第3部 第7話『下降セクター:VS炎の承認(前編)』
【前回のあらすじ】
ジャスティスタワー中層で、ライガはカイを止めるため、魔王たちの援護を受けて先行した。死地から蘇ったグリム、ネビュロス、ヴェルミリオンの三魔王は、エルザの調整により《魔導外殻》を真価解放させ、圧倒的な力を手に入れる。しかし、計算外の進化に焦ったカイは、タワーのプラットフォームを垂直に分断。三人をそれぞれ孤立させ、連携を断つことで各個撃破を狙うのだった。
※本作品の執筆にはAIを活用しています。
ジャスティスタワー最下層、下降セクター。
轟音と共に、切り離された円形プラットフォームが螺旋階段の終端に激突した。
舞い上がる粉塵、断裂したケーブルから撒き散らされる青白いスパーク。
視界を奪う白煙の幕を切り裂くように、獣の唸り声が響いた。
「ガ……ァ……ッ!!」
四つん這いになった影が、軋む音を立てて身を起こす。
《Σ(シグマ)=機甲四騎》肆号機。
かつてのブレイズレッド――アシュレイ・クロムウェルを取り込み、生体CPUとして組み込んだ黒い悪魔だ。
その全身を覆う装甲は、魔族の生命エネルギーを極限まで濃縮したドス黒い「生き血」の色をしており、関節の隙間からは制御しきれないマグマのような排熱が涎のように垂れ流されている。
対する影は、漆黒。
ポルクの手によって修復・強化され、バイオカプセルでの細胞修復を終えた魔王グリムだ。
彼が纏うのは、《真・魔導外殻》。
以前の急造品とは違う。グリムの魔力特性に合わせて密度を高めた黒曜石の重装甲は、あたかも歩く火山のような威圧感を放っていた。
「……アシュレイ。お前、ほんまにそれで満足か?」
グリムが静かに問う。
その声は怒りを含んでいるが、どこか哀れみも帯びていた。
肆号機のバイザーが、不規則に明滅する。
喉の奥から漏れ出したのは、システムによって感情の波形を強制的に調律された、ノイズ混じりの歪な声だった。
『ヒャハ……! ヒャハハハハ……ッ!』
笑っている。
だが、それはかつてのような底抜けに明るい馬鹿笑いではない。
薬物で無理やり引き上げられたような、空虚な躁状態。
『ターゲット……確認。……いいねぇ、最高だ……!
「承認」なんざ不要だ……。俺は今、完璧な正義の「部品」として……誰よりも役に立ってる……最高に目立ってるだろ……?』
「……あ?」
『感じんだよ……脳みそが痺れるほどの「正義の快感」をよォ!
俺に役割を! 居場所を! この痛みも、恐怖も、全部が俺の輝きになるんだよォッ!!』
アシュレイは叫びながら、自身の頭をガンガンと拳で殴りつけた。
思考を放棄し、システムが垂れ流す快楽物質に溺れる姿。
それは戦士ではない。ただのジャンキーだ。
グリムの瞳が、侮蔑と激昂で細められる。
拳を握りしめると、装甲の隙間から赤い蒸気がシュウウゥゥと噴き出した。
「部品で満足できるほど、お前のツラは大人しくなかったはずや。
……力ずくで元に戻したるわ!!」
ドォォォンッ!!
グリムが地を蹴った。
足裏のスラスターから爆発的なマグマを噴射し、その推進力で黒い巨躯を砲弾へと変える。
「《紅蓮爆脚》!!」
一直線に迫る灼熱の飛び蹴り。
だが、肆号機の反応速度は異常だった。
『遅ぇよ、ノロマがァッ!!』
背中のブースターが火を噴く。
アシュレイの戦闘データを最適化した《爆炎推進》。
獣のような四足歩行の姿勢から、予測不能なジグザグ軌道で加速し、グリムの蹴りを紙一重で回避すると同時に、側面から襲いかかる。
『ヒャハハハハッ!! 潰れろォォォッ!!』
《爆熱・喧嘩殺法》。
型も何もない。頭突き、肘打ち、噛みつき、至近距離での爆発。
泥臭く、それでいて洗練された暴力の嵐がグリムを襲う。
ドカカカカァンッ!!
