第四章 クレイジー・アバウト・ユー(七)
金剛まみは、俺の腕を払いのけ、少年Aをまっすぐ見据えて構えた。
「おい、生徒相手にどうするつもりだ」
「彼の足元を見てごらんなさい」
まみりんの視線は少年の爪先に向けられていた。
「影がない!!?」
「実体がなければ、思う存分、魔法が使えるというもの。これは、少年の化身だわ」
化け物というより、幽霊だ。ゲームの中で生霊を相手に戦えというのか。
まみりんが両腕を大きく振り上げる。その指先に淡い光が宿り始めた。
だが、向かい合う敵は、瞼の筋肉ひとつ動かそうとしない。俺は、それを少年の意思と感じとった。
「金剛、こいつは人間だ」
まみりんは、俺の言葉に怯み、少年Aの足もとに影が伸び広がった。瞬く間に、その闇は、黒い刃に姿を変え、一瞬の隙をついて、方々に放たれた。
闇? 違う。影だ。
俺のデーターベースにインプットされている。
こいつの正体は、影だ。人の心を養分に影から影に入り込んで人体を操る実体を持たないモンスター。
そして、俺が書いたシナリオのままであるならば、その影を操るのは、黒の女。そう、畔上七子である。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
黒の女につきましては、もしよければ、第一章 死神からの挑戦状を参照になさってください(´・ω・`)
さて、本日、10頁オーバーしていた公募用の短編小説をなんとか規定枚数内におさめました。
ぱちぱち。
現代小説を書き終えて、逆にファンタジーの素晴らしさが分かりました。
“俺が、田中…”をファンタジーというのは、しっくりこないのですが、
私の理想は、ファンタジーとリアルのハイブリットです。
たとえば、宮崎駿監督は魔女の宅急便の構想段階で、『キキは、長時間ホウキに股がって辛くならないのだろうか』と考えたそうです。
頭が固いせいか、私も、よく悩みます。手持ち花火をすると熱を感じると思うのですが、炎を操る魔法戦士は、何も思わないのだろうかとか。
話は変わって、今まで、自分なりに、謎を追求する話を書くことに、躍起になってきましたが、一度、王道の少女小説を書きたいと考え始めました。ぺらっぺらになるでしょうね。
なろうに載せられるのは、随分先の話になると思います。
作者にとって、未知なる領域。おフランスも平安時代も、知りません。
私の得意分野がない以上、手荒に探してやろうと思っています。




