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第2部 第19話『漆黒のバトン、共鳴する罪と意志』

【前回のあらすじ】

激闘を繰り広げるグリムとライガ。自爆覚悟の猛攻にグリムは一度は倒れるも、母の言葉を胸に覚醒し、奥義《白炎断滅》でライガの洗脳を打ち破る。意識を取り戻したライガに、グリムは血まみれの顔で力強く微笑むのだった。

※本作品の執筆にはAIを活用しています。


空中要塞『ジャッジメント』の残骸が吐き出す重く黒い煙が、夜空へと立ち昇っていた。

激闘が繰り広げられていた間は爆炎で明るかった森も、決着がつき、静寂が訪れる頃にはいつの間にか深い夜に包まれていた。焦げ付いた土の臭いとオゾンの匂いが混ざり合う中、魔王グリムはライガ(バーニングレッド)を抱えたまま、ゆっくりとその場に膝をつき、崩れ落ちた。


「……ハァ、ハァ……。やれやれ、美しい幕引きとは程遠いね……」


瓦礫の陰で、ヴェルミリオンが力なく地面に腰を下ろした。常に彼を飾っていた妖艶な幻術は霧散し、紫の燕尾服はボロボロに裂け、片方の翅の意匠は根元から無残に折れ曲がっている。毒の過剰使用により、その陶器のような白い肌にはどす黒い血管が浮き上がり、激しい眩暈めまいが彼を襲っていた。


だが、それ以上に凄惨なのは、その傍らに横たわるグリムだった。

ライガを救うために放った『白炎ソウル・イグニション』の代償はあまりにも重い。魔導外殻マギア・シェルは完全に砕け散り、剥き出しの胸元には炭化したような火傷が広がっている。右腕を吊るした包帯は赤く滲み、一呼吸ごとに肺を焼くような激痛が走る。まさに満身創痍、生きているのが不思議なほどの状態だった。



「……グリム、ヴェルミリオン。無理に動くな、力尽きるぞ」


ネビュロスが静かな、しかし枯れた声で二人を制した。彼は外見こそ大きな負傷はないように見えたが、要塞の落下制御と大規模な空間凍結によって魔力を使い果たし、立っているのがやっとの枯渇状態にあった。


その時、重厚なエンジン音を響かせ、闇を切り裂くサーチライトが迫った。

現れたのは、無骨な装甲を纏った一台の輸送車。それは、地下アジト(旧ジャスティスフェイス遺棄施設)の奥に眠っていた「ガラクタ」を、ポルクが仲間のためにと密かに修理・魔改造し、かつてセイジらがアジトを襲撃した際に間一髪で入れ替わりに脱出して持ち出した、急造の移動式ラボであった。


中から、白衣を纏った二人の男女が飛び出してきた。


「グリム! みんな!」


ポルクが大きな丸眼鏡を激しく揺らし、泣きそうな顔で駆け寄る。しかし、彼はその場にいた三人のレッド――セイジ、レクス、アシュレイの姿を見て、悲鳴を上げてエルザの背後に隠れた。


「ジャ、ジャスティスフェイス……! なんで、ここに……っ!」


ポルクの震えは止まらない。アジト脱出時は入れ違いだったため直接顔を合わせてはいないが、彼にとってレッドたちは「カイの仲間」であり、一瞬で施設を破壊し、自分たちを「素材」として扱ってきた組織の最強戦力だ。技術者としてその圧倒的な破壊力を知っているからこそ、本能的な恐怖が彼を支配していた。


「……待って。彼らから殺気は感じられないわ」


エルザの視線が、ボロボロになりながらも立ち上がったライガに向けられる。ライガは眩しそうに目を細め、彼女たちを見つめ返した。


「君たちは……あの時の。……兵器開発局の地下に閉じ込められていた研究員か」


「……気づいたのね。あの時は助けてくれて、本当にありがとう。私はエルザ・ブラントよ」


エルザが凛とした声で礼を述べると、その背後からポルクも恐る恐る、しかし必死に声を絞り出した。


「あ、あの……俺からもお礼を言わせてください! ポルクです。あの時、あなたが気づいて助けてくれなかったら、僕らは今頃……。本当に、ありがとうございましたっ!」


ライガは一瞬虚を突かれたような顔をしたが、すぐに自嘲気味に微笑んだ。


「礼を言われる筋合いはない。俺は……ライガだ。……すまなかった。俺たちが君たちの居場所を奪い、追い詰めた。……償いの機会をくれ。まずは、俺を救ってくれたこの三人の魔王を助けたいんだ」


ライガは深く、頭を下げた。かつての傲慢なリーダーではない。友を想う一人の男の姿に、エルザは小さく頷いた。


「……謝罪は受け取ったわ……でも今は、この子たちを救うのが先。ポルク! ぼさっとしないで、カプセルのハッチを開けなさい!」


エルザはライガの謝罪を短く受け流すと、すぐさま指示を飛ばした。


ポルクが装甲車のバックドアを開けると、そこには急造された三基のバイオカプセルが鎮座していた。「重くて僕一人じゃ無理です。手伝ってください!」というポルクの訴えに、ライガが真っ先に手を貸し、他のレッドたちも動いた。


セイジレッドは、カプセルの構造をじっと見つめ、分析官としての本能で問いかけた。

「ポルク、この装置の仕様を確認したい。ジャスティスフェイスの技術を逆位相に転用しているのか?」

ポルクは眼鏡を直し、専門分野特有の早口で解説する。

「は、はい! ジャスティスフェイスの生体同期技術をハッキングして、魔族の不安定な魔力波形を強制的に安定させ、肉体と《魔導外殻マギア・シェル》の損傷を細胞レベルで修復するんです」


