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アンチジャスティス -魔王戦隊ダークトリニティ-  作者: DD22


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第3部 第11話『中部セクター:永久凍土の問答(前編)』

【前回のあらすじ】

グリムが肆号機アシュレイを撃破する中、弐号機セイジは感情を捨てシステムと化し、ヴェルミリオンに襲いかかった。しかしヴェルミリオンは、セイジの過去のトラウマを抉る幻覚攻撃で心を揺さぶり、奥義《万華鏡の終焉》を発動。自身の心と戦わされたセイジは、ついに「痛み」を感じ、人間としての顔を取り戻しながらも敗北を喫した。

※本作品の執筆にはAIを活用しています。


 ズン、と床が止まった。


 プラットフォームの固定が完了した直後——それは沈黙ではなく、密閉だった。


 吹き抜けの空間を挟んで左右の装甲板が下りた音。上下の電磁障壁が起動した振動。下層でグリムが叩きつけられる轟音が、かすかに床を伝って消えた。


 そして、静寂。


 中部セクターはタワーの吹き抜けの中に浮かぶ孤島になった。


 ネビュロスは着地の衝撃に身体を低くしながら、すぐに周囲を観測した。


 直径三十メートルほどの円形床。上下左右、逃げ場はない。床下は奈落。頭上は装甲板。


 そして——正面に、それはいた。


 参号機ジャッジ


 以前のレクス・クレイドの装甲より、ひとまわり以上大きい。肩のアーマーはシグマスーツの黒い液体金属とレクスの黄金装甲が溶け合い、幾重にも重なった鉄壁の城塞と化している。右腕は処刑剣をも飲み込む形で肥大化し、巨大な刃の塊へと変形していた。


 バイザーの眼窩は黒く塗りつぶされている。


 そこにレクス・クレイドの意志はない——少なくとも、表面上は。


「……カイの奴、よほど私達の進化が怖かったと見える」


 ネビュロスは静かに呟いた。


 片眼鏡モノクルの位置を直す。腰の魔導書《凍てつく記録フローズン・レコード》の鎖が、かすかに揺れた。


 《真・魔導外殻トゥルー・マギア・シェル


 エルザのバイオカプセルで完成した本物の鎧が、ネビュロスの全身を包んでいる。氷の結晶が幾何学的に重なり合った蒼銀のフルプレートアーマーは、ダイヤモンド並みの硬度を誇る。


 そして——ネビュロスが息を吐くたびに、周囲の空気が白く凍る。


 床に霜が張り始めた。


 参号機ジャッジが動いた。


 助走もない。前置きもない。


 プラットフォームの中心から、最短距離の突進だった。


 肥大化した右腕の刃が横薙ぎに振られる。軌跡が風圧だけで空気を切り裂き、床のコンクリートが削れた。


「ッ——!」


 ネビュロスは真横に飛ぶ。


 刃の軌道が、彼の立っていた空間を丸ごと消した。


 着地した瞬間、ネビュロスの指先が床を叩く。


「氷鎖・零結陣グレイシャル・チェーン!」


 床から六本の氷の鎖が這い出し、参号機ジャッジの両足首と膝関節に絡みついた。関節の駆動部を瞬時に凍結させ、一歩も動けなくする。


 参号機ジャッジの足が止まった。だが、止まったのは一瞬だった。


 肥大化した右腕を、振り上げる。


 そのまま——自分の足元に叩きつけた。


 ズドォォォォン!!


 衝撃波が放射状に爆ぜ、氷の鎖ごと床が砕け散る。プラットフォームの外縁まで亀裂が走り、ネビュロスは爆風に飛ばされながら体勢を立て直した。


「……なるほど。痛みの概念ごと、システムに封じられているか」


 自分の足元を破壊することに、一切の躊躇がない。


 それがネビュロスには、何よりも「異常」に見えた。


 グリムが相手にした肆号機アシュレイは、快楽ドーパミンの暴走という形で「感情のノイズ」が溢れ出していた。ヴェルミリオンが相手にした弐号機セイジは、計算という名の強い自我がシステムと混在していた。


 だが参号機ジャッジ——レクス・クレイドのシグマ体は、ただ命令だけが残っている。


「だから……一番深く、埋めたのか。カイめ」


 ネビュロスは低く唸った。


 静かな怒りが、その声に滲んだ。


 参号機ジャッジが再び踏み出す。今度は速い。右腕の刃を斜め上から振り下ろす大振り——だが、その軌道は単純だ。


 ネビュロスは退かない。


 踏み込む。


 懐に飛び込んだ。


 大剣系の武器は、密着した相手には振れない。それはグリムとジャッジが戦った頃から変わっていない。


「近距離では腕を振れない。そこだけは——同じだな」


 至近距離。


 魔導書が開く。六角形の氷の結晶が生成され、参号機ジャッジの胸部装甲に直接叩きつけた。


 絶対結界アブソリュート・ウォール——接触した対象の表面を急速凍結させる応用。


 バキィィッ!


