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天界と人間界、そして地界がひとつになった世界
ールシフェイル
大陸には6つの国
カルマ、サウリア、ルキネア、アサヒ、ケルフ、そして大陸最大の国であるジークフリート皇国
神々と人が混ざり合い、そして支え合っている神秘なるこの世界
我々はこの世界を平和になるよう保ち、守らねばならない。
そのためには一人一人のソウルを我が君に捧げ続け
陛下を支えてゆくのが、私たちの使命である。
「ああ、つまらない」
1人の美しい娘がつぶやいた。
娘にとって、いや、世界中に良く知られている教典の一部をまた読まされたからである。
「幼児でも知っているようなこの文章を、いつまで復唱すればいいのよ」
こんなことよりも、待ちに待った社交界デビューに向けて
ダンスや礼儀作法を学びたいものだと憤慨していた。
「エリィ、エリィったら少しは落ち着いて?ね?あたし達下級爵位出身の娘達が教養を宮殿で学べられるなんて恵まれているのだから」
だからもう少しばかり我慢して勉学に励もう、と、娘ことエリィの友が宥めるがエリィはあまり納得してはいなかった。
「そうは言うけれど、コレットだってつまらないと思わない?わたしはね、ダンスの練習を1秒たりとも怠りたくないの」
そういうと、エリィは自身のカバンから四角い写真立てを取り出した。
「ほら、ほらこの子!可愛いでしょ?」
コレットが写真立てをのぞき込むとそこにはエリィにどことなく似ている可愛いらしい娘が写っていた。
「可愛らしい人ね」
「そう!そうでしょう?可愛いのよこの子」
エリィは興奮した様子で鼻をスンと上に上げる仕草をした。
「ええ、でも…この子とダンスの練習を怠たりたくない理由がどう結び付くのか…私にはわからないわ」
「わたしはこの子をいずれこちらに呼びたいの。そのためには身分のある殿方に見初められ、その方の養子にするという計画なのよ。だから、今回のデビューにかけているわ」
「それは…また…」
「ああ、ああ!早くあの子に会いたいわ」
「ねえ、エリィ。ところで、その娘は一体だれなのかしら?」
「我が愛しのお姉様!」
「ええ?あなた、お姉さんがいたの?」
「双子の姉よ、今は故郷のアサヒ王国にいるわ」
エリィ・ツェルトはアサヒの豪商ツェルト家の娘である。
ちょうど一年前仕事の都合で父と共に旅に出ていた時にたまたまジークフリート皇国宰相のイノス・パレニーコと出会い、侍女として見出され、破格の待遇で宮殿に招かれたのだ。
つまり、将来の皇帝の妃候補である。
しかし、当の本人はそんなものには興味がなく
あるのはどれだけはやく姉の顔が見れるかどうかであった。
「私のデビューはマスカレード!姉様も引っ張っていくつもりよ」
ニーナ・ツェルト
エリィ・ツェルトの双子の姉であり
かなりの苦労人でそして
この物語の主人公である。