『自分探し』
お待たせしました。
Precious Heartです。
第二話をお楽しみ下さい。
sideA-2
時刻は夕食時。
ツルギは村長の息子と名乗ったエーミルに連れられ、ベルンハルトの彼の家で食卓を囲んでいた。
「えー、改めて、助けてくれてありがとう。
遅くなったけど、家族を紹介させてもらいます」
応急手当てを終え、肩に包帯を巻いたエーミルが食卓をぐるりと見渡す。
「まず、正面に座ってるのが、父で村長のエルベルン」
「エルベルン=ベルンハルトです。
此度は我が家族を守って頂き誠にありがとうございます」
齢50になるエルベルンが頭を下げ、ツルギもつられて頭を下げる。
「次に右奥に座ってるのが、母のハンナ」
「ハンナです。
ささやかな料理ですが、是非堪能して行って下さい」
柔和な笑顔を浮かべるハンナは実年齢より若く見え、40代前半に見えた。
「そして、その手前にいるのが妻のヘレーネ」
「ヘレーネです。馬鹿な夫を助けてくれてありがとうございました。
お陰で子供を産む前に未亡人にならずにすみました」
無謀な夫に対して言葉に棘を込めるヘレーネは、妊娠6ヵ月になるお腹をさする。
「おいおい、そこまで言わなくていいだろう」
「あら、どの口がそんな事を言うのかしら。
ファルコティアに立ち向かうなんて、万が一の事があって、ショックで流産したらどうするつもりなの?」
「……ごめんなさい」
エーミルがヘレーネに頭を下げ、周りに笑いが生まれる。
「立花 剣。
エーミルから聞いてるかも知れないが異邦人だ」
笑いが収まりかけた所で、ツルギは流れで自己紹介する。
一同はそれに頷き、ハンナの「それでは、お料理が冷めない内に頂きましょう」という言葉で食事を開始した。
「そう言えば、ツルギはこっちに来てどれくらいになるんだ?」
夕食をある程度取り終え、最初に口を開いたのはエーミルだった。
「神隠しに遭ったのは俺が10歳の頃。
それからもう10年は経つだろう」
「まあ、そんなに」
と、口を押さえて驚くのはハンナで、
「大変だったんじゃないのか?」
と訊いてきたのは、村長のエルベルンだ。
ツルギはエルベルンの言葉に首を横に振り、
「いや、そんなに大変じゃなかったかな。
確かに初期はパニックで泣き喚いていたが、そんな俺を救ってくれた恩人がいたから」
「恩人?」
皆が首を傾げ、エーミルが疑問をそのまま口に出していた。
「ああ、右も左も分からない俺を拾ってくれてな。
色々目をかけてくれたんだ」
「へー、そんな立派な方もいるんだな」
エーミルが素直な感想を述べると、ツルギも頷く。
「本当に素晴らしく立派な方だった。
今では第2の親父だったと思っているよ。
……口に出して言った事は一度しかないけどな」
懐かしいんで言うツルギは心の底から尊敬していたのだろう。
その顔に浮かぶ表情はエーミルが初めて見る穏やかでいい笑顔だった。
だが、一家が気になったのは別の事。
「……その御方は?」
エルベルンが声恐々に伺う。
「亡くなったよ。
今年の夏、流行り病にかかって」
ツルギの沈痛な声に、場が一気に重くなる。
「親父の為に何かしたくて。
剣を一生懸命鍛えて。
親父から貰った剣を親父に捧げた。
……まあ、もう振るう意味もいないけど」
ツルギが布に巻かれた剣を見て自嘲気味に笑う。
それを見て、エーミルがハッと気づく。
ファルコティアに襲われた時、ツルギが背中の剣を抜かずにエーミルの剣を使った理由に。
「……今、ツルギは何をしてるんだ?」
「自分探しの旅……って所かな。
親父が亡くなる前に『お前はもっと自由に生きていい』って言われてな、剣を振るい続けてきた道以外の道を探すつもりだ」
エーミルの問いに、ツルギが苦笑を浮かべると、
「なら、この村に滞在したらどうだ?」
エルベルンがそんな提案をした。
「あなた?」
「父さん?」
ハンナやエーミルが驚きの声を上げ、ツルギも目をしばたたかせる。
「別に村を護衛しろって訳じゃない。
剣を振るいたくなかったら振るわなくていい。
ただ農村の生活を体験してみて参考にしてみたらどうだ?
ちょうど収穫期だから、人は多いに越したことはない」
最後にちょっとした本音を交えてエルベルンが笑い、周りも呆れ笑いを浮かべる。
ツルギにとっては懐かしい温かさに、
「それでは、お言葉に甘えさせて頂きます」
と頭を下げ、
この日、ベルンハルトに新しい住民が増えたのだった。
いかがだったでしょうか?
次話は舞台が変わって、sideBをお送り致します。
今暫くお待ち下さい。