 黄金の装甲に、蒼白い亀裂が走った。


「ガ……」


 参号機ジャッジが、声を漏らした。


 電子ノイズに混じった、ただの機械音かもしれない。


 だが——


 ネビュロスは飛び退きながら、その音の質を分析した。


(……違う。システムが出すエラー音とは、周波数が異なる)


 ネビュロスの目が細くなった。


 彼は距離を取りながら、素早く次の罠を仕掛け始めた。


 魔導書の頁をめくる。無数の氷のつぶてを展開し、参号機ジャッジの左右——逃げ場を潰すように設置する。


 氷晶弾クリスタル・バレット——だが今回は撃たない。壁として置く。


 参号機ジャッジが前進する。左右の氷の礫の列に気づかず——いや、気にせず直進してくる。


(気にしない? それとも……気づいていて、突き破るつもりか)


 ネビュロスは即座に答えを出した。


 突き破るつもりだ。


 ならば——


絶対結界アブソリュート・ウォール——展開」


 今度は左右の氷の礫を、瞬時に六角形の氷壁へと結晶化させた。


 迫ってきた参号機ジャッジが、左右の氷壁の間に入った——その瞬間。


 ネビュロスが両手を叩きつけた。


 左右の氷壁が、内側へ向かって同時に圧縮された。


 ガキィィィィィンッ!!


 参号機ジャッジの両肩が、内側から締め上げられる。


 動きが止まった。


 肩の装甲が悲鳴を上げ、それでも参号機ジャッジが腕に力を込めると、氷壁にひびが走る。


 押し返される。


「ッ……やはり力だけは」


 ネビュロスは舌打ちした。氷が限界まで軋む。


 だが——その一瞬で十分だった。


 ネビュロスは最短距離で距離を詰め、参号機ジャッジのバイザーを正面から見上げた。


「……聞こえているか、レクス・クレイド」


 声は低く、静かだった。


 氷壁が砕ける。参号機ジャッジの右腕が自由になり、刃が振り上げられる——


「かつて貴様は、カイに命じられる前、自分の意志で判断したことがあったはずだ」


 刃が落ちてくる。


「その判断が正しかったかどうかは関係ない。ただ——お前自身の頭で考えた、その一瞬が確かにあった」


 ネビュロスは紙一重で刃を躱し、プラットフォームの端まで飛び退いた。


 背後は奈落だ。一歩引けば落ちる。


 参号機ジャッジが、一歩、前に出る。


 そのバイザーの——奥が。


 ほんの一瞬、揺れた。


 ネビュロスはそれを、見逃さなかった。


「…………いる。まだいるな、レクス」


 蒼銀の甲冑から冷気が溢れ、床が一面の霜に覆われていく。


 魔導書が静かに開いた。


「なら——引きずり出す。たとえ貴様が嫌だと言っても」


(第12話へ続く)


今回はネビュロスと参号機ジャッジの因縁の対決が幕を開けました。痛覚すらシステムに封じられ、ただ命令を遂行する機械と化したジャッジの猛攻は、まさに純粋な暴力そのもの。以前のレクス・クレイドとは全く異なる、その異様な姿にネビュロスは何を感じたのでしょうか。


そんな中で、ネビュロスがジャッジの中に「レクス」の意志を見出そうと、静かに語りかけるシーンは、書いていて特に感情がこもりました。「かつて自分の意志で判断した一瞬があったはずだ」という言葉は、果たしてジャッジの奥深くに届くのか、それとも……。ネビュロスの「引きずり出す」という宣言がどう展開していくのか、今後の戦いにもご期待いただければ幸いです!


面白いと思っていただけたら、ぜひ下の★★★★★から評価をお願いします!ブックマークや感想も、執筆の励みになりますので、どうぞよろしくお願いいたします!それでは、また次話でお会いしましょう!

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