第17話『解析と焦燥』
【前回のあらすじ】
ジャッジレッドの精神的脆さを突き、一矢報いた魔王たち。だが、物理的な戦力差は埋まっておらず、彼らは再び撤退を余儀なくされた。
※本作品の執筆にはAIを活用しています。
地下水道のアジト。
重苦しい空気が漂っていた。
勝ったはずの空気が、微塵もない。
「……クソッ、硬ぇなあの鎧」
グリムが腫れ上がった拳を冷やしながら悪態をつく。
「全力で殴って、ヒビ一つ入れられへんとはな。どんな金属使っとんねん」
「地球の合金ではないな。魔力を拡散させる対抗呪術のようなコーティングが施されている」
ネビュロスが、戦闘中に採取した装甲の破片を魔導顕微鏡で覗き込んでいる。
「さらに、あの身体強化システム。生身の身体能力を数十倍に引き上げている。……今の我々の魔力だけでは、いずれ押し負ける」
ヴェルミリオンが溜息をつく。
「要するに、真正面からやり合っても勝ち目はないってことさ。今回は相手が勝手に動揺してくれたから良かったけど、次はそうはいかないよ」
沈黙。
個々の力では負けていない。だが、「装備」と「組織力」という壁が厚すぎる。
今のままでは、ジリ貧だ。
「……ほな、どうする」
グリムが問う。
「指くわえて見てるんか? あいつらが街を支配するのを」
「まさか」
ネビュロスが片眼鏡を光らせ、不敵に笑った。
「奴らの鎧が脅威なら、その理屈を盗めばいい」
「盗む?」
「奴らのテクノロジーを解析し、こちらの魔力と融合させる。
武器を持つ必要はない。魔力そのものを『鎧』として再構築し、身体能力と防御力を跳ね上げるんだ」
「へぇ、面白そうじゃないか」
ヴェルミリオンが目を輝かせる。
「科学と魔法のハイブリッド・アーマーか。悪党らしくていいね」
「決まりやな」
グリムが立ち上がる。
「次のターゲットは、奴らの兵器開発局や。
……正義の味方様の自慢の技術、俺たちが骨の髄までしゃぶり尽くしたるわ」
*
一方、聖断空母ジャッジメント。
指令室の空気は、凍りついていた。
円卓を囲むのは、ライガを除く四人のレッドたち。
「……報告は以上か」
カイ(ユナイト)が、全員を見渡して静かに告げる。
怒鳴り声はない。だが、その静けさが逆に重い。
「レクス。君の迷いが、敵に付け入る隙を与えた」
「……返す言葉もない」
レクスが拳を握りしめる。
「アシュレイ、君もだ。挑発に乗って陣形を乱し、単独行動に走った」
「あ? 俺はあいつを追い詰めて……!」
「結果が出ていない。それは敗北と同じだ」
カイの冷徹な言葉に、アシュレイは舌打ちして黙り込む。
「そしてセイジ。君のデータ分析も、敵のイレギュラーな行動に対応できていなかった」
「……肯定する。私の予測モデルに甘さがあった」
セイジが淡々と認める。
カイは溜息をつき、モニターに映る都市の地図を見つめた。
そこには、赤いマーカーで示された「未制圧エリア」が増えていた。
魔王たちの抵抗により、支配の網が綻び始めている。
「このままでは、計画に支障が出る。
……予定を早めるぞ。『統合都市』の起動を、明後日に行う」
「なッ……早すぎないか、カイ」
セイジが異を唱える。
「市民への周知も、安全確認も済んでいない。強行すれば反発を招く」
「多少の混乱は許容範囲だ。
これ以上、ノイズ(魔王たち)を野放しにはできない。
……この世界を、一刻も早く完全に『管理下』に置く必要がある」
カイの瞳に、狂気じみた焦燥が宿る。
彼はリーダー(ライガ)不在の中、自分一人で全てを背負い込み、完璧な結果を出そうと焦っていた。
「全員、準備にかかれ。……失敗は許さない」
カイが退室した後、残された三人は顔を見合わせた。
「……あいつ、なんか焦ってねぇか?」
アシュレイがボヤく。
「ああ。だが、今は従うしかない」
レクスが重く呟く。
組織の歯車が、軋みを上げながら回転を速める。
次なる戦場は、ジャスティスフェイスの心臓部――兵器開発局。
そこで待つのは、新たな力か、それとも決定的な亀裂か。
(第18話へ続く)




