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第3部 第3話『その少女は』

【前回のあらすじ】

タワー内部でカイが量産した《量産型執行官エコーズ》に襲われたライガたちは、敵が過去の戦闘データを学習していることに加え、スーツの損耗により窮地に陥る。そこでセイジは、魔力を犠牲にして「再変身」する危険な賭けを提案。万全の姿に戻った彼らは、執行官を圧倒し撃破。魔力を消費しながらも、カイとの決戦の地へと歩を進める。

 ※本作品の執筆にはAIを活用しています。



 ジャスティスタワー最上階、統合中枢コア。

 巨大なモニターには、先ほどまでライガたちを追い詰めていた量産型執行官エコーズが、眩い光の爆発と共に一瞬で塵へと変えられる光景が映し出されていた 。


「……馬鹿な。一度変身を解除して、背水の陣で再変身しただと?」


 ユナイトレッド(カイ)の指先が、コントロールパネルの上で微かに震えた。モニターを見つめるその瞳の奥には、冷静な仮面の裏側で、かつてない激しい動揺と同時に、奇妙な動欲が渦巻いていた。


(計算が合わない。再変身によるシステムの強制修復は、理論上可能だが、あんな土壇場で実行するなど……。なぜだ、なぜ彼らはそこまでして、私の『管理』を拒む!?)


 コンソールには『アーネストシティ計画:同期率80%』の文字が点滅している。完全統合まであとわずか。だが、その「わずかな時間」が、今のカイには永遠の苦行のように感じられた。


 カイは、誰もいないはずの隣に視線を向け、縋るように呟いた。

「……レヴェリオ。もう少しだ。……もう少しで、お前と交わした約束を、私が果たしてみせる」


 カイの意識は、遠い過去、地球での日々に沈んでいく。


 身寄りのなかったカイは、無機質な児童養護施設で育った。

 他の子供たちが外で泥にまみれて遊ぶ中、彼は常に図書室の隅で、自分よりも分厚い本の中に逃げ込んでいた 。彼にとって、他人とは「理解不能で騒々しいノイズ」でしかなかった。


 そんなある日。カイが図書室の古い鏡に映った自分の、虚ろな瞳を深く見つめていた時だった。


『何を見ているの、カイ? 』


 鏡越しに声が聞こえ、そこには一人の金髪の少女が立っていた。


「……君は誰だ? 僕に話しかけるなんて、珍しいね」


『私はレヴェリオ』


「そうか、レヴェリオ。僕はね……僕という存在がなぜここにいるのかわからないんだ。気づけばこの施設で育ち、親も知らない。周りの子の中へも溶け込めない。唯一の楽しみは読書だけだ。君も僕と喋るより、外で遊んできなよ」


『ううん。私はカイと喋りたいから声を掛けたんだよ』


 不思議な少女だった。しかし、カイはなぜか安堵に包まれた。


『あなたの知性は素晴らしいわ。周りの子供たちに溶け込めないのは、あなたが「真理」に近いからよ』


「……ッ!?」


 それは予期せぬ返答だった。本を読む自分を「変な子」だと嘲笑わず、全肯定してくれる存在。これ以降、レヴェリオはカイの隣に常に寄り添い、彼が本を読んで得た結論、大人たちへの不信、世界の理不尽のすべてを肯定し、共感してくれる唯一無二のパートナーとなった。


 カイが17歳になった頃。

 彼は、テレビやネットを通じて流れる世界の争い、不毛なバッシング、終わりのない対立に、激しい嫌悪感を抱いていた。


「なぜ、世界はこんなにも醜いんだ。なぜ争いはなくならない?」


 カイの隣に立つレヴェリオが、優しく囁く。

『それはね、カイ。みんながバラバラの「正義」を持っているからよ。不完全な個が集まるから、歪みが生まれるの。もし、世界にたった一つの「正しい秩序」があれば……誰も泣かなくて済むのに』


「……そうだね。僕たち以外、誰もそれを理解しようとしない。この世界は、あまりにノイズに満ちている」


「君の論文を読ませてもらったよ。……『感情の演算メロディによる排除と社会統合』。……実に見事だ。君なら、この醜い世界を管理する『システム』の設計者になれる。私の計画──『ジャスティスフェイス』を手伝わないか?」


 カイは男を冷たく一瞥し、隣にいるレヴェリオに視線を送ってから答えた。


「論文を読んでもらったのは光栄だが……あなたの計画に手を貸すのは理解できないな。僕は、他人に干渉されるのが嫌いだ」


「なぜだね?」 研究者は、カイが何もない空間に向かって頷く様子を観察しながら、静かに問いかけた。


「システムは純粋であるべきだ。人間という不確定なノイズが混ざる計画など、結局は今の社会の縮小再生産に過ぎない」


 研究者は、不敵な笑みを浮かべた。ここから、男はカイの精神の隙間に「統合」という名の甘美な毒を注ぎ込み始める。


「……ならば、君自身が『システム』になればいい。私の下で働くのではない。君が世界を『定義』するんだ。君が嫌うそのノイズ、不毛なバッシング、終わりのない争い……それらすべてを一つの巨大な演算メロディの中に統合し、沈黙させる。君が望む『誰も泣かないエデン』を、君の手で創る。……これこそが、真の『統合』だと思わないかね?」


