中に手を回した


七草「今まで楽しいことなんてひとつもなくて、あげくのはて病気になんてかかって、余命3日なんて言われて、両親も………死んで………。」



目に写る



ひまわりが、こんなに綺麗だなんて…。



どうして今まで気付かなかったんだろう……




七草「生きる意味なんて、ないと思ってた。………でも、私には直樹がいたんだね。」


人ってすぐに、なにかと意味をつけたがるよね。


ひまわりの咲いている意味だって私には分からないけれど、意味がなくても生きていて、いいんじゃないかな。

それって別に、邪魔とか、罪とか、そんなことないと思うんだけどな………。




七草「私。………生きたい…」



直樹『七草………』









私は……まだ生きていたいのです




生きることなど、無意味なことだと



そう思っていた。




でも、大切な人ができて………大切な人がいたことに気付いて、いざ、死をめのまえにすると



死にたくない。


そう思った。




世界に幻滅して、世界を嫌った私は



世界に見放されて、死ぬことになってた。



もうそれでいいや


そう思っていた





七草「いやだ……っ」





捨てないで






見捨てないで







何百億人といる世界の中で







本当に意味の無いような私だけど







捨てないで………





殺さないで






死にたくない








七草「私はまだ生きていたい………っ!」



直樹『………七草…』





助けてよ世界


どうか七草を、殺さないでください………


俺から七草をとらないでください

七草はまだ………これっぽっちも幸せってやつを知らないんです


七草は


こんなにも、震えてて、小さくて、儚いんです


そんな七草を、どうか………1人にさせないでください…






七草「………」



今までさんざん恨んできた世界



ことごとく私を打ちのめしてきた世界



救ってよ世界……






どうか、その大きな背中に




どうか、まだ、




私をのせて廻れるほどのスペースがありますように

私が息をしても、存在する意味がなくても…どうか……

許してもらえますように……






私たちの


儚い夢は


世界によって変わって、



壊されたり、

投げ捨てられたりするけど。


全部が全部


そうじゃなくて、



きっと世界だって、





助けてくれるときは、あるんだ。




そんな世界の気まぐれのなかに私たちは生きている



今日も………生かされている。

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