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第一章 死神からの挑戦状(バトル編)

家庭科実習室の台の上で、大阪弁のおっさんと、博多弁のおばちゃんが喧嘩しているではないか!



ああ。なんということだ。そばかす女子と非モテ男子の理想の彼氏(彼女)が……




☆☆☆




『にゃ~~ん』



聞き覚えのある鳴き声に背筋がぞくりとした。この煙草で喉を枯らしたようなおっさんの声は、あいつ以外考えられないだろう。



化け猫が、教室前の講師用調理台にちょこんと前足を揃えて座っていた。



家庭科室まで、ぴったりマークされていたのに、今までどこに隠れていたんだ。


口々に生徒が騒ぎはじめる。



女「きゃー、羽根!!!!」


男「どこから入って来たんだ?」


女「可愛いー!」


男「え、声、おっさんじゃん」



一人の勇気ある女性徒が獣の毛並みに触れようと近づいた。



『ほな、お手並み拝見といきましょか』



化け猫は、目の上の肉を持ち上げると瞳孔をぐっと絞り、あんぐり口を開けた。猫のサイズではない。人間一人、丸飲みできるくらいに口回りが大きく伸び広がったのだ。



女の子は、目を点にして突っ立っている。



(危ない!)




俺は、猛ダッシュで教室の後から人を掻き分け中央のテーブルに飛び上がった。軌道に化け猫。トップスピードで踏み切り、右足を高く後ろに振り上げ全神経を集中させる。身体の反動を使って、一気に足を振り下ろした。足から離れた下駄が唸るように風を切って奴の口内にゴール。これぞ、見事なまでの弾丸シュートだ!ざまぁ。



ガッツポーズも空しく、バケモノは、ごくりと俺の下駄を飲み込み、腹を瞬時に伸び縮みさせ、嘲るようにゲップした。



教室に一瞬の沈黙が走り、誰かの悲鳴を皮切りに、生徒たちが我先にと出口に向かってなだれ込む。奴は、目も止まらぬ早さで喉の奥から黒煙を掃き出し逃げ惑う子供たちを漆黒の海に引きずり込んでいく。


俺が顔の前に交差していた腕を下げたとき、辺りは、自分の足元も見えないほど一面の闇に覆われていた。あれほど騒いでいた人の気配もなくなっている。



『おたくとモンスターだけの特設ステージを用意させてもらいましたえ。あんじょう、楽しんでってくださいや』



なんだと!



“オォォォォ”



≪モンスターの唸り声!?≫



くそっ。模擬プレイくらいさせろっての。



≪金属の擦れる音≫



こいつの武器は、刃物か。鎧や盾に触れているわけじゃないな。刃物と刃物が当たって共鳴するような。



(集中しろ。耳を使うんだ)



息づかいが近づいてる。


二足歩行だな。


迷いのない足取り。


どうして、俺の位置がわかるんだ。



(落ち着け)



何もしないまま殺られてたまるかよ。


俺は、髪を縛っていたゴム留めを指に掛け、もう一方の手で弓のように引いて暗闇の中に飛ばした。



《反応なし》


目が見えているわけではないのか。耳にも鈍感なのかもしれないな。視覚、聴覚を除けば、あと考えられるのは。



(思い出せ、思い出すんだ)




――二本の刃物に、二足歩行、嗅覚の鋭いモンスター。この趣味の悪い演出から想像するに暗闇が得意なのかもしれない。




(そうだ)




――悪魔系モンスター“死霊の鎌”




奴の弱点は、光だ!!!!




“ウォウ”


くそっ。鎌が右腕をかすった。近づくのが早すぎるんだよ。


でも、お陰でお前の場所は、わかったぜ。



俺は、両腕をぐっと闇の中に伸ばした。手の中を青白い光がうねりはじめ、やがて一本のスティック状に形を納めていく。


“アァァァアアアァ”


両手の間に、光を浴びて喉を掻き毟るモンスターの姿があった。衣の袖から白骨体をさらしている。


俺は、青く白光する竹刀を握り直し、モンスターの頭骸骨を切り落とした。



骨の残骸が崩れ落ちるのと同じくして、天上に光りが指し闇を押し開いて空が顔を見せる。


次第に空が晴れ渡り、自分がアスファルトの上に立っていることを知ったとき、ここが、学校の屋上だと理解した。




☆☆☆




『ほう。正直、ここまで、ようやらはるとは思いませんでしたわ』



化け猫とその奥に肩を小さくしている死神女が立っている。



「何がモンスターが出現するだ!お前らが引っ張ってきたんじゃねぇか」



『ま、そう怒りなさんなて。若いもんは、せっかちでかなわん』



昨日からずっと考えているんだが。やっぱり引っ掛かかる。俺が書いたゲームに、しゃべるおっさんの獣なんて覚えがない。



――化け猫、死税庁、死神女、役人、女、黒装束。



黒。はっ。シナリオ完成間際のことだ。死神なんてネーミングではなかったが、そうえいえば、クリエイター科の友人のアイディアで黒の女の話をねじ込んだぞ。



でも、確か、この女……





冒頭で死ぬ運命じゃなかったか。





その時。


突如、死神女の周囲から次々に火柱が空高く吹き出し、瞬く間に彼女を燃え盛る炎の壁で覆い囲んだ。



ずっと書きたかったバトル編。

せっかくなので、テロップでごまかさず(【敵を倒した♪】みたいな)、可能な限り文字に起こしてみました。

自己満足の世界です。もし、上から読んで、後書きまで、たどり着いてくださった方には、感謝します。きっと、読みづらかったのでは……。あ、それは、いつものことですかね。面目無い。

ちなみに、死霊の鎌は、田中の考案したモンスターです。あしからず。

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