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第7話『波紋と亀裂』

※本作品の執筆にはAIを活用しています。


第7話『波紋と亀裂』


異世界ノクタリア。その空は、いつからか灰色に塗り潰されていた。


「思考せよ、秩序のために。奉仕せよ、正義のために」


街頭のスピーカーから、無機質なアナウンスが絶え間なく流れる。

かつては色彩豊かだった街並みも、今や白とグレーの画一的な塗装に覆われていた。広場での音楽、酒場での放談、子供たちの落書き――それら全ては「非生産的」なノイズとして禁止され、違反者は即座に再教育施設へと連行される。


人々は互いに視線を合わせず、ただ俯いて歩く。

隣人が「不穏分子」ではないかと疑い、自らがそう疑われないように息を殺す。

それが、ジャスティスフェイスがもたらした「平和」の正体だった。


その息苦しい日常に、小さなヒビが入ったのは数日前のことだ。

建設中の尖塔へ向かう輸送車が、何者かによって爆破されたのだ。

「絶対」の支配に、傷がついた瞬間だった。


「……市民の動揺係数、上昇中。恐怖による統制に、微細なラグが生じ始めています」


聖断空母ジャッジメント、作戦会議室。

報告する声は冷ややかだ。

円卓を囲む五人の戦士たちは、戦闘用のヘルメットを解除し、それぞれの素顔を晒していた。


「たかだか輸送車一台だ。過剰反応だろう」

赤髪を逆立てた青年――ブレイズレッドが、頬杖をついて退屈そうに吐き捨てる。その頬には古傷があり、好戦的な瞳が苛立ちに揺れていた。


「だが、放置は秩序の崩壊を招く」

眼鏡の奥の瞳を光らせたのは、セイジレッドだ。手元の端末を操作し、データを空中に投影する。

「敵は正面突破を避け、こちらの監視網の死角を突いた。……知恵が回る」


「小賢しい。法に背く者は、その根から断つべきだ」

巨躯の男、ジャッジレッドが腕を組んで唸る。角刈りの厳格な風貌は、まさに法の番人そのものだった。


彼らの議論を聞きながら、リーダー席に座るバーニングレッド――ライガ・アランは、憂いを帯びた瞳を伏せていた。

端正だが親しみやすい顔立ち。だがその表情は曇っている。

(首輪つけられて生きるんが正解なんか)

先日対峙した男の叫びが、耳の奥でリフレインしていた。この街の沈黙は、本当に「平和」なのだろうか。


「――ライガ」


冷徹な声に、彼は顔を上げた。

隣に立つ、整った黒髪の青年。ユナイトレッド――カイ・レグリオ。

その美しくも感情のない瞳が、ライガを見透かすように射抜いていた。


「迷いは不要だ。システムにバグが生じれば、修正する。我々の任務はそれだけだ」

「……ああ。わかってる、カイ」


ライガは小さく頷き、その表情を隠すように。


一方、地上の廃墟ビル。

窓から灰色の街を見下ろしていたグリムが、ふと振り返った。


「見ろよ。あいつら、死んだ魚みてぇな目をして歩いてやがる」

「思考を奪われ、ただ生かされているだけだ。家畜と変わらない」

ネビュロスが皮肉げに呟く。


「物理的に塔を壊しても、あの“空気”を変えない限り、本当の意味での勝利はないね」

ヴェルミリオンが退屈そうにトランプを切った。


グリムはニヤリと笑い、自身の喉元を指差した。

「せやな。ほな、次は派手に演説ブチあげといくか。

あいつらが信じ込まされてる『正義』のメッキ、俺らが全世界の前で剥がしたるわ」


物理的な破壊の次は、思想の破壊。

魔王たちは次なる標的を、都市の広場に設置された巨大モニター『支配の眼』に定めた。


(第8話へ続く)

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