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五 スパイ大作戦

 これからどうしよう。スパイ大作戦をどう遂行しようか考えながら、 卵サンドを頬ばっていると、

「ここの卵サンドのファンなのかい?」

隣のおじさんが我慢しきれずにって感じで話しかけてきた。一瞬悩んだけど、ここは正直にと、

「えっと。いえ知らずに注文して、今、ファンになりました。」

「おお、そう。」

「黄身しっかりめと。半熟卵で黄身トロトロが絶妙で。割合は、二対一って感じでしょうか。黄身のまとわりつき加減が、何とも最高です。」

そう言ってサムアップすると、おじさんその親指をいきなり握ってきて

「お嬢ちゃん!や〜凄いね!初めて食べていきなり。や〜素晴らしい!」

そう言うと

「いやいや、こりゃ、ごめんなさい。」

慌てて私の親指から手を離した。

(結構当てずっぽだったのに。上手く行った。親指握られるとはおもわなっかたけどね。)

心の中でほくそ笑んで、

「当たってますか!やった〜。」

と、ここでスパイ大作戦を開始。まずは、気の良さそうなおじさんを褒めて、その口を軽くする。

「おじさまは、常連さんなんですか!詳しいんですね!凄〜い!」

「いや〜。毎朝通う常連だからね。少しは知ってるんだよ。マヨネーズもね、美佐枝さんのレシピなんだってさ。」

「美佐枝さん?」

気の良いおじさんの口は早速情報をくれる。

「さっきマコトさんが、、、えっとそこで卵サンド受け取ってスラリとした美人ね。そのマコトさんが言ってただろ、美佐枝さんって。」

「、、、言ってましたっけ?」

本当はしっかりと聞こえていたけど、すぐに分かっちゃうと聞き耳立ててたのが丸わかりだから、誤魔化してみた。

「そうだよね聞いてないよね。」

おじさん、少しがっかりしてに話を終わらせようとしたから、

「あ、で、その美佐枝さんって方のレシピって事は、ここは美佐枝さんのお店なんですか?」

間髪入れずに質問した。

「いやいや、店は違うんだ。美佐枝さんは、ここの地主なんだよ。」

「へ〜。そうなんですね。で、マコトさんって方が、娘さんなんですか?」

と、質問したのにおじさんそこには触れてくれず

「地主ってだけなのに。店やこの街が発展して、人が寄る街にしたいってさ。美佐枝さん、この店には卵サンド美味しい作り方を伝授したんだよ。できた人だよね。」

「で、マコトさん、、、。え、今、この店にはって言いましたか?」

マコトさんの事が聞きたかったが、美佐枝さんの事が気になって思わず聞き返した。

「言った。」

「もしかして、他のお店にも、何かアドバイス、、、とかしてるんですか?」

「してる。」

「わ〜。美佐枝さんて、凄い方なんですね。」

マコトさんから、急に美佐枝さんに興味が移っていく。

「美佐枝さんの世話になった店には、小さな旗があるから探してみるといいよ。じゃあお先に。」

卵サンドを平らげて、おじさんはサッと席を立ったが、

「そうそう、マコトさんは娘さんじゃないよ。」

そう言ってニッコリと去っていった。

(そうよ、マコトさんの事を聞くつもりだったのに。私が忘れてどうするのよ。) 

うっかりマコトさんのことを忘れそうになっていたから、おじさんには感謝だ。

 もう一つ感謝は、この街を歩き回るきっかけをくれたこと。これは大きい。美佐枝さんの小さな旗を見つけるって大義名分を授かったのだからウロウロしても何の問題もない。

(分かってる。後ろめたい気持ちが無ければ、街を散策したって何も問題ないよね。マコトさんの事だって、就職先を調べるんだから堂々とすれば良いんだよ!でもねー。なんかねー。)

そ、何となく後ろめたい。さっさとエントリーシート持って名刺のPを尋ねたら良いだけのことなのに、できる気がしなかった。

 卵サンドとコーンスープを平らげてエネルギーをチャージし美佐枝さんの旗探しを開始することにした。手始めは、この店。美佐枝さんの旗なるものが何なのかわからなければ、探しようも無い。ぐるりと見回したが、それらしいものは見つけられなかった。

「ごちそうさまでした。」

カウンターに食器を下げながらその辺りを見たが、やはりわからない。

ツインテールが

「ありがとうございます。行ってらっしゃいませ〜。」

そう送り出してくれたが、

「あの、美佐枝さんの旗ってありますか?」

私の質問に、キョットンとしていたけど、思い出したように

「ああ、旗ね。旗なんて言うから一瞬わからなかった。看板にありますよ。向かって右下。見つけてみてね。行ってらっしゃい。」

ツインテールは、秋葉のメイドカフェばりの笑顔で送り出してくれた。

(あんな笑顔で。そりゃメイドカフェは流行るよね。可愛いってだけで働き口があるなんて、なんかずるいなー。)

就職に対しては、愚痴しか出ない。店を出て気を取り直しながら振り返って看板を見た。

「向かって右下か。あ、あった!」

看板に旗がなびいている様な模様の中にMの文字がある。

「へー。何だか可愛い。けど、、、これがあちこちにあるってか?新興宗教団体。秘密結社。ますます怪しい。」

どうしても闇の団体、裏の仕事ってワードから離れられない。妄想が妄想を呼んでいるだけなんだと分かっているが、内定が一つももらえない、悲しき大学生の自分から逃げ出したいだけなのかもしれない。



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