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[謎空間]例えば、カイのこんな奮闘記

IFシェイラの後に投稿したことで、もしやフルボッコの刑となるのではないかと、ビクビクしながら投下した、懐かしいネタ話です。

ほとんどギャグなので、例によって Attentionにもありますが、苦手な方は回避をお願いします。


「お嬢さんを俺にください!」


彼がこの台詞を発したそのとき、一体何が起こるのか――。







――Attention!!!

・※ネタです※

・『カイが上記の台詞を、ディアナの関係者に言ったらどうなるか?』というもしもなお話を、基本会話文の小ネタ形式でお届けします。

・ので、「カイがディアナを嫁に取るとかふざっけんなコノヤロー!」な方や、「あー、いつかの座談会みたいなやつ? あのノリはちょっと……」な方は、即座にこのページを閉じて、このお話の存在を忘れ去ってください。

・しゃーねーな、付き合ってやるよ、な読者さまはどうぞ、ページをスクロールし、カイの奮闘をご覧くださいませ――











STAGE 1――VSデュアリス


「お父さん! お嬢さんを俺にください!」


突然現れた黒衣の少年にそんなことを言われたデュアリスは、目をぱちくりさせた後、首を傾げた。


「本人の了解は取ってんのか?」

「えー……と、多分、そのうち?」

「別に、ディアナが良いなら良いぞ。――但し、本人の意思を無視して事に及ぼうとか考えてるなら、」

「いやいやいや、クレスター家の直系姫にそんなことができるほど、俺無謀じゃないですから!」

「うん。そこが分かってるなら、好きにしろ」


(ヤバいヤバいヤバい! 今一瞬、本気で死ぬかと思った!!)


STAGE 1 クリア!(?)




STAGE 2――VSシリウス


「お宅のお嬢様を俺にください!」

「……それを私に言ってどうする」

「あ、一応デュアリス様には了解貰ったよ?」

「デュアリス様が頷かれたなら、私がどうこう言う筋合いはない。……しかし、お前も物好きだな。なにもわざわざ自分から、苦労する道を選ばずとも良いものを」


(あれ、何か同情された?)


STAGE 2 クリア!




STAGE 3――VSエリザベス


「お母さん、お嬢さんを俺にください!」

「……あらあら」


飲みかけのお茶が入ったカップをソーサーに戻し、エリザベスはにっこり笑った。


「どうぞ、お座りなさい? 今お茶を淹れるから」

「あ、いえお構い無く」

「そんなつれないことを言わないでちょうだいな。ディアナと結婚したら、あなたはわたくしの息子になるのでしょう? 義理とはいえ、母が淹れるお茶を断ると言うの?」


(……うわぁ)


品定め、スタート。


「ディアナに夫ができる日が来るなんてね。まだまだ子どもだと思っていたのに」

「いや、えっと、」

「落ち着きのない子だから、色々とご迷惑をおかけするだろうけれど」

「やー、むしろ現在進行形で、俺が迷惑かけまくってますから……」

「あら、そうなの? ディアナとは、具体的にどんなお付き合いを?」


尋ねつつ、エリザベスはカイの前にお茶のカップを置いた。


「さぁ、冷めないうちにどうぞ?」

「なんか、スミマセン。……あれ、」


勧められるままにお茶を一口飲んで、彼は軽く首を傾げた。


「これって、ディアナが使っているのと同じ茶葉、ですよね?」

「えぇ、よく分かったわね」

「そりゃまぁ、それなりには分かります。……けどおかしいな、何か味が、違う?」

「ディアナは、ハーブをブレンドしてオリジナルのお茶を淹れるのが好きだからね。あなたが飲んだものも、アレンジされていたのではないかしら?」

「なるほど。そうかもしれないですね」


それからしばらく、にこにこと、表面和やかに会話を続け、程よい折に辞去の挨拶を切り出して、カイはエリザベスの部屋を後にした。


「……ふふふ。お茶に何か危険なモノが入っていると一目で見破って、致死量にならないギリギリを見極めつつ、平気な顔をして飲み進める。なかなかできることじゃないわね。ディアナと連れ添うつもりなら、殺しても死なない程度には丈夫じゃなくちゃ」


――彼が去った部屋の中では、あくまでもにこにこしながら、エリザベスさんがそう呟いていた、とか。


STAGE 3 クリア!




