第2部 第9話『紅蓮の暴走、崩れゆく天空』
【前回のあらすじ】
ライガの記憶が消滅するまであと3時間。グリムたちはバーニングレッドを救うため、聖断空母ジャッジメントへの潜入を敢行する。ポルクのハッキングと仲間たちの能力を駆使して最深部へ辿り着いた彼らを待っていたのは、宿敵カイ・レグリオ。彼はライガを「兵器」として強制執行し、ライガは理性を失い暴走する破壊の化身と化したのだった。
※本作品の執筆にはAIを活用しています。
「ガ、ア……アアアアアアアアアッ!!!」
獣の咆哮が、鋼鉄の密室を震わせた。
カプセルを内側から食い破り、飛び出した紅蓮の影――バーニングレッド。
だが、その姿にかつての「頼れるリーダー」の面影は微塵もなかった。
全身から噴き出す炎は、スーツの排熱機構の限界を超え、彼自身の装甲すらも赤熱させ、歪ませている。
制御を失った熱量は、周囲の空気を瞬時にプラズマ化させ、触れるものすべてを灰へと変えていく。
「ライガ……! おい、正気か! 俺やぞ、グリムやぞ!!」
グリムが叫び、灼熱の嵐の中へ踏み込もうとする。
だが、ネビュロスがその襟首を掴んで強引に引き戻した。
「馬鹿か! 近づくな! 今のあいつは歩く原子炉だ、触れれば蒸発するぞ!」
「離せ! あいつが……あいつが壊れそうなんや!!」
グリムには分かっていた。
暴走する破壊衝動の奥底で、友の魂が悲鳴を上げているのが。
泣いているのではない。自分が自分でなくなっていく恐怖に、必死に抗っているのだ。
暴走したバーニングレッドが、虚ろなバイザーをゆっくりと巡らせる。
その視界に映るものは「敵」か「破壊対象」でしかない。
「ハイジョ……対象、ハイジョ……」
機械的な音声と共に、彼の右腕が振り上げられた。
ガントレットから圧縮された熱線が放たれる。
狙いはグリムたち――ではなく、部屋の隅にある動力パイプだった。
ドォォォォォン!!
爆音と共に隔壁が吹き飛び、要塞の血管とも言えるエネルギーラインが寸断される。
警報音がけたたましく鳴り響き、照明が赤く明滅を始めた。
『警告。動力炉、出力低下。生体調整室にて火災発生。隔壁閉鎖シークエンス、作動しません』
無機質なアナウンスが、要塞の死を告げる。
「チッ……。やはり調整不足か。制御不能な力など、ゴミ同然だ」
コンソールルームの高みから、その惨状を見下ろす男がいた。
ユナイトレッド――カイ・レグリオ。
彼は目の前で友人が怪物に変わり果てたというのに、眉一つ動かさず、ただ「実験の失敗」を悔やむように舌打ちをした。
「カイ! テメェ、何してやがる! 止めろ! ライガを元に戻せ!!」
グリムが炎の壁越しに怒号を浴びせる。
カイは冷淡な視線をグリムに向け、フンと鼻を鳴らした。
「戻す? 不可能だ。
彼の人格データは既に断片化している。今の彼は、ただ暴れまわるだけのエネルギーの塊……言うなれば、時限爆弾だ」
カイは懐から端末を取り出し、手早く操作する。
「この要塞もろとも廃棄する。
……私は『ジャスティスタワー』へ向かう。ここでのデータがあれば、タワーの起動は前倒しできるだろう」
「逃げる気か! 仲間を見捨てて!!」
「仲間ではない。『部品』だと言ったはずだ。
役目を終えた部品に固執するのは、非効率な感傷に過ぎない」
カイの背後で、脱出用エレベーターの扉が開く。
彼は一度もライガの方を振り返ることなく乗り込んだ。
まるで、壊れた道具を焼却炉に捨てるかのように。
「さらばだ、魔王たち。
崩れゆく正義の墓場で、仲良く燃え尽きるといい」
プシュウゥ……。
扉が閉まり、カイの姿が消える。
「待ちやがれェェェッ!!」
グリムが炎を噴射して追いかけようとした瞬間、目の前に真紅の壁が立ちはだかった。
暴走したバーニングレッドだ。
「ウアアアアアアアッ!!」
言葉にならない絶叫と共に、ライガの拳がグリムに叩き込まれる。
咄嗟に防御したが、その威力は桁違いだった。
「ぐはッ……!?」
グリムの体が砲弾のように吹き飛び、鉄の壁にめり込む。
《魔導外殻》を展開していなければ、即死していただろう。
「グリム!」
「いけないねぇ、完全に我を忘れているよ」
ヴェルミリオンが幻影の鎖を放ち、ライガの動きを封じようとする。
だが、鎖はライガの身体から発せられる高熱によって、触れた瞬間に霧散してしまう。
「幻術が効かない!? 熱量が高すぎて魔力構成が維持できないのか!」
「物理的に冷やすしかないか……!」
ネビュロスが氷の槍を連射するが、それすらもライガに届く前に蒸発し、白い蒸気となって消える。
圧倒的だった。
理性を捨て、リミッターを解除した「正義の炎」は、魔王たちの力をもってしても止められない災害と化していた。
ズズズズズ……ン!!
