第18話『禁断の扉、暴かれる闇』
【前回のあらすじ】
魔王たちはジャスティスフェイスの技術を奪うため、兵器開発局への潜入を決意する。一方、カイ(ユナイト)は焦りから「統合都市計画」を強行しようとしていた。
※本作品の執筆にはAIを活用しています。
深夜。
ノクタリアの辺境、深い森の奥に隠された巨大な建造物。
ジャスティスフェイスの地上拠点、兵器開発局。
その厳重なセキュリティ網を、三つの影が音もなくすり抜けていく。
「セキュリティクリア。……ふん、所詮は既存の暗号化方式か」
ネビュロスが端末を操作し、レーザーセンサーを解除する。
「甘いんじゃなくて、君が異常なだけだよ、堅物さん」
ヴェルミリオンが警備兵の背後に忍び寄り、音もなく昏倒させながらクスクスと笑う。
「無駄口叩くな。……ここか?」
グリムが最深部の扉を指差す。
そこには『極秘研究エリア』の文字。
扉をこじ開けると、そこには異様な光景が広がっていた。
培養カプセルの中に浮かぶ、異形の肉塊。
そして、解体された魔族の遺体と、機械を融合させた実験体たち。
「なんや……これ……」
グリムが絶句する。
「魔力と機械の融合実験……。奴らの装甲は、ただの科学技術ではない。
我々魔族の生体エネルギーを動力源にしているのか」
ネビュロスの声が震える。怒りではない。同胞を資源として扱う冷徹さへの、底知れぬ嫌悪感だ。
「美しいねぇ。ここまで徹底的に穢れていると、逆に見事だよ。……反吐が出るけどね」
ヴェルミリオンが吐き捨てるように呟く。
「……奪うどころの話やないな。
こんなフザけた研究、この世に残しちゃおけんわ」
グリムの手に、どす黒い炎が宿る。
その時、警報が鳴り響いた。
『警告。第3エリアに侵入者あり。識別コード:アンノウン。即時排除せよ』
「チッ、バレたか!」
「迎撃システムが来るぞ!」
*
一方、上空に浮かぶ聖断空母ジャッジメント。
カイの執務室で、ライガは友人として、そしてリーダーとして問いかけていた。
「カイ。統合都市計画の強行は早計だ。
市民の同意を得ないまま進めれば、必ず暴動が起きる。それは俺たちの守るべき秩序じゃない」
「同意など待っていたら、何年かかるかわからない」
カイが顔を上げる。その目は充血し、疲労の色が濃い。
「ライガ、お前は甘い。
我々は『正義の味方』ごっこをしているわけではない。世界を管理する『システム』なのだ」
「システム……?
俺たちは人間だ。痛みも迷いもある人間だろ!」
「それが邪魔だと言っている!」
カイが机を叩く。
「感情があるから間違える。迷うから救えない。
……だから私は、全てをシステム化する。誰の感情も介在しない、完璧な統治機構を作るんだ」
その言葉に、ライガは戦慄した。
カイは本気だ。本気で、人の心を不要なものとして切り捨てようとしている。
その時、緊急回線が開いた。
『地上研究施設より入電! 侵入者あり、防衛ライン突破されました!』
「……来たか」
カイが立ち上がる。
「ライガ、出撃だ。汚名を返上する機会を与えてやる」
「……ああ」
ライガは頷く。
だが、その心には、かつてないほどの重い鉛が沈んでいた。
転送ルームへ向かい、ライガは光に包まれる。
行き先は、地上施設の正面ゲート前だ。
シュウゥゥゥ……!
転送の粒子が収束し、夜の森にライガの姿が実体化する。
目の前には、破壊されたゲートと、無力化された警備ドローンの残骸が散らばっていた。
「……酷いな」
ライガはスーツの機能を起動し、施設内へと突入する。
廊下には気絶した警備兵たちが転がっているが、不思議と死者はいない。
(殺してはいないのか……?)
最深部、『極秘研究エリア』への扉が開け放たれている。
中に入った瞬間、ライガは息を飲んだ。
破壊された実験機器。割れたガラス。
そして、カプセルの中に浮かぶ「それ」を見て、彼は立ち尽くす。
機械に繋がれ、物言わぬ部品と化した魔族たちの姿。
「……嘘だろ」
俺たちの装備は、こいつらの犠牲の上に成り立っていたのか?
その時、奥から熱気が膨れ上がった。
炎を纏ったグリムが、悲しみと怒りに満ちた目で、ライガを睨みつけていた。
「見ろや、正義の味方!!
これが……お前らの守りたかった『秩序』の正体か!!」
ライガの足元が崩れるような感覚。
信じていたものが、音を立てて崩壊していく。
「答えろやぁぁ!!」
グリムの絶叫が、ライガの心臓を直接殴りつけた。
(第19話へ続く)




