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プロローグ:追放の日
「セイル・アーヴ、お前を魔導学園より追放する」
その一言に、俺はむしろ安堵した。
ここ王都の中央魔導学園。
ここで俺は“魔導具開発研究室”に所属していた。とはいえ、誰からも評価はされていなかった。
「そもそも、実用性が皆無なんだよ。なんだっけ?“壺から水が出る魔導具”?ははっ、水は井戸で汲める」
「“寝るだけで疲れが取れる枕”? 魔法で十分だろ」
「“空を飛べる靴”? 荷物運びにでも使う気か? バカバカしい」
みんな笑った。俺の研究は「金にならない」と、馬鹿にされた。
でも――俺は好きだった。
誰かの役に立つかもわからない、小さな便利魔導具をこつこつ作ることが。
だから、こう言われた時も、何も感じなかった。
「はぁ。わかりました。追放ですね」
「え、なにその反応。もっと喚けよ」
「いや……むしろ、ありがとう。自由になれる」
「……は?」
俺は笑った。
「これで好きな研究ができる。むしろ感謝してるよ、心の底から」
それが、魔法学園の名を地に落とす“追放の瞬間”になると、誰も気づかなかった。