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第2話『悪の名に誓って』

※本作品の執筆にはAIを活用しています。



「世界のヴィラン、か。悪くない響きだ」

ネビュロスが薄く笑い、手にした魔導書の鎖を解く。冷たい魔力が指先から溢れ出し、大気を凍らせた。

「最高の舞台じゃないか。観客は逃げ惑う民衆、演目は『逆転劇』だ」

ヴェルミリオンが紫の蝶を空へ放つ。妖艶な香りが、硝煙の臭いを塗り替えていく。


「行くぞ、お前ら!」


グリムの咆哮と共に、三つの影が丘を蹴った。

重力を無視した跳躍。爆炎と黒煙の渦を切り裂き、燃え盛る村の中心地――五色の正義ジャスティスフェイスの目前へと、砲弾のごとく着地する。


ドンッ!!

衝撃波が走り、周囲の瓦礫が吹き飛ぶ。土煙の中から現れたのは、ボロボロの黒革コートを誇らしげに翻す、炎の魔王だった。


突然の乱入者に、虐殺という名の“作業”が止まる。

白き装甲のリーダー、バーニングレッドが、無機質なバイザー越しに彼らを睨み据えた。

「何者だ。我ら『聖断戦隊ジャスティスフェイス』の任務を妨害するつもりか」


グリムは鼻を鳴らし、親指で己の胸を指した。


「聖断戦隊? ……笑わせよるわ。

寄ってたかって弱者いじめるんが、お前らの言う“戦隊”様のやることか?」


その言葉に、後方に控えていた銀翼のユナイトレッドが冷ややかな視線を向ける。

「これは浄化だ。世界を救うための必要なプロセスに過ぎない。理解できぬなら、貴様たちもまた排除すべきノイズだ」


「ノイズで上等や。お前らのそのくだらん調和、俺らがグチャグチャにかき乱したるわ」


グリムの挑発に、バーニングレッドが一歩踏み出す。その右腕の排熱ダクトから、シュウウと蒸気が噴き出した。

「我々に歯向かうか。正義の戦隊に逆らうというなら、その報いは死だぞ」


一触即発の空気が張り詰める。

だが、五人のレッドのうち、前に出たのは三人だけだった。


黄金の重装甲を纏う大剣使い、ジャッジレッド。

蒼きラインが走る双剣使い、セイジレッド。

そして全身がマグマのように荒々しい戦士、ブレイズレッド。


彼らはそれぞれの武器を構え、戦闘態勢に入る。リーダーのバーニングと参謀のユナイトはその後方で、腕を組み静観の構えだ。


「ナメられたもんやな。大将のお出ましには早すぎるってか?」

グリムが拳を握りしめ、赤黒い魔力を練り上げる。その瞳には、確かな決意の炎が宿っていた。


「ええよ。まずは前座から片付けたる。

……おい、お前ら。あいつらが“正義の戦隊”名乗るんやったら、俺らも名乗りが必要やろ?」


グリムは背後の二人を振り返り、ニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。


「アンチ戦隊……『魔王戦隊』なんてどうや? 皮肉が効いててええやろ」


ネビュロスが呆れたように、しかし楽しげに肩をすくめる。

「悪趣味だが、奴らへの当てつけとしては悪くない」


ヴェルミリオンがくすりと笑う。

「ふふ、いいじゃない。僕たちの配役にぴったりだよ」


三人の背後に、それぞれの象徴――炎、氷、幻影の紋章が揺らめき立つ。

大気が震え、魔力が臨界点へと達する。


グリムが敵を見据え、高らかに叫ぶ。


「聞いたか、正義の味方さんよ!

俺たちは『魔王戦隊ダークトリニティ』――お前らの正義をぶっ潰す、最悪の敵や。よう覚えとけ!」


三人が同時に構えを取る。その姿は、泥臭くも気高い“悪”の矜持に満ちていた。


対するジャスティスフェイスの三人も、それぞれの“正義”を起動する。


「裁定下すは我なり! 法の名の下に!」

ジャッジレッドが巨大な処刑剣を振り上げる。


「正義に反論など、無意味だ。排除する」

セイジレッドが双剣を逆手に構え、低い姿勢をとる。


「悪って言われたら燃やすしかないっしょ! ヒャハハ!」

ブレイズレッドが両手に爆炎を宿し、狂気を孕んだ笑い声をあげる。


その背後で、バーニングとユナイトは動かない。ただ冷徹な視線で、目の前の事象を“データ”として観測している。


光と闇。

五色の正義と、三色の悪。

決して相容れない二つの勢力が、瓦礫の山で対峙する。


一瞬の静寂。

次の瞬間、弾けるように六つの影が交錯した。


ノクタリアの命運を賭けた戦いの火蓋が、ついに切って落とされた。


(第3話へ続く)

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