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六 東方神 美佐枝

 とりあえず、美佐枝さんの旗を探すふりをして、Pの事務所辺りを偵察することにした。川沿いの桜並木道を歩きながら、マコトさんが入ったであろう美佐枝さんの家を探した。

「この辺りだと思うけど、、、。」

表札に美佐枝さんの名前は見つからない。

「表札に、女性がフルネームで書くことってあんまりないか、、、。」

そう思っていると

「東方神?何とも立派な氏だこと。どっかで聞いた事あるような、、、。ああ、あの大人気グループね。」

大きい訳ではないが、何とも由緒がありそうな門に代々受け継がれていそうな氏が書かれていた。

「ここに入って行った様に見えたけどな?」

塀も特段立派と言う訳ではないけど、塀に使われている木は他のそれより、だいぶ厚く感じる。隣に何軒かの民家が続いたが、少し歩くと何とも甘いに香りがしてきた。

「ケーキ屋さんの匂いだ!」

それらしい店は見えなかったが、香りに釣られて行くと

「え、ここから匂いがする!」

うっかりすると通り過ぎてしまいそう。民家の入り口の様だが、ジブリのパン屋さんの店先に下がっているような小さな鉄の看板が下がっていて、チーズケーキと書かれている。

「チーズケーキのお店か〜。」

大好物のチーズケーキ。そりゃ鼻レーダーが反応する訳だと、店さきを見回す。縦が20センチ横に80センチほどの細長い覗き窓があり、ケーキを焼いている小さなフィギュアのおじいさんが可愛らしく飾ってあって、中の様子も見えた。

店の中には親子らしき二人がショーケースを覗き込んで話をしてる。その先にはおじいさんが、四人かな?作業をしていた。

「へ〜。おじいさんのチーズケーキ屋さんか。」

確かに鉄の看板には「じいじのチーズケーキ」とローマ字で書かれていた。

「あ!」

フィギュアのおじいさんたちが身につけているエプロンにMの文字があった。

「美佐枝さんのMかな。」

それが確かめたいからか、チーズケーキを買いたいからなのか、すんなりと店に入った。

「いっらしゃい。」

優しいそうなおじいさんが、笑顔で迎えてくれた。白いハンチング帽が何とも可愛い。ショウケースの中には、カットされたケーキと、細長いカットされていないケーキがあった。もちろんチーズケーキファンとしては、カットされていない方を買いたかったけど、予算的にカットの方を選ぶしかなくて

「カット。二つください。」

そうお願いすると

「一人で食べる?二人で食べる?」

不意にそう聞かれた。

「えっと、、、。」

「一人なら、一つは、隅っこを入れようか。クッキーがたくさん付いていてとってもおいしいよ。二人だと喧嘩になっちゃうからおすすめできないけどね。」

何とも可愛らしい笑顔でそう言われて、思わず顔がほころびながら、

「一人で食べます!隅っこください!」

そう答え、隅っこを入れてもらったケーキの箱を抱えて、店を出た。店を出て気がついた。

「あーもー。Mのこときくの忘れたー。」

とって返すわけにもいかず、あきらめてその先の橋を渡り、Pの事務所がある反対側へと向かった。

 橋を渡るとすぐに小さな花屋があった。奥で店主だろうか、何か作業をしている。

(三坪ほど?アレンジでも作ってるのかな。)

そう思いながら通り過ぎようとしたけど、店の棚で何かが光っているのが気になり、覗いてみることにした。

「いらっしゃいませ。」

可愛らしい声の主は、作業をしていたその人で、店主と思っていたからか、予想に反して若い女性に驚いた。私が軽く会釈をすると、

「ゆっくりみていってくださいね。」

笑顔でそういうと、また下を向いて作業に戻っていた。光っているのが気になった棚にはフラワーベースと涼やかなアクセサリーが並んでいた。

「あ、お花屋さんにアクセサリー。」

そう呟くと

「珍しいですよね。へへへ。シーグラスとか、割れちゃったフラワーベースで作っているんです。よかったら、手にとってみてください。」

「良いんですか?」

「もちろん。見ているだけだとピンっとこないでしょ。」

彼女はそう言って立ち上がり、棚からアクセサリーのケースを下ろしてくれた。

「わ、キレイ。」

「ありがとうございます。ピアスもありますよ。」

私のピアスが目に止まったのか、笑顔が一段階上がったように微笑みながら、ガラスの蓋を開けてくれた。どれもキラキラと美しかったが、何より値段も手頃なのに驚いた。

「これって、この値段ですか?」

「ええ。シーグラスも拾ってきたものだし、こっちのシリーズは、フラワーベスのかけらだし。加工代とシルバー分だけいただいているんです。」

それにしてもこのクオリティーにしてはかなり安い。大体割れたガラスだなんてとても思えなかった。ステンドグラス風のもあってレトロな感じがまたよかった。

「あれ?この感じどっかで、、、。あー。」

「夢ちゃんがつけてた?」

若い彼女は、私にいたっずらっぽい笑顔を見せる。

「夢ちゃん?」

「そう、夢ちゃん。クレの金髪ちゃん。」

「そうそう。」

「クレの常連さんですか?」

不意のツッコミには正直者の私は取り繕えず

「いえ、この間初めて。でも金髪女子、あ、えっと夢ちゃんが何とも、えっと、フレンドリーで。それでこのピアスを覚えてて。」

彼女はその大きな瞳を、もっと大きくして

「へー。初めて。なのに夢ちゃんが、へー。」

何かおかしな事言ったかしらと思ったが、彼女は続けて

「それなら、私もおすすめしちゃう。気に入ったのがあったら言ってください。10パーセントオフしますよ。」

予定外に卵サンドを食べて、チーズケーキを買ったのに、この上出費は痛い。でも何だか買わない訳にはいかなく思えたし、何よりもピアスが可愛いかった。

「えっと、じゃあこれいただけますか。」

少しグリーンがかったガラスがレトロな街にもぴったりで、棚から下ろしてもらった時から真っ先に目に止まっていた。

「今日の服にもピッテリですね。つけて行きます?」

そうします、と答えると彼女は鏡を持ってきてくれた。

「つけていたピアスはここに入れてくださいね。」

そいった手渡してくれた小さなサテンの巾着袋には、銀色でMとハンコが押されていた。

「え、M?」

「ああ。お店のロゴとかじゃなくて、美佐枝さんのMなの。」

手がかりをゲットできるチャンス到来だ!




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