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第三章 one's stage(六)

この鳴き声。鳥か。いや、コウモリだ。

発達した前肢から飛膜を張り上げ、グライダ―のごとく滑空飛行で俺を横切る。



次の瞬間、両耳に柔らかな体温を感じると同時に、周囲を取り囲んでいた無数の人間たちが、その場に崩れ落ちていった。皆一様に頭を押さえている。



『大丈夫。気絶しただけだよ』



なに。これは、声じゃない。頭に直接伝わってくる。



『大丈夫だ。ダーリン』



“アレクシス?!”



この学院に只者はいないということだな。だが、まさか、こうも簡単に俺の背後を取られるとは思わなかった。生徒たちを黙らせたのはコウモリの超音波だったか。



俺は、アレクシスに守られるように耳をふさがれて、見通しのよくなったステージに茫然と立ちつくしていた。


「ごめんよ、荒っぽいことをして驚かせたね」


「……お前、あいつの術にかからなかったのか」


「僕の心を奪えるのは、美麗くんだけだよ」


「あ・そ」



この場に残ったのは、俺とアレクシス、そして、前方のまみりんに、中空の黒柳木貴志。

やつは、不敵な笑みを浮かべている。


「ヴァンパイアか。面白い」



まみりんが俺とアレクシスの前に立ちふさがった。


「お前たちは、下がっていろ。あいつを仕留めるのは、私だ」


彼女は、顔面に夕日を浴び、やつを睨みつける。



「おい、そういきり立つなよ。誰のお陰で封印が解かれたと思ってる。ここは、感謝されてもいいところだろう。所詮、魔女は悪魔の性具でしかないんだ。調子に乗って後悔したくなかったら、少しは、考えて口を開くんだな」


「ほう。どうして、今更、私を復活させることにした」


「どうしても、お前に見せてやりたいものがあってな」


「言ってみろ」




「“世界の最期を見てみたいとは思わないか”」





世界の最期?

“カミサマ”は、乙女の像を手に入れて何をしようというのだ。


化け猫の言うように、本当に世界のシナリオが変わってしまったというのなら、この作品は、もう自分の手を離れたところにあるのかもしれない。



“カミサマ”“死税庁”“マリオネット学院”



ずっと、頭の片隅にあった不安。


これは、確かに俺の書き上げた世界なのだろうか。



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