第6話:魔導具ギルドを作ったら依頼が殺到した
ここ最近、俺の暮らしはどんどん騒がしくなっていた。
まず、村には“水壺”を求める旅人が続々と訪れ。
魔王軍を撃退したという“反転結界”の噂もまたたく間に広まり。
さらには、“空飛ぶ靴”の試験飛行を見た子どもたちが、
「セイルおじちゃんすげー!」「浮いてる浮いてる!」と押しかけてくる始末。
そして今日も、俺の家の前には行列ができていた。
「これ、どうすんだよ……」
「セイル様、依頼者の整理をいたしますわ!」
「セイルさん、配布予約表、これ今日だけで三枚目です!」
ルシアとエルナが慌ただしく人をさばいている。
……なんというか、こう、**スローライフとは……?**という疑問が募る。
だから俺は提案した。
「ギルドを作るぞ」
「えっ!? ギルド!?」
その名も――【辺境魔導具開発ギルド】。
村の空き倉庫を改造して、受付カウンターと展示棚を設置。
ルシアが事務長、エルナが受付兼試作品テスト担当。
俺は裏で黙々と依頼品を作る。完璧な役割分担だ。
「見てください、この依頼一覧……」
ルシアが震える手で紙束を差し出す。
・“水壺”の量産依頼(村×12軒)
・風が出る扇子(砂漠地方の領主より)
・魔力の少ない子供向け浮遊靴(王都育児院)
・“音を遮る壁”の設計(貴族の浮気現場より)
「……最後なんだそれ」
「王都の奥様方は切実ですの」
そしてさらに、国の役人からも連絡が入った。
「“国が後援するので、正式に魔導具開発を請け負ってほしい”……ですって!」
「断る」
「即答!?」
「国の仕事って時間かかるし、規制が面倒だし、役人がうるさいし、自由がなくなる」
「……なるほど、筋金入りの研究バカね」
でも、ギルドのおかげで研究環境は格段に整った。
資材は依頼で補填され、テスト協力者も自然に集まる。
そして何より――
「ありがとう、セイル様。この“温まる布団”、おばあちゃんが喜んでました!」
「“光る杖”が夜の見回りにぴったりでして!」
村人たちの笑顔を見るたびに、
俺は、少しだけ自分の価値を信じられる気がした。
俺は無能なんかじゃなかった。
必要とされる場所に来れば、力を発揮できる。
それが、たとえ辺境の片隅であっても。