表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンチジャスティス -魔王戦隊ダークトリニティ-  作者: DD22


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/66

第3部 第15話『孤独な太陽と冷たい星(中編)』

【前回のあらすじ】

ついにカイが待つ統合中枢コアへ到達したライガ。カイは、かつて自身の唯一の理解者だった女性を失い、その犠牲と引き換えに選んだ「世界管理計画」を完遂することが、彼女への唯一の答えだと語りだす。ライガはその考えを否定し、二人は激突。ユナイトレッドに変身したカイに対し、バーニングレッドは満身創痍の体で限界を超えた一撃を叩き込んだ!

※本作品の執筆にはAIを活用しています。


 光の長剣が、再び振るわれた。


 ライガは右腕でそれを弾く——だが、亀裂の入ったガントレットが悲鳴を上げた。


 ジュウウウッ!!


「ぐ……ッ」


 弾ききれなかった刃が肩を掠め、深紅のスーツに焼け焦げた線が走る。


 ライガは床を転がり、距離を取った。


 カイは追わない。光の翼を広げたまま、静かに浮かんでライガを見下ろしている。


「……どうした。もう終わりか」


「終わるわけないだろ」


 ライガは膝をつきそうになるのを堪え、立ち上がった。


 スーツの各所から赤いエラーランプが点滅している。排熱ダクトの音が、かつてより明らかに細くなっていた。


「カイ」


 ライガは荒い息の中で、静かに言った。


「さっきの話——お前が失った、その人のことだけど」


 ユナイトレッドの動きが、コンマ数秒だけ——止まった。


「……関係ない」


「関係ある」


 ライガは拳を握った。


「お前が自分から話した。それだけで十分だ」


「……」


「その人がいなくなって、お前は一人でこの計画を続けてきたんだろ。誰にも頼らずに、誰にも話さずに。……何年も」


 ユナイトレッドのバイザーの奥の瞳が、鋭くなった。


「同情は不要だ」


「同情じゃない」


 ライガの声が、低く響いた。


「俺は怒ってる」


「……何に」


「お前に」


 静寂。


 ライガは一歩、前に出た。


「俺はお前に言ったはずだ。入隊してしばらく経った頃——覚えてるか」


 ユナイトレッドは何も言わなかった。


「『誰もが自分の足で立って、笑い合える世界を作りたい』って、俺がお前に言った。あの時お前は、一緒に作ろうと答えた」


「……」


「俺はその言葉を、本気で信じた。お前と一緒なら、本当にそういう世界を作れると思った。だから——お前の隣で戦い続けた」


 ユナイトレッドの光の翼が、微かに揺れた。


「なあ、カイ」


 ライガの声が、さらに低くなった。


「あの返事は——本気だったか」


 沈黙が、長く続いた。


 やがてカイは、静かに言った。


「……半分は、本気だった」


 ライガは、その言葉をゆっくりと噛みしめた。


「半分は——君なら本当に変えられるかもしれないと思った。レヴェリオを失ってから、唯一そう思えた人間が、君だった」


 レヴェリオ。


 その名前が、ライガの耳に静かに刻まれた。


「……レヴェリオ」


 ライガは、その名を繰り返した。


「それが——その人の名前か」


 カイは答えなかった。


 だが、バイザーの奥の瞳が——深いところで揺れた。


 ユナイトレッドは、静かに口を開いた。


「……彼女は」


 声が、かすかに——変わった。


 冷たさの中に、何か別のものが混じった。


「彼女は、私が孤独だった頃から隣にいてくれた。私の言葉を否定せず、全て受け入れてくれた。……私にとって、世界で唯一の理解者だった」


