四十五 そんな事って
甘いカフェラテを飲むと、気持ちも落ち着いた。元気も湧いてきた。
ヨシ!って気合いを入れ直したら、スマホがなって。
「特定できたぞ!」
春吉さんからだ
「さすがハル。仕事が早いわね。」
「アザーっす。PCに送っておきました。姉ちゃん、カルテ今からだから、ちょい待ちで。」
「うん。よろしく。」
「できたら、まんま、PのPCに送るな。ってか、祝いますか?」
わあ、春吉さんが私を呼んでる。
「はい。祝です。ハルさん、ありがとうございます。」
春吉さんに褒めてもらえるって、張り切ってスマホに出たのに、
「祝ー。ありがとうございますじゃねーよー。なんであんな無茶するんだよ。こっちで見ててヒヤヒヤするだろ!コマちゃんだって行っちゃったのにさ。一人で危なすぎだろ!」
怒られた。
「えー。ハルさん見ててくれるだろうし。危なかったらスマウォから、スタンガンみたいに、ビビビーってアイツらをやっつけてくれるかな〜って。」
「おいおい、そのスマウォ、なんでもできるわけじゃないんだぞ。俺がいない時に無茶するの禁止だからな!」
怒られたけど、嬉しい。夏乃さんが横から、
「アホハル〜。祝ちゃんに助けてもらったくせに、随分と偉そうじゃん。」
「姉ちゃん、うるせーよ。まあ、確かにそうだけど、そうなんだけど、一人で無茶するなってことだよ。」
「ハルは、紳士だからね。」
相変わらずのぶっきらぼうな春吉さんの優しさに、マコトさんもなんだか嬉しそうだ。
春吉さんの情報によると、車の所有者は中堅クラスの警備会社。
社長は西条凛貴也
西条の警備会社には退職した警察官の再就職先でもあるようだが、どちらかと言うと警察で厄介払いしたい幹部たちを引き受けてる会社のようだ。
ワンマンで会社を大きくした西条は、70歳を超えているが、現在家族はいない。五年前に遅くに生まれた一人息子が二十歳の時に縁を切っている。
息子の母親は息子を出産すると、直ぐに家を追われて姿を消していた。
会社は、弟が実権を握り、その息子が会社を継ぐ予定のようだ。
「この短時間で、良くここまで調べましたか!ハル、さすがだね。」
「もうちょい突っ込んでみるんで、待っててください。姉ちゃんのカルテの件も五年前。西条の息子が絶縁して家を出たのも五年前。そのあたり気になるんで、カルテを先に調べてみます。」
「アホハル。頼んだよ!」
「姉ちゃん、アホな余計だろ〜。まあ、任せろ!じゃ、後で。」
西条のことがわかったので、駒井にも共有しようとしたが、
「署に着いたら連絡、って連絡入れた方がいいわよ。」
そっか、もしかしたら駒井は黒服から逃げてるのかもしれない。警察官だし、自分で優秀って言っちゃうくらいだけど、相手の黒服も、ちょっと怪しそうな警備会社で働いるんだ。駒井が安全とは言えない。
心配をよそに、以外にも早く署に着いたと、駒井から連絡が入った。GPSは東北ナンバーのトラックの荷台にほうり込んだそうだ。しばらくは時間が稼げる。
西条の情報を伝えると、
「そうですかー。確か最近、オンラインカジノで懲戒処分になった警視が就職してるなー。やばいとこですよ。そっかー。ちょっとこっちでも調べてみます。」
「駒井、大丈夫?警視って駒井よりもずーっとずーっと偉いんでしょ!」
「お、姫。心配してくれるの。嬉しいな〜。」
「うるさい。心配なんてしてない。」
「ワオ、ツンデレ復活。元気な証拠だ。警視って言っても、もう過去の人だし。その人、昇任試験しか頑張ってなかったダサい奴さ。夜には情報持って帰るから、待っててねハニー。」
「ちょっ。」
駒井は、私の反撃前に電話を切った。
「くそー。先に切った。めっちゃ腹たつ。」
マコトさんたら、もっと話したかったのってニヤニヤしてるから、そんなこと思ってなかったのに、耳が熱くなってしまった。
春吉さんの仕事はさすがに早く。カルテ情報も直ぐに送られてきた。
五年前に搬送されたのは、小野咲子とその娘、小野凛子
二人には健康保険証がなく、全額自費で高額な医療費だったが、架空の送り主から、全額支払いに余るほどの送金が小野咲子宛に送られてきた。
咲子は、ICUから一般病とに移ってしばらくすると、姿を消してしまった。
咲子がICU入院中に、娘の凛子は児相に一時保護となったが、凛子は程なく西条が引き取りに来ていた。
「え、どうしてですか?母親がまだ入院中なのに。なんで西条に引き取られるんですか?」
「リコちゃんの戸籍上の名前は、西条凛子になっているわね。」
「え、と言うことは、西条の子供ってことですか?リコちゃんの父親は西条、、、。」
「養子の可能性もあるけど、、。実の父親かも。」
「そんな、、。じゃあ、実の父親から監禁されて、殴られる虐待をされてるってことですよね。」
夏乃さんはやるせ無い気持ちを吐き出すように、
「実の父親からの虐待はそう珍しいことじゃないよ。」
「そんな、、。リコちゃんは、知っているんでしょうか、自分を傷つける人間が父親って、、。」
マコトさんは眠っているリコちゃん頭を優しく撫でながら、
「親を選んで生まれて来れないからね、、、。」
その言葉を深い深い海の底で聞いているようだった。