突如、要塞全体が大きく傾いた。
床が斜めになり、固定されていない機材が滑り落ちていく。
『警告。高度維持システム、機能停止。重力制御ユニット、応答なし。
本艦はこれより、墜落軌道へ移行します』
「墜落……だと!?」
ポルクの悲鳴がインカムから響く。
『まずいです! メインエンジンが暴走したバーニング隊長の熱で溶かされました!
このままじゃ、あと十分もしないうちに地上へ激突します!』
「十分……! まずい逃げるぞ、グリム!」
ネビュロスが叫ぶ。
「嫌や!!」
グリムは壁から体を引き抜き、血を吐き捨てながら叫び返した。
「あいつを置いていけるか! 連れて帰るって約束したんや!
ここで見捨てたら、俺はただの口だけの『悪党』に成り下がる!」
グリムはふらつく足で、再び炎の怪物へと歩み寄る。
その目は、恐怖ではなく、燃え盛るような意地で満ちていた。
「ライガ……! とっとと目ェ覚ませや、このボケェッ!
お前が俺を止めるんやろ! こんなとこで終わってええんか!!」
グリムが両手を広げ、炎を受け止める覚悟を見せる。
「……はぁ、本当に馬鹿だね」
ヴェルミリオンが呆れたようにため息をつく。
だが、その視線は冷たくない。
「心中ごっこに付き合う気はないよ。僕たちは生き残らなきゃいけない。
……でも、君を置いていくわけにもいかないね」
ヴェルミリオンは素早く周囲を見回し、脱出する算段を確認する。
「ネビュロス、ハッチを確保してちょうだい! グリムを無理やりでも連れ出すよ!」
「承知した!」
ネビュロスが氷でハッチを固定し、退路を作る。
ヴェルミリオンがグリムの腕を掴もうとした、その時だ。
ドガァァァン!!
要塞の外壁が外側から爆破され、突風と共に三つの赤い影が、地獄と化した戦場へ飛び込んでくる。
蒼き光を放つ双剣を逆手に構えた影。 真紅のスーツの上に黄金の重装甲を軋ませ、鉄色の巨大な処刑剣を担いだ影。 そして、両拳にドロドロとしたマグマを宿した影。
地上から緊急転送で舞い戻ったセイジ、ジャッジ、ブレイズの三人は、崩壊する天井を背に、変わり果てたリーダーの姿を目の当たりにする。
彼らはカイの命令で魔王のアジト(地下水道)を急襲していたが、そこはもぬけの殻だった。
直後、空母から放たれる異常な熱量と爆発を感知し、作戦を中断して全速力で戻ってきたのだ。
「何だこの熱気は……! おい、バーニング! 無事か!?」
ブレイズが叫ぶ。
だが、彼らが目にしたのは、炎を撒き散らす怪物と化したかつての仲間と、それに対峙する魔王たちの姿だった。
そして、カイの姿はどこにもない。
「状況確認。……バーニングの生体反応、レッドゾーンを突破。暴走状態と認定」
セイジが冷静さを欠いた声で分析する。
「カイの反応消失。……まさか、魔王たちに排除されたのか?」
「貴様ら魔王の仕業か……! アジトを空にして、その隙にここを襲うとは!」
ジャッジが大剣を構え、グリムたちを睨みつける。
状況証拠は真っ黒だ。アジトには誰もいなかった。空母は破壊されている。そしてバーニングは暴走させられている。
彼らには、「カイがやった」などという発想は微塵もない。
「違う! あいつは……!」
グリムが否定しようとした瞬間、暴走したライガが咆哮を上げ、無差別に炎弾を撒き散らした。
「ウガアアアアアッ!!」
「なッ!? バーニング、俺たちだぞ! ブレイズだ!」
「識別信号、認識不能……! 今のバーニングは、無差別に周囲を攻撃する暴走状態だ!」
味方であるはずのレッドたちにも、容赦ない炎が襲いかかる。
混乱する戦場。
傾く床。
崩壊する天井。
そして、窓の外には――急速に迫りくる地上の景色が見えていた。
「……落ちるぞ!!」
誰かの叫び声と共に、巨大な要塞は断末魔のような軋みを上げながら、雲海の下へと堕ちていった。
(第10話へ続く)
第2部 第9話『紅蓮の暴走、崩れゆく天空』をお読みいただき、ありがとうございます!
今回はタイトルにもある通り、バーニングレッドの圧倒的な「暴走」と、それに伴う要塞の「崩壊」が描かれました。理性を失い、すべてを焼き尽くす災害と化したライガの姿は、まさしく「歩く原子炉」。グリムたちの力をもってしても止められない絶望的な状況と、要塞の墜落というスペクタクルな展開に、執筆していて思わず手に汗握ってしまいました。
特に注目していただきたいのは、暴走するライガの奥底から聞こえる「悲鳴」を感じ取るグリムのシーンです。目の前の怪物が友であるという確信、そして「連れて帰る」という約束を守ろうとする彼の強い決意が、この物語の核心にある「絆」を描いていると感じています。そして、その対極にいるカイの冷徹さ……彼らが今後どのように対峙していくのか、ぜひご期待ください。
残された時間が迫る中、彼らはこの絶望的な状況を乗り越えられるのか? そして、ついに姿を見せたジャスティスフェイスの残存部隊は、味方となるのか、それとも……? 次回の第10話も、ぜひお楽しみに!
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それでは、また次話でお会いしましょう!