「……」


「だが私は——彼女よりも大きな理想を選んだ。世界を管理するシステムの設計者になることを選んだ瞬間、彼女は自ら去った」


 カイの声が、わずかに——震えた。


「……私が彼女を必要としなくなったから、と思っていた。だが」


 そこで、カイは止まった。


 言葉が——出てこなかった。


「だが——本当は分かっている」


 ライガが、静かに続けた。


「お前が彼女を必要としなくなったんじゃない。お前が——彼女より、その理想を選んだんだ。自分で選んで、自分で手放した」


 ユナイトレッドの装甲が、かすかに震えた。


「……ッ」


「だから計画を止められない。止めたら——レヴェリオを失った意味が、なくなる。お前が自分で選んだあの選択が、ただの間違いになってしまう」


「黙れ」


「カイ」


「黙れと言っている……ッ!」


 ライガは、それでも前に出た。


「俺も——お前と同じだった」


 ユナイトレッドが、止まった。


「同じだと? 君と私が?」


「ああ」


 ライガは、荒い息の中で静かに言った。


「俺もずっと、『正義』という言葉を盾にしてた。紛争地帯で少女を見捨てた罪悪感を、『より多くを救うため』という大義で封じてた。自分の手が汚れていることに、目を逸らし続けてた」


「……」


「お前と同じだ。大切な何かを失った痛みを、『正しい理由』という鎧で覆い隠してた。その鎧がなくなったら、自分が何者か分からなくなるから——ずっと着続けてた」


 カイは何も言わなかった。


 だが——バイザーの奥の瞳が、揺れていた。


「俺がその鎧を脱げたのは——グリムたちのおかげだ」


 ライガの声が、静かに続いた。


「グリムに何度も殴られた。あいつの拳が、俺に教えてくれた。どれだけ正義を語っても、目の前の人間から逃げ続けてた俺が、どれだけ空っぽだったかを」

「……」

「ネビュロスは——知恵だけでは守れなかった過去を抱えながら、それでも仲間のために動き続けた。ヴェルミリオンは——傷つくことを誰より恐れながら、それでも道化の仮面の下で仲間を守ろうとした。あいつらと一緒に戦って、俺は初めて分かった。鎧を脱いでも、立っていられるって」


「そしてグリムの白炎が——俺が少女に謝れなかった罪悪感も、正義という名の逃げ場も、全部焼き切ってくれた」

 ライガは、胸のドッグタグに触れた。


「そして——グリムの白炎が、その怖さごと焼き切ってくれた。あいつの炎は、痛みを与えるんじゃない。呪いを浄化するんだ。俺が少女に謝れなかった罪悪感も、正義という名の逃げ場も——全部」


 ユナイトレッドは黙って聞いていた。


「お前にも——本当は、誰かにそうしてほしかったんじゃないのか」


 ライガの声が、低く、しかし真っ直ぐに響いた。


「レヴェリオが去った後も、ずっと一人で抱えてきた全部を。誰かに焼き切ってほしかったんじゃないのか」


 静寂。


 ユナイトレッドのバイザーの奥で、何かが揺れ続けていた。


「……私は」


 かすかな声だった。


「私は——正しい。この計画は正しい。レヴェリオへの誓いは——」


「カイ」


「……正しいはずだ。正しくなければ——」


「カイ」


「正しくなければ、全てが——っ!!」


 ユナイトレッドが動いた。


 感情が——冷静さの膜を破って滲み出た速さだった。


「《光翼斬フォトン・スライサー》!!」


 背中の翼から光の粒子が一斉に散布され、その中心をユナイトレッドが光の剣を構えて突き抜ける。


 光の嵐がバーニングレッドを全方位から包んだ。


「ッ——!!」


 ライガは腕で顔を庇う。光の粒子が装甲を焼き、視界が白く飛んだ。


 ユナイトレッドの剣が、胸板に突き刺さる。


 ドォォォンッ!!


