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第2部 第5話『歪な歯車、冷たい赤』

【前回のあらすじ】

魔王たちが反撃の狼煙を上げた頃、ジャスティスフェイスの本部では、不穏な静寂が支配していた。

※本作品の執筆にはAIを活用しています。


聖断空母ジャッジメント、最深部ドック。

培養液のような液体に満たされたカプセルの中で、ライガ(バーニング)は眠っていた。

全身に無数の管が繋がれ、脳に直接データが書き込まれていく。


その異様な光景を、ガラス越しに見つめる三人の男たちがいた。


「……おい。これは何の冗談だ?」

アシュレイ(ブレイズ)が、震える声で呟く。

「再教育って聞いたぞ。こんな……脳みそ弄り回して、あいつを何にするつもりだ!?」


彼はガラスを叩く。

かつては「派手に暴れられればいい」と思っていた。だが、目の前のこれは違う。

「俺たちはヒーローだろ!? 誰かに『すげぇ』って言われるために戦ってるんじゃねぇのかよ!

こんな……自我もねぇ人形になって、誰が俺たちを称えてくれるんだよ!」


彼の叫びは、空虚なドックに木霊するだけだ。

承認欲求の塊だった彼にとって、「個人の意志エゴ」を奪われることは、死よりも恐ろしいことだった。


「……静かにしろ、アシュレイ」

レクス(ジャッジ)が制止するが、その声も重く沈んでいる。

「これは『決定事項』だ。我々に拒否権はない」


「お前はそれでいいのかよ! 法だの秩序だの偉そうに言って、結局は言いなりか!?」

「ッ……!」

レクスは言葉を詰まらせる。

グリムに言われた「思考停止」という言葉が、呪いのように蘇る。

(私は……また、見ないふりをするのか? 友が壊されていくのを、ただ黙って……)


その横で、セイジは無言で端末を操作していた。

「……感情野の活動、ほぼ停止。戦闘ロジックのみが上書きされています」

淡々とした報告。だが、その指先は微かに震えていた。

「非効率です。個人の判断能力を奪えば、不測の事態に対応できない。

……カイのやり方は、あまりに焦りすぎている」


彼らは気づいていた。

この組織が、そして自分たちが信じてきた「正義」が、狂い始めていることに。

だが、誰もそれを止める勇気を持てなかった。


「――議論は終わりか」


背後から、冷徹な声が響く。

カイ(ユナイト)だ。その瞳は、かつての親友であるライガを見ても、一片の揺らぎも見せない。


ライガは生まれ変わる。

私情を捨て、完璧な正義を執行する『システム』としてな。

……君たちも、彼を見習うといい」


その言葉に、三人は戦慄した。

次は自分たちの番かもしれない。そんな無言の圧力が、彼らを支配していた。


「出撃だ。魔王たちの居場所が割れた」

カイが、羽織っていた将官用の白いロングコートを翻す。

その背中は、かつて共に夢を語った親友のものではなく、冷酷な独裁者のそれだった。

「新生バーニングレッドの初陣だ。……遅れるなよ」


カプセルの液体が排出され、ライガが目を開く。

その瞳は、深淵のように暗く、何も映していなかった。


アシュレイは吐き気を堪え、レクスは拳を握りしめ、セイジは目を伏せた。

バラバラになりかけた歯車が、恐怖という油で無理やり回され始める。


彼らは空母を飛び立つ。

その背中には、かつてのような誇りはなく、ただ重い「鎖」だけが絡みついていた。


(第6話へ続く)

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