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第四章 クレイジー・アバウト・ユー

○キャラクター紹介


美麗アスカ(みれい あすか)=田中…主人公。27歳フリーター男子だったが、交通事故に巻き込まれゲームの世界で美少女バトルマスターとして目覚める。


三鈴聖音(みすず さとね)…シスター。超絶潔癖性の拳銃使い。


アレクシス・キュラ・ダイモーン2世…ヴァンパイアの息子。美麗にご執心。


金剛まみ(こんごう まみ)…伝説の魔女。12年ぶりに封印から解かれる。

彼方の雲に吸い込まれそうになる。学院の中で一番、空に近い場所。俺は、この屋上が好きだ。だが、今、二人の間に流れる時間は、せっかくの景色からすべての醍醐味を奪っていた。仕掛けたのは、他でもない彼である。




分からんでもない。いや、むしろ、美少女を前にしたときの身震いなら痛いほど分かる。


お前を見ていると本来の自分を思い出すよ。


ああ。初恋のあの娘の目に、俺はこうやって、映っていたのか。


定まらない視線、行き場のない両手、悲しいかな、なんとも言えない親近感。


だから、どう言ってやればいいのものか、俺は、心底、弱ってしまった。



「気持ちはありがたいが、俺は男だ」



少年Aくんは、目を白黒させ体の重心を失って、重い扉の向こうに消えていった。




「泣かせちゃだめじゃないか、ダーリン」


タンクの影からアレクシスが立ち上がった。


「盗み聞きとは、趣味の悪い」


「昼寝の邪魔をされたのは、僕なのに酷い言われようだ。それとも、これは、また別の話かな」


バフォメットとの戦闘で、こいつが、他人の心を読むと知った。


「お前、俺の何を知ってる」


「そうだな、美麗くんが夜な夜な手鏡で何をしているだとか」


「それ以上、口を開いたらこの場で切るぞ」


油断ならん奴。それは、同じ男として言わない約束だろう。


「田中さんって呼んだ方がしっくりくるかい」


「止めろ。オンラインゲームで身バレしたときの恥ずかしさだ」


まさか、この世界で自分の本名を耳にするとは思わなかった。このキャラクターに、すっかり、油断したな。


「僕も鬼じゃない。人に言いふらしたいとも思わないね。潔癖症のシスターを悲しませたくはないだろう。それに、正直、まだ、きみが異世界から来たということ以外よく分かっていないんだ」


「なるほど、だから、執拗に付きまとっているわけだな」


「いや、それはどうかな。きみの正体が何であれ、僕のお気に入りであることに違わない。変人揃いの学院でも、君ほどの変わり種は聞かないからね」


ないわ。美少女の中身がおっさんと分かって、それ、ないわ。


「美麗くん、この世界で常識に囚われていると足をすくわれることになるよ」


どういう意味だ。こいつ、やっぱり、いけ好かねぇ。



☆☆☆



「美麗さん、心配しましたわ。購買部に出られたきり戻っていらっしゃらないのですもの」


刺の突きだした空間にシスターのシューズが闊歩した。


「悪りぃ。ちょっと人に呼び止められてな」


シスターが視線を上げて俺の後ろに立っているアレク王子を確認した。


「御二方、お揃いだったのですね」


「えっ、あ、ああ」


なにを焦る、俺。


「今、こんなものを鞄の中に見つけてしまって。お二人のご意見をくださいますでしょうか」


俺は、一端、アレクシスと顔を見合わせてから、一通の手紙を受け取った。便箋には、武骨な手書きの文字で、一言。


『放課後、体育館裏にて待つ……』



「また、何かの挑戦状でしょうか」


白い用紙の向こうで、シスターが不安そうに、手を重ねている。


「いや、違うね」


アレクシスは、俺から、封筒を取り上げて、太陽にかざしてみせた。


「消した跡があるけれど、差出人の名前がある。……冴内唯人さえない ただひと?」



同じクラスの非モテくんではないか。



「社会勉強に行ってみるといいよ。これはラヴレターだ」


彼は、封筒を留めていたハートのシールに目を細めた。

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