拳が触れるたびに指向性爆発を起こす《爆砕拳》が、グリムの胸板、脇腹、背中へと次々に叩き込まれる。
だが、グリムは一歩も引かない。
防御すらしない。ただ、仁王立ちで受け止める。
「効かんわボケェ!」
ジュウウゥッ!!
グリムの体表から溢れ出た溶岩が、着弾の瞬間に冷やされ、硬化する。
《黒曜鎧》。
ダイヤモンドに匹敵する硬度を持った黒曜石の被膜が、爆発の衝撃を拡散し、無効化していく。
『なッ……!? 硬ぇ……!!』
「今の俺は、「硬さ」も桁違いなんじゃ!
……調子に乗るなよ!!」
グリムの太い腕が、爆煙を切り裂いて伸びた。
肆号機の首元、その分厚い装甲を鷲掴みにする。
『ぐ、う……ッ!? 離せェッ!』
「逃がすか!」
グリムはそのまま腰を落とし、肆号機の身体を床へと叩きつける構えを取る。
右拳に全魔力を集中させる。
ドロドロとした溶岩が溢れ出し、拳を巨大な岩塊のように覆っていく。
「寝ボケた頭、叩き割ってやるわ!
オラァッ!!」
《紅蓮拳》。
質量と熱、そして怒りを乗せた一撃が、床に縫い付けられた肆号機の顔面に振り下ろされた。
ズガァァァァァァァンッ!!
。
肆号機の顔面装甲がひしゃげ、火花が激しく散る。
地面がクレーター状に陥没し、アシュレイの身体が瓦礫に埋まる。
「……ハァ、ハァ……。これで大人しくなったか?」
グリムが拳を振り払い、残心をとる。
だが、瓦礫の山から不気味な赤い光が漏れ出した。
『ア……ガ……! イイ……イイぞ……!』
肆号機がゆらりと起き上がる。
顔面の装甲は砕け、中の素顔が半分露出している。
鼻から血を流し、目は焦点が合っていない。
『痛ェ……痛ェけど、最高だ……!
脳みそが焼ける……! 正義の為に傷つく俺……カッコいいだろ!?
もっとだ……もっと俺を見ろォッ!!』
脳内に過剰分泌される「正義の快感」が、肉体の限界を無視して彼を突き動かす。
肆号機が叫びながら、ひび割れた床に拳を突き立てた。
『燃えろ、燃えろ!! 全世界のログに俺の輝き(ログ)を刻んでやるッ!!』
ゴゴゴゴゴ……ッ!!
地面が隆起し、裂け目から灼熱の光が溢れる。
アシュレイの代名詞とも言える大技。
「《灼熱噴火・火柱》!!」
ドッゴオオオオオオオオン!!
グリムの足元から、巨大なマグマの火柱が噴き上がった。
視野を埋め尽くす紅蓮。
だが、グリムはその猛火の只中で、一歩も退かなかった。
「……鬱陶しいんじゃあッ!!」
バリィッ!!
グリムが両腕を広げ、《真・魔導外殻》の剛腕で炎の壁を物理的に引き裂いた。
「認めろ? 誰にや!」
グリムの怒号が、隔離されたセクターに響き渡る。
炎をかき消し、アシュレイへ歩み寄るその足取りは、重く、そして確信に満ちていた。
「……誰かに褒めてもらうために振るう拳なんてな、中身がスカスカで全然痛ないんじゃ!
お前自身の熱で、勝手に燃え上がれや!!」
『あ……あぁ……!?』
肆号機の動きが止まる。
『ノイズ……検知……。俺は……俺は……!
うるせぇ……俺を見ろ……!』
不気味な電子ノイズと、アシュレイの悲痛な叫びが混ざり合い、戦場に木霊した。
(第8話へ続く)
いつもお読みいただきありがとうございます!
今回は、グリムとアシュレイ、かつての戦友同士の激しい激突を描かせていただきました。システムに感情を歪められ、「正義の快感」に溺れるアシュレイを、グリムが力ずくで「元に戻す」と意気込む姿はいかがでしたでしょうか?
今回のグリムはポルクの手で修復・強化され、以前とは一味違う「硬さ」と「重さ」でアシュレイに立ち向かいます。アシュレイの哀しいほどの狂気と、それを受け止めるグリムの怒りと哀れみ、そして強い思いを表現できていれば幸いです。この二人の戦いの行方がどうなるのか、ぜひ次話も楽しみにお待ちください!
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