「僕が……世界を定義する?」


「そうだ。君の内なる声(理想)が現実を塗り替えるんだ。君は『管理者アダム』として、この醜い世界を正解へと導く権利がある」


 カイの瞳に、見たこともない熱い光が宿った。 彼は研究者の語る「完璧な管理社会」という理想に、これまでにない高揚感を覚えた。吸い寄せられるように一歩踏み出す。


 その時。 カイのすぐ隣で、レヴェリオが悲しげに、しかし慈しむような微笑みを浮かべて彼を見つめていた。


 だが、今のカイの瞳に、彼女の姿は映っていない。 カイの意識は、目の前の研究者が提示する「巨大なシステム」と、自分が行使する「絶対的な力」に完全に支配されていた。


 レヴェリオは悟った。 これまでカイの孤独を埋めるためだけに存在していた自分という「幻想」は、もう彼には必要ないのだと。彼は自分という小さな支えを捨て、より強大で冷徹な「正義という名の装置」に依存することを選んだのだ。


 レヴェリオは、カイの肩にそっと触れようとしたが、その手を途中で止めた。 彼女は言葉もなく、静かにカイに背を向けると、陽炎のように揺らめきながら、図書室の奥の闇へと、自ら歩み去っていった。


 カイが研究者の手を取り、ジャスティスフェイスへの加入を決意したその瞬間── ふと我に返ったカイが隣を見た時、そこにはもう、誰の姿もなかった。

「レヴェリオ……? どこだ、答えてくれ!」


 いくら呼んでも、返事はない。


 カイにとって、レヴェリオが消えた後に残された「統合都市計画」という理想は、もはや単なる目的ではなかった。


「あの日、私が何を失い、何を託されたか。……お前にはわからない」

 要塞で、ライガに放ったその言葉。 カイにとってこの計画は、**「自分を全肯定してくれたレヴェリオを失って(犠牲にして)まで選んだ道が、絶対に間違いであってはならない」**という呪縛。すなわち、彼女に対する「贖罪」となった。



「……あの日の誓いは、今も変わっていない。レヴェリオ」



 ジャスティスタワー最上階。

 カイがふと隣を見ると、そこには冷たい床と光ファイバーが走る壁があるだけだった。

 同期率は82%。計画の完遂は目前だ。


「まもなく、ノクタリアの全市民が私の一部になる。……悲しみも、迷いも、醜い承認欲求すらも、すべてが統合波の中で消滅する救済だ」


 カイは冷徹な司令官の顔に戻り、モニターに映るライガたちを見下ろした。


「来なよ、不確定要素ノイズども。……僕とレヴェリオの、この静かな楽園を邪魔させるものか。私が……私が世界を『正解』にするんだ!!」



 彼の耳の奥には、もう聞こえなくなったはずの彼女の肯定の声が、今も幻聴のように響き続けていた


(第4話へ続く)

ここまでお読みいただきありがとうございます!今回の話では、ジャスティスタワーの支配者、カイの過去とその思想の根幹に掘り下げていきました。


彼がなぜこのような「管理」を望むのか、その背景には、孤独な幼少期と、彼を全肯定してくれた唯一無二の存在「レヴェリオ」との出会い、そしてその喪失がありました。カイにとって、レヴェリオは単なる友人ではなく、彼自身の存在意義を支える光のような存在だったことが、少しでも伝わったなら幸いです。


そして、彼女を失ってまで選んだ「統合都市計画」は、彼にとって「間違いであってはならない」という、ある種の呪縛。つまり、レヴェリオへの「贖罪」であると彼自身は考えています。彼がライガたちを「不確定要素ノイズ」と呼ぶのにも、深い理由があることを感じ取っていただけたでしょうか。


レヴェリオはカイにとってどんな存在だったのか、そしてなぜ彼女は姿を消したのか。その辺りも想像を巡らせていただけると嬉しいです。カイの「静かな楽園」を巡る戦いが、これからどうなっていくのか、ぜひ見守っていただければと思います。


もし、今回のカイの物語を少しでも楽しんでいただけたなら、ぜひ下の★★★★★から評価をお願いします!あなたの評価やブックマークが、今後の執筆の大きな励みになります。感想もお待ちしておりますので、ぜひ一言いただけると嬉しいです!

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