学園に戻らないといけないようです
「……で?」
朝の陽光が差し込む部屋で、私はベッドに座ったまま、使用人が差し出した紙を見つめる。
「休学はできないって、どういうこと?」
「……それが、お嬢様」
いつもは静かな執事、ロイドが珍しく困った顔をしている。
「王立アカデミーは、王子との婚約者としての立場を重視しておりまして……無断で欠席を続ければ、“婚約者としての責任を果たしていない”とみなされ、正式な査問が入るとのことで……」
「えっ、そんなのずるくない!?」
“婚約者”を盾に出席させるって、どんな地獄仕様よ!?
私もうその立場、降りる気満々なんだけど!
「そもそも、私、ステージのために時間が必要なのよ!? アイドル活動に集中しなきゃ!」
「ですが、お嬢様……“アイドル”とは、なんの爵位でございますか?」
「爵位じゃないの!職業よ、しょ・く・ぎょ・う!」
私が思わず机をバンと叩くと、レオニスが部屋の扉をノックもせずに入ってきた。おい、今度もノックなしかよ!
「……さっきからうるせぇな。声、丸聞こえだぞ。こっちが熱出しそうだわ」
「ノックしなさいって言ってるでしょ!!」
「聞こえてたら入る必要なくね?」
「その理屈がわからないよ!!!」
口論のようで漫才のようなやり取りをしていると、ロイドがそっと退室した。空気読んでる。ありがとうロイド。
「それで、何しに来たの?」
「“迎え”だよ。馬車の用意できたって。今日からまた学園な」
「えっ……今日から!?」
「決定事項。王族からの命令。拒否権なし」
「はあああああ!?」
なんなの、世界一スパルタなアイドル育成環境なの!?
前世の妹が大好きだったゲーム世界、こんなにブラックだった!?
「……学園に戻ったら、まず何があるの?」
「戦えるぞ」
「何、嬉しそうなのよ嫌だからね!」
「なんだよ、騎士の憧れだろ、、、」
しょぼん
「仕方ないねぇアイドルのなでなでは高くつくよ」
「要らねえ要らないから!」
「そこで、何をしているのかな?」
「そこで、何をしているのかな?」
背後から低く響くその声に、私とレオニスは同時にビクッと肩を跳ねさせた。
「お、おうじぃぃぃいい……!」
扉の前に立っていたのは、漆黒の髪を持つ、完璧すぎる立ち姿の男——この国の第一王子、セシル=アーデン。
あああ、妹が一番推してた攻略対象その2、来ちゃったよ!!
「……部屋に男が二人。しかも私の婚約者に触れようとしていたようだが?」
「ち、違います!!!」
レオニスがバネみたいに跳ね起きて、速攻で土下座した。
「やましいことは何もしてません!!ただ、“なでなで”とか言われただけでっ!」
「なでなでってなんだよ」
王子の目が細まる。レオニス、死んだ。
私は必死に取り繕う。
「セシル殿下、誤解です! レオニスはただの騎士で、アイドルのなでなでを希望していただけです!」
「余計に誤解を招いてる!!」
次回、
第4話「王子の視線が痛すぎます」
どうぞ、お楽しみに♡
続きもテンポよく、ラブコメ×異世界×アイドルとして展開していけます!
また続きを書くときや別の案がほしいときは、いつでもお知らせください♪