第21話『決別の赤、そして』
【前回のあらすじ】
組織の闇を知り、魔王たちと共に死地を脱出したライガ。
彼は全ての元凶であるカイ(ユナイト)を問いただすため、ボロボロのスーツのまま、聖断空母ジャッジメントへと帰還する。
※本作品の執筆にはAIを活用しています。
聖断空母ジャッジメント、最上層司令室。
重厚な扉が開き、ライガ・アランが足を踏み入れた。
変身を解除する余裕すらなかった。装甲は砕け、煤と血にまみれた満身創痍の姿。
だが、その瞳だけはかつてないほど澄んでいた。
「戻ったか」
デスクの奥で、カイ・レグリオは顔も上げずに言った。
「兵器開発局の消失は確認した。……侵入者(魔王たち)は始末したのか?」
「……逃がしたよ」
ライガは静かに答える。
「いや、あいつらに助けられたと言うべきか」
カイの手が止まる。
ゆっくりと顔を上げ、冷徹な瞳でライガを見据えた。
「何の話だ」
「とぼけるな。あそこで行われていた実験のことだ。
魔族を生体部品にする……あんな非道な真似をしてまで、俺たちは何を守ろうとしていたんだ?」
「……見たのか」
カイは表情一つ変えずに立ち上がった。
「ならば話は早い。あれは必要な犠牲だ。
魔族という危険因子を、管理可能な『力』へと変換する。これこそが最も合理的で、無駄のない平和維持システムだ」
「ふざけるな!!」
ライガが叫び、拳をデスクに叩きつける。
「命を部品扱いすることの、どこが平和だ!
俺たちが目指したのは、誰もが笑って暮らせる世界だったはずだろ!
お前のやり方は……ただの独裁だ!」
「独裁で構わない」
カイは淡々と告げる。
「愚かな大衆には、導く者が必要だ。
完全な管理下でしか、恒久的な平和は訪れない。
……ライガ、お前は感情論で理想を語るが、現実はもっと冷酷だ」
カイが指を鳴らすと、司令室のモニターが一斉に切り替わった。
映し出されたのは、『統合都市アーネストシティ』の完成予想図。
人々が同じ服を着て、同じ時間に起き、同じ思想を植え付けられて生活する、巨大な管理社会の縮図。
「これが私の答えだ。
個性を消し、思想を統一すれば、争いは起きない。
誰も傷つかない世界が完成する」
「……それがお前の正義か」
ライガは拳を握りしめ、震える声で問う。
「俺たちの友情も、あの日の誓いも……全部、このシステムのための踏み台だったのか?」
「感傷は捨てろと言ったはずだ」
カイが背を向け、手元のコンソールを操作した。
「私についてこられないなら、ここでお別れだ。
……システム、権限剥奪(アクセス拒否)。対象:バーニングレッド」
『了解。変身システムを強制解除します』
無機質なアナウンスと共に、ライガの身体から力が抜ける。
スーツが光の粒子となって霧散し、ボロボロの生身が晒された。
「なッ……!?」
「お前はもう、ジャスティスフェイスではない。ただの無力な人間だ」
カイは冷たく言い放つ。
「消えろ、ライガ。二度と私の前に現れるな」
拒絶。そして無力化。
かつての親友からの、完全なる絶縁宣言。
だが、ライガは膝をつかなかった。
むしろ、その瞳には新たな炎が宿っていた。
「……違うな」
ライガは、腕に残った変身ブレス(通信機)を強く握りしめた。
システムはオフラインを示している。だが、彼の魂はまだ燃えている。
「俺は……組織の力で戦っていたんじゃない。
守りたいものがあるから、戦えたんだ!」
バチッ、バチバチッ……!
死んだはずのブレスから、赤い火花が散る。
ライガの熱い想いが、システムの制御を凌駕し、回路を焼き切って再起動させる。
『エラー。エラー。……強制接続』
「俺の正義は……俺が決める!!」
ライガは叫び、ブレスを天に掲げた。
「ジャスティス・チェンジ!!!」
爆発的な紅蓮の光が、司令室を染め上げる。
光の中から現れたのは、傷一つない真紅のスーツ。
バーニングレッド。
だが、その姿は以前とは違う。胸のエンブレムが、より激しく、荒々しい炎の形に輝いている。
「……システムを、気合でねじ伏せたか」
カイもまた、懐から変身デバイスを取り出す。
その口元には、微かに皮肉な笑みが浮かんでいた。
「いいだろう。不適合者は、私が直接排除する。
……ジャスティス・チェンジ」
銀色の光が奔流となる。
ユナイトレッド。
その背中には六枚の光翼が展開し、神々しくも冷酷な輝きを放っている。
「行くぞ、カイ!!」
「来い、ライガ!!」
司令室で、赤と銀が激突する。
かつて背中を預け合った二人が、今は互いの信念を懸けて殺し合う。
爆炎と重力波が交錯し、ジャスティスフェイス最強の二人の戦いが幕を開けた。
(第22話へ続く)