「ぐあァッ!!」


 衝撃がスーツの内部まで貫通し、ライガの身体が吹き飛んだ。


 床を転がり、壁際まで叩きつけられる。


「……ッ、は……ッ」


 立ち上がろうとする。


 だがその瞬間、足元の重力が急激に増大した。


「《重力統制グラビティ・コントロール》」


 床がライガを飲み込もうとするような圧力。全身に三倍の重力がかかり、膝が折れる。


「ぐ……う……ッ!」


 立てない。押し潰される。


「……お前の言葉など、不要だ」


 ユナイトレッドが、ゆっくりと歩み寄った。


 その声は冷たかった。


 だが——どこか、必死だった。


「私は正しい。この計画は正しい。感情を排除したシステムこそが——誰も傷つけない、唯一の答えだ」


「……カイ」


「黙れ」


「お前は今——俺の言葉を否定したいんじゃなくて、自分自身を納得させようとしてる」


「……ッ!」


「俺には分かる。同じだったから」


 ライガは床に両手をつき、震える腕で体を起こした。


 重力が三倍かかっている。一センチ動くたびに、全身が軋む。


 それでも——動いた。


「なぜ立ち上がる」


 カイの声が、低くなった。


「なぜだ。論理的に考えれば、今すぐ諦めるのが最善だ。エネルギーはほぼ尽きている。重力に抗える体力も残っていない。……なぜ、まだ動こうとする」


「お前には——分からないのか」


 ライガは、重力に押しつぶされながら、顔を上げた。


「諦めたら——お前が一人になるから」


 カイは、止まった。


「……何?」


「お前はずっと一人だった。レヴェリオが去ってから、ずっと。誰にも話せないまま、誰にも頼れないまま、この計画を抱えてきた」


「……関係ない話だ」


「関係ある。だって——」


 ライガは、震える腕で体を起こし続けた。


「俺が諦めたら、お前にそれを言える奴がいなくなる。お前の間違いを、正面から言える奴が」


 ユナイトレッドは——動けなかった。


「レヴェリオはお前の全部を肯定してくれた。でも俺は——お前の間違いを、お前の目の前で言える」


「……ッ」


「それが——仲間だろ」


 沈黙が、最上層を満たした。


 カイの《重力統制グラビティ・コントロール》が——わずかに、揺らいだ。


 ライガはその一瞬を逃さなかった。


 最後の熱を右腕に集中させる。


「《爆熱剛拳バーニング・ナックル》!!」


 排熱ダクトが火を噴く。重力に逆らい、渾身の右拳を叩き込む。


 ユナイトレッドが咄嗟に腕を交差させた。


「《反転障壁リバース・シールド》!!」


 重力のベクトルが反転し、ライガの拳の力がそのままライガ自身に返ってくる。


 ドォォォンッ!!


「がァ……ッ!!」


 自分の力で、自分が吹き飛んだ。


 床を転がり、止まった。


 スーツのエラーランプが、全て赤に変わっている。


 排熱ダクトの音が——消えかけていた。


「……ッ」


 ライガは、倒れたまま、天井を見上げた。


 ガラス越しのノクタリアの夜空。


 その向こうに——管理された白とグレーの街が広がっていた。


(第16話へ続く)


いつもお読みいただきありがとうございます!


今回はライガとカイ、二人の内面に深く踏み込む中編となりました。カイが必死に自分に言い聞かせようとする「正しさ」の言葉、そしてライガが自身の過去と、グリムたちとの出会いを語る場面は、執筆しながらも胸に迫るものがありました。


特にカイの「レヴェリオ」への思い、そして彼が選んだ道が、どのような感情の軋轢を生んでいるのか——その葛藤が少しでも伝わったなら幸いです。ライガの言葉が、カイの閉ざされた心にどう響いたのか、引き続き見守っていただけると嬉しいです。


いかがでしたでしょうか?

もし少しでも楽しんでいただけたら、ぜひ下の★★★★★から評価や、ブックマーク、そして感想をいただけると、作者の大きな励みになります!

次回も心を込めて執筆してまいりますので、引き続き応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