STAGE 4――VS『名付きの間』側室方


「皆さんの『紅薔薇様』を俺にください!」

「……ていうかどちら様?」


三人を代表してのヨランダの疑問は尤もである。何しろ現時点の本編で、ライア、ヨランダ、レティシアと、カイとの接点はゼロ。彼の存在すら、彼女たちは知らない。

……と、いうわけで。


(かくかくしかじかこういうわけで、一応メインキャラの一人なカイさんです)


「私どもが暮らす壁一枚向こうに、こんな怪しい者が潜んでいたなんて……!」

「あ、いえ。『牡丹』と『紅薔薇』以外の部屋は、プライバシーの侵害にならない程度しか、覗いてないですから」

「覗いていたことは否定しないのね……!」

「それはほら、仕事上仕方のないことで」

「無礼者!」

「……ってなるよねぇ普通は。むしろディアナの反応が変なんだよなぁ」


独り言の呟きは、真隣にいたライアにばっちり届いていた。


「そう言えば、ディアナ様はあなたのことをご存知なのよね?」

「そりゃ俺、非公式だけど『紅薔薇』協力者ですから」

「……で、それがどうして、嫁取りなんて話になるの」

「それ以前に、あげられるわけがないでしょう。今、ディアナ様を失ったら、後宮は完全に混乱してしまうわ」

「その点については、俺も同感。何も今すぐ、って話じゃないですから。あー……ホラ、『紅薔薇様』ってこのままだと、王様のものになっちゃうでしょ? それは勿体ないと思いません?」


事情をよく知る隠密の問いに、苦労の耐えない側室お三方は、間を置かず頷いた。


「陛下にディアナ様は釣り合いません」

「仰る通りですわ、レティシア様。ディアナ様のお相手として、まずあり得ないのは陛下です」

「シェイラ様とて、勿体ないお方だと思いますわ。まぁけれど、そこは本人の意思もありますから……」

「ディアナ様は、ご自身がはっきりと正妃になるつもりはないと宣言していらっしゃいましたもの」

「――でしょ? だったら、王様に渡さないためにも、壁になるようなヤツを置いとくのは『アリ』では?」


モノは言い様である。ここでしくじったら、IFの世界とはいえご臨終しかねないとSTAGE 3で学んだカイは必死だ。


「……ふぅん? つまりあなたは、ディアナ様のために、身を粉にして働く覚悟をしているということね?」

「はい! ……あれ、コレそういう話だっけ?」

「『紅薔薇様』の下僕になるつもりと言うことならば、認めるのもやぶさかではありませんが。――二度と、『俺にくれ』などというふざけた台詞を言わないように」


貴族らしい優雅な微笑みを浮かべる側室三人の向こうに、北極の吹雪を見たカイであった。


STAGE 4 クリア!……クリア?





STAGE 5――VSリタ


「お嬢様を俺にください!」


台詞が終わらないそのうちに飛んできた小刀を交わしつつ、カイはノルマを言い切った。もちろんその後も攻撃は止まず、シュカシュカ空気を切り裂きつつ、鋭くとがった刃が彼の急所を狙ってリズミカルに襲ってくる。


「リタさーん。返事は言葉で言おうよ頼むからさー」

「黙りなさい無礼者!」


シュカシュカシュカ。小刀の攻撃は止まらない。

リタが手持ちの武器を全て投げつくし、更に接近戦を挑んできて、カイがそれを押さえ込むまで、二人の間に会話はなかった。


「こ、の、ちょい役オトコが……! 他人をバカにした顔で、攻撃全部避けるなんて……」

「……避けなきゃ死ぬじゃん、俺」

「心配要りません、この場所での生死は、本編には影響しないそうですから」

「だからって、できれば死ぬのは少ない方が良いでしょ、常識で考えたら!」

「あなたみたいなキャラは、一度死んどいた方が読者さまからの好感度は上がりますよ」

「多分ねー、俺の好感度は、死のうが生きようがあんまり変わんないと思う。自分で言うのも虚しいけど、俺って万人にウケるキャラじゃないから」

「……意外と自分を客観視できるんですね、あなた」

「ひょっとして俺、バカだと思われてる?」

「普通に読んだら、そうも受け取られますよ」

「……描かれ方が極端すぎるんだって、現段階のアレは。これでもそれなりに、色々考えながら動いてるのにさー」


はい、カイ視点のお話は、次章でやっと登場予定です。


「遅いよ!」

「と、言うか。この男の心情がまるで描かれていない現時点でのこの企画は、少々無謀じゃありませんか?」

「そーだそーだ、もっと言ってやってよリタさん! ネタバレしないようにディアナの周囲に突撃しろとか、無茶ぶりが過ぎるって!」

「ま、こやつの心情が描かれていても、ディアナ様を渡すわけがありませんけど」

「そう来る!?」

「当然でしょう。……けれどひとまず、このフロアは通り抜けてくださいな。私ではあなたに敵いませんから、ここはもっと実力ある人に、タコ殴りにして貰わなければ」

「……途中リタイアってアリ?」


なしです。さくさく進んでください。


STAGE 5 クリ……ア?





