第2部 第18話『赤き絶唱、魂の咆哮(後編)』
【前回のあらすじ】
ライガの技で満身創痍となりながらも、決して諦めずに立ち向かうグリム。その『非効率な熱』は、氷から解放されたセイジをはじめ、レクスやアシュレイたちが信じてきた『正義』を揺るがし、彼らが切り捨ててきた『感情』の真の価値を突きつける。敵であるはずのグリムの泥まみれの輝きは、傍観者だったネビュロスやヴェルミリオンをも深く感動させるのだった。
※本作品の執筆にはAIを活用しています。
「障害……ハイジョ……」
ライガは止まらない。
全身に炎を纏い、弾丸のように一直線に突っ込んでくる。
《炎の突撃》。
障害物を溶解させながら貫通する、殺意のタックルだ。
「ナメるなボケェッ!!」
グリムは足裏からマグマを爆発的に噴射し、その推進力で空へ跳躍する。
《紅蓮爆脚》。
空中での軌道修正を行い、突っ込んでくるライガの頭上から踵落としを叩き込む。
ガギィィィン!!
ライガの肩口に直撃するが、赤い装甲はびくともしない。
逆に、ライガの体表温度が急上昇し、グリムの足を焼く。
「熱ッ……! クソ、硬すぎるわ!」
グリムは着地と同時に、渾身の力を込めて拳を握る。
溶岩の質量と熱を乗せた、重い一撃。
「《紅蓮拳》!!」
ドスッ!!
グリムの拳がライガの腹部にめり込む。
装甲が溶け、陥没する手応え。
だが、ライガは揺らがない。
先程まで冷静だったライガは、また獣のように叫ぶ。
「ウガアアアアアアッ!! 燃エロ……燃エロオォォッ!!」
ライガは咆哮する。
無機質なシステム音声はノイズにかき消され、ただ破壊衝動だけが彼の喉を震わせている。
全身から噴き出す熱波が、防御壁などではなく、触れるもの全てを蒸発させる拒絶の嵐となって周囲を薙ぎ払う。
《熱波防御》――否、それは防御と呼ぶにはあまりに暴力的すぎた。
「熱ッ……! 近づけへん……!」
グリムの追撃が、その熱の壁に阻まれ、皮膚が焦げる音と共に弾かれる。
「ハイジョ……ハイジョ……!!」
ライガの背中の排熱ダクトが、悲鳴のような音を立てて真紅に輝く。
リミッターなどとうに吹き飛んでいる。
全身の血管が沸騰するほどの熱量を無理やり循環させ、一点に集中させる捨て身の構え。
《燃焼全開》。
「その技は……お前自身も壊れるぞ! やめろライガ!!」
グリムが叫ぶが、獣と化したライガには届かない。
彼はただ、目の前の敵を焼き尽くすことしかプログラムされていない。
「オオオオオオオッ!!」
自爆覚悟の特攻。
「上等や……! なら、俺も全部出し尽くしたる!」
グリムが吠える。
残った魔力を全て絞り出し、怒涛のコンビネーションを繰り出す。
「《焔魔王連撃・不知火》!!」
右拳、左拳、鋭い肘打ち、そして膝蹴り。
一撃を叩き込むごとに、《魔導外殻》から溢れ出したドロドロの溶岩が火花と共に飛び散り、ライガの装甲を無慈悲に侵食していく。
閻魔の如き容赦なさと魔王の破壊力を込めた怒涛のコンビネーション。
最後の一打は、空中で身体を反転させた強烈な回し蹴りが炸裂する。
蹴りと共に放たれた極大の熱量が炎の渦(不知火)となり、ライガを灼熱の檻の中に葬り去った。
だが、ライガは止まらない。
全ての攻撃を肉体で受け止めながら、ただ一撃、必殺のカウンターを狙っている。
そして――
ドォォォォォン!!!!!
ライガの《燃焼全開》が、炎の渦(不知火)を強引に突破し、その胸板を捉えた。
圧縮された絶望の熱量が、グリムの胸板を貫通せんばかりの衝撃で捉える。
「が、はッ……!」
《魔導外殻》は粉砕され、グリムは瓦礫の中へと崩れ落ちた。
視界が急速に暗転し、皮膚を焼く熱い風さえ遠のいていく。
(……ああ、俺は、また守れへんのか……)
グリムが崩れ落ちる。
視界が明滅する。身体が動かない。
ライガがゆらりと、倒れたグリムを見下ろす。
その足が、グリムの頭を踏み潰そうと持ち上がる。
死の直前、グリムの脳裏に「あの日」の情景が蘇る。
燃え盛る故郷。
壁を焼き切り、自分を逃がそうとする母の背中。
内側からの炎で崩れながら、母は最期に微笑んで言った。
『生きなさい、グリム。力は……人を傷つけるためじゃなく、守るためにあるのだから……』
(守るための……力……?)
目を見開くと、目の前には自分を踏み潰そうと足を上げるライガがいた。
だが、グリムは見た。
砕けたバイザーの奥、血の涙を流しながら、泣き叫んでいるライガの魂を。
「……アホくさ。……ほんま、お前は不器用な奴やな」
グリムは血を吐き捨て、ふらりと立ち上がった。
母から託された「守る意志」。
10年間、復讐のために燃やし続けた「漆黒の怒り」。
正反対の二つの熱が、ライガを救いたいという一点で混ざり合い、臨界点を超える。
ドクン!!
「正義のために自分を殺すのが正しいっちゅうなら……そんな正義、俺が全部焼き尽くしたるわ!!」
カッ!!
赤黒い憎悪の炎が内側から食い破られ、純白の輝きへと昇華する。
熱量ではない。概念すら焼き払う、浄化の光。
――覚醒奥義《白炎断滅》
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」
本能的な恐怖を感じたライガが最大火力の熱線を放つが、白炎を纏ったグリムは止まらない。
熱線を正面から「燃やし尽くし」、一歩、また一歩と距離を詰める。
グリムの拳が、ライガの懐へと深く沈み込む。
「ライガ! お前の名前は……システムの一部やない!
狙うはライガの胸板――かつて守れなかった少女の形見であり、今の彼を縛る鎖となったドッグタグ。
「一人の、人間の名前やろがい!!」
ズドォォン!!
白き拳がドッグタグの真上を撃ち抜く。
物理的な衝撃と共に、白炎がライガの体内に侵入。
神経回路にこびりついた「正義という名の依存症」と「洗脳プログラム」を、黒いノイズごと蒸発させていく。
「が、あ……ぁぁぁぁ……ッ!!」
ライガの背中からどす黒い煙が噴き出し、傀儡のプログラムが断末魔を上げる。
光が収まると、そこには元の、雨上がりの空のようなブラウンの瞳を取り戻したライガがいた。
「……グリム……?」
「おう。……おはようさん」
血と煤にまみれた顔で、グリムは母の教えを胸に、誇らしく笑った。
(第19話へ続く)
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます!
グリムとライガ、互いの全てをぶつけ合うような激しいバトル、いかがでしたでしょうか。グリムが「守るための力」に覚醒し、復讐の炎を乗り越えてライガを救い出す展開に「アホくさ。……ほんま、お前は不器用な奴やな」というセリフからの一連の流れは、グリムの大きな成長を感じさせる重要なシーンになったかと思います。
そして、ライガに向けられた「お前の名前は……システムの一部やない! 一人の、人間の名前やろがい!!」というグリムの叫び。これは、ライガの呪縛を解き放つための、彼自身の魂からの言葉でした。
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次回、いよいよ物語は第19話へ。引き続きお楽しみいただけると嬉しいです!




