召還術もしくは召還者
召還術は召還する方に、多少強制力があるため、基本的には召還された方は逆らえない、らしい。普通、召還するときに、そういう術式を組み込んで召還する、らしい。
だけそ、まれに間違いで凄く強い何かが呼ばれて、分不相応な力を願った誰かが調子に乗って身を滅ぼしたりもする、らしい。何故なら強い存在にはそれなりの報酬が必要なので、用意できなければそこで終了となるから。
召還する側に強制力があるなら、そんなことにはならないと思うのだが、報酬を用意しておいて、その報酬の代わりに力を借りるということになっている術のため難しいらしい。力の強いものほど大きな報酬が必要になるようで、そもそも力が強ければ、その召還術自体を撥ね退けることも出来るようになるということだ。
さらに、長く召還したままでいるためには、召還者同士に何らかの繋がりが必要になることもあるらしい。世界には強制力があって、本来この世界にいないものは世界自体が拒むようなのだ。居続けるためには抗う必要があるが、それには何らかの力が必要で、繋がりがあると魔力は最低限ですむ。
だけど、魔力がまったく必要無くなるという訳では無いようだ。だから召還され続けているために、追加で報酬を要求されることもあるし、要求されなくても用意しなければならないこともある。
そして気に入らない召還主でも報酬が用意されてしまうと、契約としてある程度縛られてしまう。ただし凄く気に入った相手同士だと、お願いねー、うん良いよー、みたいな最低限の魔力のやり取りですむアバウトさもありのよう。
先生は面倒で、少しでも他者を関わる回数を減らしたかったようで、呼び出すときに契約が切れたら勝手にオートで帰るように設定しているらしい。通常は、契約が切れるときに両者で確認する。
私自身が行う召還術は、先生がくれた召還具を媒介に、私自身の魔力を報酬に行っているようだ。基本的に出てくるのはラリズだけのようだけど、繋がりやすい何かがあるのだろうか。
それにしても召還術を学むことによって、何となく私は自分自身に微妙なものを感じてしまう。
私はなぜ帰れないのだろうか。
私は先生の前に現れたのだから、先生が召還者で良いと思う。それなら私はすぐに帰れたのだ。ハッピーエンドである。
だけど先生は私の召還者では無いそうだ。実は私もそう思う。先生は人嫌いだから、だからこんなところに住んでいる。
だけそ先生の言い分は違う。召還術は基本的に、召還するとき、召還される側にも分かるものらしい。召還された先がどこなのか、召還されて何をさせられるのかは、分かるときと分からないときがあるようだけど。
先生の魔術が失敗したとか、暴走して、私を連れてきたとかでも無いらしい。先生はこの世界で最も魔術の制御に優れているそうだ。そもそもあの時、先生は、術式計算に区切りがついて休憩を取ろうとしていたそうだ。もちろん魔力は使っていない。
そして、何よりも大前提なのは、召還された者の世界にも、魔力と魔法と魔術があり、召還された者も必ずそれを使えるということなのだ。
アウト。思いっきりアウトだ。魔力だけだったら私の知らない所で、もしかしたらあったのかもしれないが、私はあちらで 魔術を使えない、使ったことが無い。
先生に泣いて頼んでも、先生が召還したわけでは無いから私は帰れない。そもそも私が、どこから来たのか先生は知らない。
先生が私を受け入れてくれたのは、防犯術を施しまくっているらしいこの屋敷に、間違ってもこの世界の何かが入り込むことは出来ないと思っていたからかもしれない。
それは先生の絶対の自信であり確信のようだ。私は先生のプライドのために受け入れてもらえたのかもしれない。