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勇者になった少年・外伝  作者: Precious Heart
インディゴ王国記『騎士王』編
3/3

『自分探し』

お待たせしました。

Precious Heartです。

第二話をお楽しみ下さい。



 sideA-2

 

 時刻は夕食時。

 ツルギは村長の息子と名乗ったエーミルに連れられ、ベルンハルトの彼の家で食卓を囲んでいた。


「えー、改めて、助けてくれてありがとう。

 遅くなったけど、家族を紹介させてもらいます」


 応急手当てを終え、肩に包帯を巻いたエーミルが食卓をぐるりと見渡す。


「まず、正面に座ってるのが、父で村長のエルベルン」


「エルベルン=ベルンハルトです。

 此度は我が家族を守って頂き誠にありがとうございます」


 齢50になるエルベルンが頭を下げ、ツルギもつられて頭を下げる。


「次に右奥に座ってるのが、母のハンナ」


「ハンナです。

 ささやかな料理ですが、是非堪能して行って下さい」


 柔和な笑顔を浮かべるハンナは実年齢より若く見え、40代前半に見えた。


「そして、その手前にいるのが妻のヘレーネ」


「ヘレーネです。馬鹿な夫を助けてくれてありがとうございました。

 お陰で子供を産む前に未亡人にならずにすみました」


 無謀な夫に対して言葉に棘を込めるヘレーネは、妊娠6ヵ月になるお腹をさする。


「おいおい、そこまで言わなくていいだろう」


「あら、どの口がそんな事を言うのかしら。

 ファルコティアに立ち向かうなんて、万が一の事があって、ショックで流産したらどうするつもりなの?」


「……ごめんなさい」


 エーミルがヘレーネに頭を下げ、周りに笑いが生まれる。


「立花 剣。

 エーミルから聞いてるかも知れないが異邦人だ」


 笑いが収まりかけた所で、ツルギは流れで自己紹介する。

 一同はそれに頷き、ハンナの「それでは、お料理が冷めない内に頂きましょう」という言葉で食事を開始した。





「そう言えば、ツルギはこっちに来てどれくらいになるんだ?」


 夕食をある程度取り終え、最初に口を開いたのはエーミルだった。


「神隠しに遭ったのは俺が10歳の頃。

 それからもう10年は経つだろう」


「まあ、そんなに」


 と、口を押さえて驚くのはハンナで、


「大変だったんじゃないのか?」


 と訊いてきたのは、村長のエルベルンだ。

 ツルギはエルベルンの言葉に首を横に振り、


「いや、そんなに大変じゃなかったかな。

 確かに初期はパニックで泣き喚いていたが、そんな俺を救ってくれた恩人がいたから」


「恩人?」


 皆が首を傾げ、エーミルが疑問をそのまま口に出していた。


「ああ、右も左も分からない俺を拾ってくれてな。

 色々目をかけてくれたんだ」


「へー、そんな立派な方もいるんだな」


 エーミルが素直な感想を述べると、ツルギも頷く。


「本当に素晴らしく立派な方だった。

 今では第2の親父だったと思っているよ。

 ……口に出して言った事は一度しかないけどな」


 懐かしいんで言うツルギは心の底から尊敬していたのだろう。

 その顔に浮かぶ表情はエーミルが初めて見る穏やかでいい笑顔だった。

 だが、一家が気になったのは別の事。


「……その御方は?」


 エルベルンが声恐々に伺う。


「亡くなったよ。

 今年の夏、流行り病にかかって」


 ツルギの沈痛な声に、場が一気に重くなる。


「親父の為に何かしたくて。

 剣を一生懸命鍛えて。

 親父から貰った剣を親父に捧げた。

 ……まあ、もう振るう意味もいないけど」


 ツルギが布に巻かれた剣を見て自嘲気味に笑う。

 それを見て、エーミルがハッと気づく。

 ファルコティアに襲われた時、ツルギが背中の剣を抜かずにエーミルの剣を使った理由に。


「……今、ツルギは何をしてるんだ?」

 

「自分探しの旅……って所かな。

 親父が亡くなる前に『お前はもっと自由に生きていい』って言われてな、剣を振るい続けてきた道以外の道を探すつもりだ」


 エーミルの問いに、ツルギが苦笑を浮かべると、


「なら、この村に滞在したらどうだ?」


 エルベルンがそんな提案をした。


「あなた?」

「父さん?」


 ハンナやエーミルが驚きの声を上げ、ツルギも目をしばたたかせる。


「別に村を護衛しろって訳じゃない。

 剣を振るいたくなかったら振るわなくていい。

 ただ農村の生活を体験してみて参考にしてみたらどうだ?

 ちょうど収穫期だから、人は多いに越したことはない」


 最後にちょっとした本音を交えてエルベルンが笑い、周りも呆れ笑いを浮かべる。

 ツルギにとっては懐かしい温かさに、


「それでは、お言葉に甘えさせて頂きます」


 と頭を下げ、


 この日、ベルンハルトに新しい住民が増えたのだった。




いかがだったでしょうか?

次話は舞台が変わって、sideBをお送り致します。

今暫くお待ち下さい。

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