巨漢のレクス(ジャッジレッド)は、かつての傲慢さを捨て、ボロボロのグリムたちを丁寧に、壊れ物を扱うように抱え上げてカプセルへと運び込んだ。

一方、アシュレイ(ブレイズレッド)は一言も発さず、三人の中で最も無気力な様子で、機械的にケーブルを運んでいた。


かつての加害者が被害者の指示に従う、歪な、しかし誠実な共闘がそこにはあった。


---


急造の移動ラボ内、青白いバイオカプセルに横たわるグリムが、酸素マスクを付けられる直前、薄れゆく意識の中でライガを見つめた。


「……ライガ。……ベタベタした関係は、柄やない。俺は魔王で、お前はヒーロー。……その立場は、変わらへん」


グリムは血の混じった唾を吐き捨て、不敵に笑おうとした。


「せやけど、これからはただの敵やない。……ライバルとして、友として、その腐った性根を、何度でも殴りに行かせてもらう。……ええな」


ライガは静かに頷き、カプセルのガラス越しに拳を重ねた。


「ああ。……今度は、俺が殴られっぱなしにはならない。約束だ、グリム」


二人の拳が重なったその瞬間、それは魔王からレッドへと渡された、本当の『正義』のバトンとなった。


「……感動のとこ悪いけど、状況は最悪よ」


エルザが割り込むように、車内のモニターをライガたちに突きつけた。画面にはジャスティスタワーを中心に、禍々しく脈動する赤い波紋が映し出されている。


「カイが『アーネストシティ計画(統合都市計画)』を完全起動させたわ。このまま統合波が最大出力に達すれば、ノクタリア中の人々の意識がネットワークに吸い込まれ、二度と自分に戻れなくなる」


「魔王たちの容体はどうなんだ?」


ライガの問いに、本来の分析官であるネビュロスに代わり、セイジレッドがモニターのログを鋭く読み解いた。


「……バイオカプセルによる急速回復を行っているが、魔力波形の乱れが酷すぎる。細胞レベルでの損傷を修復し、バイタルが正常値に戻るまで、少なくとも数時間は動けないだろう」


「カイを止められるのは、システムへのアクセス権をまだ僅かに保持している……俺たちだけだ」


ライガは決然と、闇夜の向こうを見据えた。


「先行する。魔王たちはここで休んでもらう。あいつらは、俺たちを救うために命を削ったんだ。……次は、俺たちがアイツらを守る番だ」


ポルクが駆け寄り、レッドたちの腕に装着されたサング《変身ブレス》の側面にあるスロットへ、銀色の小さな円筒――予備の魔力カートリッジを次々と差し込みながら、必死に訴えた。


「皆さんのサング(変身ブレス)は、既にカイのメインサーバーからアクセス拒否(BAN)されています! 本来ならもう魔力供給が止まっているはずですが、このカートリッジには僕が遺棄施設から回収した魔族の精製エネルギーが詰まっています。これを直結させれば、オフラインでも戦える……いわば、外付けの命です! タワーの外壁には、僕たちがここから遠隔ハッキングでバックドアを開けます! でも、中だけは……あなたたちがやるしかないんです!」


「了解した。……あいつらは、命を削ってまで俺たちを救ってくれた」


ライガが、包帯の巻かれた拳を強く握りしめる。


「俺はもう迷わない。組織のリーダーでも、ジャスティスフェイスの一員でもなく、一人の『人間』として、カイを殴りに行く。あいつに預けたままの俺たちの意志を、力ずくで取り戻すんだ」


その隣で、セイジが自分のサング(変身ブレス)のエネルギー残量を確認し、眼鏡を押し上げた。

「私のこれまでの計算は、常に『損切り』を前提とした冷酷なものでした。ですが、今の私の演算には、データ化できない『感情』という変数が不可欠です。カイが作り上げた歪んだ秩序プログラムを、私自身の意志で上書きして見せます」


巨漢のレクスは、かつて自分を守るための盾だった大剣を、重々しく背負い直した。

「法やルールを、責任から逃げるための仮面にしてきた自分を、俺は一生許さないだろう。だが、だからこそこの剣を振るう。誰かに与えられた断罪ではなく、自分自身の罪を背負い、守るべきものを守るために」


そして、最後に残った一人。

アシュレイ(ブレイズレッド)は無言のまま、新調されたカートリッジの冷たい感触を確かめ、低く唸るような呼気を吐いた。その瞳は、静かな怒りを宿していた。


「行こう。……夜が明ける前に、すべてに決着をつける」


漆黒の闇の中、四人のレッドたちが走り出した。

急造の移動ラボに守られた命の恩人たちの気配を背に、もはや組織の駒ではない、一人の人間としての光をその背中に宿して。


(第20話へ続く)

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


激戦の幕が閉じ、ジャッジメントの残骸が吐き出す煙が夜空に消えていく中、物語は新たな局面を迎えました。満身創痍の魔王たち、そして駆けつけたポルクとエルザ、さらには因縁のレッドたち。様々な立場と思惑が交錯する中で、ついに「歪な、しかし誠実な共闘」が始まります。

特にグリムとライガ、長きにわたる宿敵同士が、まさかこんな形で「拳」を交わし、新たな「約束」を交わすことになるとは……彼らの行く末にどう影響するのかも、ぜひ注目していただけると嬉しいです。


そして、カイの『アーネストシティ計画』がいよいよ最終段階へ。ノクタリアの命運をかけた戦いは、いよいよ佳境へと入っていきます。

次なる展開も、どうぞお楽しみに!


もし「面白かった!」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ下の★★★★★から評価をいただけますと大変励みになります。ブックマークや感想もお待ちしております!

それでは、また次話でお会いしましょう!

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