BOSS STAGE――VSエドワード


「お」


最初の一言を言う前に、真上から降ってきた恐怖の一撃を、カイは全力で避ける羽目になった。


(せめて台詞は言わせてほしい!)


そして、仮にも貴族の子弟が、天井裏に潜んで敵を待つなんて真似もしないでほしい。


細い暗器で繰り出される強烈な攻撃は、さすがに師弟だけあって、シリウスのものとよく似ていた。が、本編のシリウスはあくまでも牽制であって本気ではなかったのに対し、目の前にいる男はガチの本気で殺しに来ている。

エドワードとカイでは、戦い方のスタイルが違う。エドワードは一撃必殺を信条とし、カイはその場を切り抜け生き延びることを目的とした構えだ。故に両者の実力が拮抗している場合、長期戦に備えているカイの方が有利となる。


まさかディアナの兄を殺すわけにもいかず、カイはひたすら、防御に徹した。エドワードはあの見た目でスタミナも相当に高い男なので、我慢大会はカイにとっても賭けとなったが――天は、ひとまず、彼に味方した。


キィン!!


僅かに見えた隙をつき、エドワードの懐剣を弾き飛ばす。……どうやら予想していたようで、武器を無くしたエドワードに動揺は見えなかった。


「お兄さん、妹さんを」

「それ以上言うなこのちょい役男」

「……その呼び名、小ネタシリーズでは定着なんですかね。別に良いけどさ」


語呂の良さって重要ですよねー。


「大体なんだこの企画は。俺の可愛いディアナを嫁に出すだと? ふざけんな認められるか!」

「えーと……お話の題名そのものを全面否定したキャラクターさんはこちらです」

「ディアナの夫になる奴はな。強く賢く気高く、いついかなるときもディアナを最優先して、雨が降ったら傘になり、風が吹いたら楯になって、何があろうとディアナを守り抜く、それくらいは最低条件だ!」

「……創作の世界にもなかなかいないよねぇ、そんなヤツ」

「ディアナを、死ぬまで幸せにできる、その覚悟がお前にあるのか!」

「おかしいなー、こういう会話は、本来ならSTAGE 1のあの人と交わすべきな気がするんだけど」

「質問に答えろ!」


真面目に睨まれたカイは、どう答えるか少し悩んで――。


「その、答えさ。今言わなきゃダメ?」

「……何?」

「俺、まだディアナにすら、言いたいことが言えてないんだよね。ここでの記憶は、例によって例のごとく無くなるらしいけど。やっぱり大事なことは、ちゃんと最初に、本人に言いたいなぁって思ってさ」

「……『俺にください!』発言は良いのか」

「アレはだってネタじゃん、完璧に。本編で俺がディアナを嫁に取れるワケないし」

「何故そう思う?」

「身分違いとか、そもそも俺の立場とか、色々あるでしょ」

「……意外と常識人なんだな、お前」

「なんかさっきも、似たようなこと言われた気が……俺、本編でどんなキャラだと思われてるんだろう」


基本的に軽いですからね、アナタのノリは。


「……本編描写が少ないって損だ」

「その文句は作者に言うべきだな」


カイのターンは予定通りの箇所なんですけど、そこにたどり着くまでが色々想定外に増えちゃいましたから。『謎の少年』期間が素敵に延長しちゃいました☆


「……少しは悪びれろ。気に食わないヤツだが、さすがに気の毒だ」

「そう思うならさ、ここ通してくれない? このミッションクリアしないと、俺本編に戻れないんだよ」

「最早副題詐欺だな、この話。……分かった、通れ」

「ありがとう、エドワードさん!」


BOSS STAGE クリア!






「やった、俺は生き延びた!」


おめでとうございました! ……と、申し上げたいところですが。




「……あら、ここは、どこなのでしょう?」

「ってえぇ、シェイラさん?」

「どちら様、ですか?」

「えーと、俺『紅薔薇様』の知り合いで」

「え、ディーの!?」


「「…………」」


「ってちょおっと待ったああぁぁぁ!!」


はいはい、何でしょう?


「シェイラさん、本編では『紅薔薇様』イコール『ディー』って知らないよね? ってことは、ひょっとしてもしかしなくても、」


うん、その予想は当たってると思うよー。


「やっぱり、一つ前のIFのシェイラさんか!」


大☆正☆解!!

ゲストとして、今回招待しちゃいました!


「ちょ、本編キャラだけじゃなかったの!?」


『何でもアリ』が、ネタ話の信条ですから。

ではでは。




SECRET BOSS STAGE――VSシェイラ


さぁ、例の台詞をビシッと!


「無理!!」







おしまい!





チキンハートでびびっておりましたが、想定外に優しい読者様が多く、カイが好きだと言ってくださる方もくさんいいらっしゃって、すごく嬉しかったです。


ななしさま、リクエストありがとうございました!



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